多分、愛じゃない

ゆきの(リンドウ)

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番外編:多分、もう愛だった

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が、結局、ユウリには会えなかった。と、落ち込んでいると良樹が「大丈夫かぁ?」と声を掛けてくれた。

「ユウリさんとまた会えなかったの?」
「というか、俺が寝落ちしてた。から、俺が悪い」
「なるほど。でも奏がへこんでる理由はそれだけじゃないよな?」
「…なに、それ」
「だって君たち、まだ初夜を共にしてないんだろ?」

言われ、机に突っ伏していた顔を勢いよく上げた。

良樹は妙に勘が良いのだ。前も克巳との仲に悩んでいた奏に、同じようにアドバイスをくれたことがある。

「で?ユウリさんが忙しいのはおいといて、奏はなにを悩んじゃってんの?」
「なんか…わかんなくてさ」
「だからなにが」
「…ユウリがそういうこと、俺としたいと思ってるかが」

言うと良樹が目を丸くして「当たり前だろ?」と言ったが、奏はまだ納得できなかった。

何故ならユウリはそういう雰囲気になっても手の一つも出さないからだ。

何度かお互いの部屋にいて、そういう雰囲気になったことがあった。部屋でまったり、映画を見ているときだった。

手と手が重なりそうな位置にある。思いきって手を握った。すると、さり気なく離されてしまった。

さすがにショックだった。恋人なら、手も繋ぐしキスもする、その先だって当たり前にある。

ユウリからのキスは数えるほどで、それも軽いキス。昔、付き合っていた頃の方が濃厚な接触をしていた。

もしかしてユウリは奏のことをそれほど好きではないのかと最近、思うようになっていたのだ。

最近、恋人だからといって必ずしも身体で確かめ合う付き合い方をしないカップルもいると聞く。二人が合意しているのならいいと思う。

ただ、奏は違う。キスだってたくさんしたいし、身体で愛を確かめ合いたい。

話したいのにいざ目の前にすると勇気が出ない。口を開けば喧嘩腰になってしまいそうで怖かった。

「奏からってのは難しいのはわかるけど、自分がしたいなら言葉で言わないと。わかってんだろ?」
「うん…」
「じゃあ、早速連絡しないとな?」

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