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あるべき恋の姿
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ユウリから連絡がきたのは、その翌日のことだった。
ー奏、おつかれさま。近いうちに会えないかな?良樹さんも一緒に。
『良樹さんも一緒に』は、明らかに俺が意識しすぎないようにと気遣いからなのだろう。
それかまさか、良樹が本当にユウリに連絡したとか。
ーおつかれさま。俺も会いたい
俺のこととなると母親気質を発揮する良樹に些か疑問は湧きつつも、ユウリからの連絡を素直に嬉しいと打ち掛けて、けれどまた指を止める。理由を頭に思い浮かべ、とてつもない自己嫌悪に襲われた。
ユウリから告白されて以来、まともに顔を合わせていないのだ。
平日は部活や文化祭準備にと朝から晩まで仕事の俺と、平日休日関係なくオーナーとして忙しいユウリのスケジュールが合わないのは、言われなくともわかっていた事実だ。
特に今、ユウリの店では秋冬フェアに向けて新メニューを構想中とのこと。俺にはそれがどれだけ忙しいのか見当もつかないが、マメな連絡が夜遅くになる辺りとんでもなく忙しいのだろう。
だが、むしろ今のこの状況では好都合。と言えば言い方が良くないが、ただ何にも答えを見出せていない自分にとっては頭の中を整理する良い機会だったと言える。
時間ならいくらでもあると言うのに、それでも答えをつかみとれず、この状況に甘んじている自分に心底腹が立つ。
しかし、そうも言ってられないのもまた事実だ。明日明後日と時が経つにつれて、東雲先生の気持ちがどう変わるのか正直、見当つかないことが恐い。
万が一、本当に百万分の1レベルの可能性として俺の周りの人、つまりユウリや良樹まで傷つけれることも考えられるのだろうか。
可能性として考えられる全てを頭に描けば、ぞっとした。そんなことあってはならない未来だ。
ーおつかれさま。ごめんな、今、文化祭関係で忙しくしててしばらく会えない。
ならば今は、少しでも自分との繋がりを匂わすものを断ち切るべきだろう。
出来るだけ不快に感じさせないように、携帯の画面をタップしていく。
しばし迷った挙句、送信のアイコンを押した。
ぼすっと音を立てて布団に沈み込み、これからのことを考える。
すべきことはもう決まっている。あとはただ、行動に移すだけ。
幸い明日は土曜日。在宅ワークの良樹には買い物に行くと告げれば疑われないだろうし、土日が勝負の商売をしているユウリも俺に構ってる暇もないだろう。
克巳はきっと、家にいる。
布団に一緒に沈めた携帯がブーっとバイブ音を告げたが、今は見る気にもなれず額の上に腕を重ねて目を閉じた。
ー奏、おつかれさま。近いうちに会えないかな?良樹さんも一緒に。
『良樹さんも一緒に』は、明らかに俺が意識しすぎないようにと気遣いからなのだろう。
それかまさか、良樹が本当にユウリに連絡したとか。
ーおつかれさま。俺も会いたい
俺のこととなると母親気質を発揮する良樹に些か疑問は湧きつつも、ユウリからの連絡を素直に嬉しいと打ち掛けて、けれどまた指を止める。理由を頭に思い浮かべ、とてつもない自己嫌悪に襲われた。
ユウリから告白されて以来、まともに顔を合わせていないのだ。
平日は部活や文化祭準備にと朝から晩まで仕事の俺と、平日休日関係なくオーナーとして忙しいユウリのスケジュールが合わないのは、言われなくともわかっていた事実だ。
特に今、ユウリの店では秋冬フェアに向けて新メニューを構想中とのこと。俺にはそれがどれだけ忙しいのか見当もつかないが、マメな連絡が夜遅くになる辺りとんでもなく忙しいのだろう。
だが、むしろ今のこの状況では好都合。と言えば言い方が良くないが、ただ何にも答えを見出せていない自分にとっては頭の中を整理する良い機会だったと言える。
時間ならいくらでもあると言うのに、それでも答えをつかみとれず、この状況に甘んじている自分に心底腹が立つ。
しかし、そうも言ってられないのもまた事実だ。明日明後日と時が経つにつれて、東雲先生の気持ちがどう変わるのか正直、見当つかないことが恐い。
万が一、本当に百万分の1レベルの可能性として俺の周りの人、つまりユウリや良樹まで傷つけれることも考えられるのだろうか。
可能性として考えられる全てを頭に描けば、ぞっとした。そんなことあってはならない未来だ。
ーおつかれさま。ごめんな、今、文化祭関係で忙しくしててしばらく会えない。
ならば今は、少しでも自分との繋がりを匂わすものを断ち切るべきだろう。
出来るだけ不快に感じさせないように、携帯の画面をタップしていく。
しばし迷った挙句、送信のアイコンを押した。
ぼすっと音を立てて布団に沈み込み、これからのことを考える。
すべきことはもう決まっている。あとはただ、行動に移すだけ。
幸い明日は土曜日。在宅ワークの良樹には買い物に行くと告げれば疑われないだろうし、土日が勝負の商売をしているユウリも俺に構ってる暇もないだろう。
克巳はきっと、家にいる。
布団に一緒に沈めた携帯がブーっとバイブ音を告げたが、今は見る気にもなれず額の上に腕を重ねて目を閉じた。
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