多分、愛じゃない

リンドウ(友乃)

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恋じゃなくて、多分、愛じゃない

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 その日の天気は雲一つない快晴だった。

 秋晴れ、というには異常気象のせいで残暑がキツすぎる暑さに、服装はまだ軽い装いを身体が好む。

 トップスは薄いピンクのTシャツに軽い素材のジャケット、パンツはダメージ加工された太めのジーンズ、靴はカジュアルに白のスニーカー。

 加えて斜めに掛けられたショルダーバッグ。

 仕事では着られないカジュアルさだが、休日は身軽で気取らない軽さが好きだ。

 週末の街並みは朝から賑やかである。主に学生か家族連れが多いようで、俺からすれば若くてエネルギッシュな声が満ち溢れている。

 良樹の家から電車で数分、改札を抜けると街は閑静な住宅街。

 朝の10時、秋晴れも手伝ってかスポーツウェアに身を包みウォーキングをする人や自転車に乗ってサイクリングに行く人、また広くて遊具が豊富な公園でバスケをする人など、商業施設がないながらも休日を楽しむ人々が目に映る。

 学校という職場にいれば、オフィスで働くよりも身近に子どもの存在を感じられるが、休日の和やかさはまたそれとは違うものだ。

 忙しい日々にふと、忘れてしまいそうになっていた光景にトゲトゲしていた心が柔らかくなる。

 改札を出て右、ひたすらに続く一本道を歩いているとアパートが見えてきた。

 見慣れた二階建てのアパートに住み始めたのは、克巳と三年前に契約したあの日からだ。

 三年前の春を思い出せば、既に懐かしさが込み上げる。あの頃はただただ、好きな奴と始まる新たな生活に浮かれていたんだった。

『これからよろしくな、克巳』
『こ、こちらこそよろしく、奏』

 そう言ってつま先を立たせデカい身体にキスをしたあの日、俺たちにこんな未来があると想像していただろうか。

 幸せだった過去がやけに煌びやかに脳裏に蘇り、ふと涙腺が緩みそうになった。

 一本道、家から徒歩五分のファミレス。見ればそこかしこに克巳との思い出が詰まっている。

 楽しかったこと、嬉しかったこと、悲しかったこと、辛かったこと。全部全部、克巳と一緒だったんだ。

 たかが三年されど三年。思い返せば愛おしい思い出の嵐が俺を襲う。

 …ああ、でもやっぱり、楽しかったな。

 結局、不満があったとしても喧嘩をしたりしても、残るのはプラスの感情だけなのだ。
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