100 / 101
episode 32
6
しおりを挟む
号泣する俺と大介の泣き声は、エンジン音に掻き消され、隣同士に座る俺達二人にしか聞こえないのが幸いなだけで、ここに大事な親友が一人欠けたという大きな穴は、二度と埋められない。
小さな窓から、外をを覗き見れば、多くの人の運命を弄び、多くの人の命を奪った憎々しい島が目に入る。
あれから数分しかたっていないのに、だいぶ小さく見える島。
かなり離れたなと思った瞬間、真っ赤な火柱があちこちで上がりだす。
それはまるで、手筒花火を彷彿させるような美しさと残酷さを孕んだ、全てを破壊し燃やし尽くす炎。
爆風が時間を経て、ようやくここまで届いたのか、今になってヘリが大きく揺れた。
とめどもなく流れる涙。
溢れ出る感情。
結局、俺がしたことは何だったのだろう。
ヒーロー気取りで、危険な島に来て。
助けたかった人は一人も救えなかった。
それどころか、大事な親友まで失った。
震えている拳の上に大介の手が添えられる。
「かっつん、無駄じゃないよ。龍平ジィも、直也さんも。それに洋ちゃんも。皆、かっつんに思いを託した。『paraíso』計画をぶち壊せってね! それを皆の力で達成させたんだ。無駄じゃないよ」
大介は、俺に自分を責めるなという事を直接的にではなく、遠回しに伝えてくれた。
けれど、俺は後悔せずにはいられない。
自分を責めずにはいられない。
所長の挑発に乗らず、冷静に対応していれば、もしかしたら助けられた筈の祖父。
自分の手で殺めた兄貴。
待つ事が出来ずに島と共に海に沈めてしまった洋一郎。
全部が全部、俺のせいで命を落としたんだ。
俺は一生を懸けて彼らの意志を引き継ぎ、彼らに償わなくてはならない。
真っ赤に燃える島がどんどん遠ざかっていくのを目の端に捉えながら、新たな決意を誓う。
今後、必ず第二、第三の『paraíso』が計画されるだろう。
そうなったら、全て、俺が潰して見せる。
この命がある限り。
俺は、あの真っ赤に燃える多くの魂の炎にそう誓った。
そして、本土に戻った俺は、傷心を癒やす間もなく、I国とS共和国のニュースを見て、顏を真っ青にさせるのであった。
小さな窓から、外をを覗き見れば、多くの人の運命を弄び、多くの人の命を奪った憎々しい島が目に入る。
あれから数分しかたっていないのに、だいぶ小さく見える島。
かなり離れたなと思った瞬間、真っ赤な火柱があちこちで上がりだす。
それはまるで、手筒花火を彷彿させるような美しさと残酷さを孕んだ、全てを破壊し燃やし尽くす炎。
爆風が時間を経て、ようやくここまで届いたのか、今になってヘリが大きく揺れた。
とめどもなく流れる涙。
溢れ出る感情。
結局、俺がしたことは何だったのだろう。
ヒーロー気取りで、危険な島に来て。
助けたかった人は一人も救えなかった。
それどころか、大事な親友まで失った。
震えている拳の上に大介の手が添えられる。
「かっつん、無駄じゃないよ。龍平ジィも、直也さんも。それに洋ちゃんも。皆、かっつんに思いを託した。『paraíso』計画をぶち壊せってね! それを皆の力で達成させたんだ。無駄じゃないよ」
大介は、俺に自分を責めるなという事を直接的にではなく、遠回しに伝えてくれた。
けれど、俺は後悔せずにはいられない。
自分を責めずにはいられない。
所長の挑発に乗らず、冷静に対応していれば、もしかしたら助けられた筈の祖父。
自分の手で殺めた兄貴。
待つ事が出来ずに島と共に海に沈めてしまった洋一郎。
全部が全部、俺のせいで命を落としたんだ。
俺は一生を懸けて彼らの意志を引き継ぎ、彼らに償わなくてはならない。
真っ赤に燃える島がどんどん遠ざかっていくのを目の端に捉えながら、新たな決意を誓う。
今後、必ず第二、第三の『paraíso』が計画されるだろう。
そうなったら、全て、俺が潰して見せる。
この命がある限り。
俺は、あの真っ赤に燃える多くの魂の炎にそう誓った。
そして、本土に戻った俺は、傷心を癒やす間もなく、I国とS共和国のニュースを見て、顏を真っ青にさせるのであった。
0
あなたにおすすめの小説
視える僕らのシェアハウス
橘しづき
ホラー
安藤花音は、ごく普通のOLだった。だが25歳の誕生日を境に、急におかしなものが見え始める。
電車に飛び込んでバラバラになる男性、やせ細った子供の姿、どれもこの世のものではない者たち。家の中にまで入ってくるそれらに、花音は仕事にも行けず追い詰められていた。
ある日、駅のホームで電車を待っていると、霊に引き込まれそうになってしまう。そこを、見知らぬ男性が間一髪で救ってくれる。彼は花音の話を聞いて名刺を一枚手渡す。
『月乃庭 管理人 竜崎奏多』
不思議なルームシェアが、始まる。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる