多分、愛じゃない

リンドウ(友乃)

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忘れていた恋の記憶

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 じゃあユウリはと思い出すのは、大学時代。

 互いに異なる教職を専門としていた俺たちが、どうして互いに惹かれあったのか。

 途端に忘れていた事実を思い出した。そういえば俺たちが付き合ったきっかけは、ユウリだった。

 当時の俺は、自身のセクシャリティーのことや親との確執から、とにかく早く大人になり自立したいと多分誰よりも熱心に勉学に力を注いでいた。

 だからどちらかというと、苦手だった。ユウリのような誰にでも良い顔をする奴は。

 目にすればいつでも人に囲まれ、チャラチャラと愛想を振り撒いている。それがユウリに抱いた俺の印象だった。

 なんのために大学に来ているのかと、取り巻きを遠巻きに見ながらそんな捻くれたことを思っていた。

 決してモサすぎるわけではないけれど、どちらかといえば垢抜け切れていない俺とユウリは、周りから見ればまさに陰と陽のような存在だったのだと思う。

 ドラマのようなきっかけを経て仲を深めてしばらく経った大学一年の終わり頃、ユウリから唐突に付き合いたいと告白されたのだ。

 思えば当時も俺はユウリみたいな人と俺が釣り合うはずがないと、自分を卑下していた。

 多分その時には俺も、ユウリを好きになっていた。容姿とは関係なく、性格が良くて紳士で思いやりのあるユウリを気付けば目で追っていた。

 ユウリから告白され、盛大に断った。けれどユウリはそれから何回も何回も告白をしてきた。

 その度につい、流されるようにイエスと頷きそうになる自分を必死で律していたのだが、ついにイエスと頷いたのは最初の告白から9回目。

 大学2年生の夏のことだった。

 あの夏はやけに涼しかった。当時、就活前の追い込みの年だとゼミの先輩から半ば脅しのように言われ、本屋のバイトを目一杯増やしていた。

 もちろん、夏休みだからと大学の友人と飲みに行ったり遊び歩いたりすることもせず、毎日汗水垂らしながら必死で働いていた。

 ある日、バイトの帰り道。一際背の高い人が見え、立ち仕事で棒になった足を走らせていた。

 声を掛けようとした、だってハーフの整った顔立ちの彼は、俺の知るユウリだったのだ。
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