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4、ホテル
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「ほら、体調とかあるからさ、ダメな時は仕方ないよ」
「…………」
「悪いけど、俺、自分だけで楽しめるタイプじゃないからさ……じゃあ……」
気まずそうな顔で男が部屋を出て行って、バタンとドア閉まる音がした。
俺はベッドに座っていたが、唸り声を上げて後ろに倒れて転がった。
「なんでだ……クソっ……どうしてダメなんだ」
平日の真昼間なんて人の少ない時間にやっとつかまった男だった。嗜虐趣味はNGだったけど、無理やり頼み込んでライトなプレイだったらとOKとしてもらった。
いつもだったらこれで十分だったはずだ。
それが、俺のソコは全く反応しなかった。
俺のあまりの無反応ぶりに、男も萎えてしまった。
せっかく見つけた相手だったのに、可哀想なやつという目で見られて帰られてしまった。
コッチの事情を男に慰められるなんて初めてだった。
屈辱、というより狼狽という言葉が近い。
欲求不満だと思っていたのに、ちっとも興奮しないし、まるで枯れてしまったような感覚だった。
「はぁ…………」
何をやっているんだと虚しくなった。
夢の中ではあんなに興奮しているクセに、現実では役立たずなんて笑えない冗談だ。
ハル兄……
悪い子だね、こんなところへ遊びに来るなんて
俺が可愛がってあげるだけじゃ足りないの?
目を瞑ったら頭の中に理玖の声が響いてくる。
いつも悪夢の中の理玖は、俺の理想の相手だと言っていい。徹底的に俺を痛ぶって優しくしてくれる。
義父が俺に与えた圧倒的な暴力は、思春期だった俺に大きな影響を与えた。
生きている実感を得るのと快楽を得るのはよく似ている。
生半可な快感では満たされない。
ひどく、痛くされて、ベタベタに甘やかされたい。
そうされることで、俺はやっと満たされる。
自分でも本当に面倒でどうしようもないやつだと思う。
本当に……こんなに変態だったなんて……
俺のこと考えて、大きくしちゃうなんて
理玖の声にハッとして目を開けたら、さっきまで静かな海のようだったソコが、大きくなって天を向いているのが見えてしまった。
「う……嘘だろぉ……、なんで今」
わざわざラブホのベッドで、誰もいないのに自慰をすることになるなんて、どんな変態だともう泣きそうになった。
せっかくだから時間いっぱいいて、仮眠までしてホテルから出た。
もう悩むのもバカバカしくなって、美味いものでも買って帰ろうと思ったら視界に高そうな革靴が見えた。
下を向いて歩いていたので、誰かにぶつかりそうになったのかと思い、顔を上げて道を譲ろうとした。
「あ……やっぱり、瀬名さん」
ぼんやりしていたが、どこかで聞いた声に名前を呼ばれて一気に現実に戻ってきた。
目の前に立っていたのは、理玖の担任である堀川だった。
先生がこんなところにと思ったが、左腕に校外巡回中という文字が見えてしまった。
そういえばここは学校近くの繁華街にあたる場所だということに気がついて、一気に体が冷えて真っ青になった。
ホテルから出てきたところなので、ばっちり見られてしまっただろう。
「今、ホテル街の見回り強化中でして……、すみません、見なかったことにするべきでしたね」
「い……いえ、先生も大変ですね。あの、じゃあ、これで……」
なんてところを見られてしまったんだ。
これから行事でどんな顔をしたらいいのか、もう考えるだけで頭が痛かった。
さっさと消えようとしたのに、何故か堀川は俺の横に並んで一緒に歩き始めてしまった。
「そんなに気になさらないでください。大人ですし、出入りは自由ですから」
「ははは、そうご理解いただけると助かります」
「……それにしてもお一人で出ていらした、ということは相手の方は置いてこられたんですか? 意外と冷たい……ああ、すみません」
「……一人だったので、一人で出てきただけですから」
堀川の調子に合わせて話していたが、口に出してから俺は何を話しているのかと慌てた。
「……お一人でラブホテルに? もしかして、自宅では気を使って解消できないとか……」
「あの、こちらも色々と事情があるので、深く聞かないでいただけると助かるんですけど」
先日のサッパリした印象とは違い、やけに絡んでくる堀川に疑問を感じて言葉を強めたら、サッと目の前に小さな紙が出された。
「私の連絡先です。子育てのこととか、その他のことでも、なんでも相談に乗りますよ。普段は保護者の方にここまでしませんが、瀬名さんと気が合いそうだなと思ったので……」
軽くウィンクされてしまった。
用意がよく遊び慣れた手つきに、これは相当な男だなと感じたが、思わずその紙を手に取ってしまった。
「では、連絡待ってます」
長い指でサラリと俺の手を撫でてから、堀川は真面目な顔に戻って繁華街の方へ行ってしまった。
俺はしばらくその場で立ち尽くしていたが、ため息をついてから紙をポケットの中にねじ込んで歩き出した。
悪夢と下半身の問題に、担任教師にラブホ通いがバレて、もう散々だった。
理玖に言うことはないと思うが、弱音を握られたような気がして、この時はモヤっとした気持ちになった。
「最近、よくスマホ見てるね」
沈んだ声が聞こえてきて、ハッとして顔を上げると、理玖が寂しそうな顔をして俺を見ていた。
しまった、やってしまった。
食事の最中に、しかも理玖が作ってくれた夕飯を前にして、何をやっているんだと冷や汗が出てきた。
「食事中にすまない、本社からの連絡が多くて……」
「ごめんなさい。お仕事のことなのに……、責めるようなことを言って……」
「いや、俺が悪い。理玖がせっかく作ってくれた食事なのに手もつけずに……。今日はペスカトーレか。美味そうだ、おかわりはある?」
「うん、冷凍しておけばいいかと思ってたくさん作ってあるよ。いっぱい食べてくれると嬉しい」
無理やり誤魔化すように謝ったが、理玖は嬉しそうに微笑んでくれた。
ホッとしながら、さすがにまずかったとスマホをポケットにしまった。
口止めをしようと思ったわけではないが、向こうの考えが知りたくて、理玖の担任堀川と連絡を取るようになった。
堀川は忙しい仕事なのにまめな男で、毎日メッセージを送ってくる。
他愛無い世間話から、理玖の学校での様子がほとんどだが、こんな風にやり取りする相手が今までいなかったので、気がつくとスマホを確認するクセができてしまった。
また俺は自分のことばかりだと反省しながら、理玖が作ってくれた夕食を残さず平らげた。
先に食べ終わった理玖が食器を片付けようとした時、痛みを堪えるような声がして皿が机の上に落ちた。
割れることはなかったが、ゴトンという鈍い音が響いた。
理玖は慌てた様子で布巾を使って溢れたソースを拭いていたが、間違えて落としてしまったにしては、不自然な動きに気がついた俺は理玖を呼び止めた。
「理玖、もしかして怪我をしていないか?」
「あ……、え……えと、うん」
申し訳なさそうにシュンとなった理玖の顔を見て、俺は慌てて立ち上がって理玖の側に移動した。
「実は……体育の時間に右腕にボールが当たって……大したことじゃないから」
理玖はなかなか腕を見せようとしないので、少し強引に腕を掴んで服の袖を捲り上げたら、腕は青くアザになって腫れていた。
「なっ……、大したことないって……ひどいじゃないか!」
「大丈夫、保健室で診てもらって、打ち身だろうって。冷やしてもらったし湿布もあるから……」
「っっ……! 学校から連絡が……」
「体育会系の部活なんてしょっちゅうだから、これくらいじゃ連絡はいかないよ」
分からない。
学校との絡みなんて仕組みがよく分からないし、そう言われてしまえば、そうなのかとも思うけれど、それにしてもまた気が付かなかった自分に腹が立った。
「理玖……お前のことだから迷惑をかけたくないとか思ったのかもしれないけど、とにかく小さなことでも何でも話してくれ。昔の理玖は体が弱かっただろう。大きくなったからといって安心はできない。心配でたまらないよ」
理玖は目元を赤くして潤んだ目をしていた。
泣き顔を見せたくなかったのか、両手で口元をサッと隠した。
こんな純粋な子が傷ついたことを我慢していたなんて、想像しただけで胸が張り裂けそうになった。
「湿布をして、包帯を巻こう。確か薬箱に入っていたはずだ」
「あ、でも、まだお風呂に入ってなくて……」
理玖の申し訳なさそうな様子を見て、俺は考えてしまった。
まだ痛みが強くて皿を落としてしまうくらいだ。
シャワーだけ浴びるとしても、あの腕だと服を脱ぐのも苦労するかもしれない。
若干自分の自制心に不安があるのだが、ここは義兄としてやらなければと決意を固めた。
「その腕じゃ大変だろうと思うから、俺が一緒に入って助ける」
思春期の理玖にこんな提案は嫌がるかと思ったが、理玖は少し驚いた顔をしたが、じゃあお願いしますと素直に返してきた。
もしかしたら、日常の動作でも痛みが続いて大変だったのかもしれない。
またまた胸が痛くなった。
「そこに座ってくれ、ボディソープを用意するから」
裸にした理玖を浴室の椅子に座らせて、俺は体を洗う準備を始めた。
理玖の方をなんとか見ないようにしているが、シャツを脱ぐのを手伝った時は、涎をこぼしそうになってしまった。
部活は文系と聞いていたが、まるで運動部のエースのような厚く盛り上がった胸板と割れた腹筋に思わず手が出そうになった。
ズボンを脱がす時は目線を下に向けて、何とか見ないように気をつけた。
しかし視界に思った通り立派なモノが見えてしまったら、もう頭の中がそれしか考えられなくなった。
俺まで素っ裸になるわけにいかず、大きめでゆるめのTシャツを選んで、下も同じく緩めのハーフパンツを履いた。
もちろん汚れてもいいし、万が一、血迷った時の膨らみを隠す目的もある。
恐れていた通り、理玖の裸を見て、謎の欲求不満男は半勃ち状態になった。
「ええと、スポンジはこれでいいかな……」
「ハル兄、あのさ……ごめんね。俺、肌が弱くてスポンジとかで赤くなって荒れちゃうんだ。だからいつも手で……、ごめん、やっぱり自分でやるよ」
「なっ、何を言ってるんだ。ここまで準備したんだから俺の方は問題ない。手で洗えばいいんだな」
また遠慮がちになる理玖に、俺は何でもないことだと分かってもらうために笑顔でアピールをした。しかし声は裏返ってしまったし、胸はドキドキとうるさく鳴っていて顔も赤くなっている気がする。
夢の中で想像していた以上に、理玖の体は俺好みになっていた。
少し厚みのある胸に腕が触れたら、理玖体はピクンと動いた。敏感な部分だから丁寧にしないといけない。
ごくりと唾を飲み込んでしまった。
まずは頭を洗った後、よくボディソープを泡立てて、理玖の体を洗い始めた。
背中を中心に手を広げながら優しくマッサージするように肌の上を滑らせて、後ろから胸の方まで洗っていった。
「んっ…………」
理玖の口から艶っぽい声が漏れてドキッとしてしまった。
平常心平常心と思いながら、手を下半身の方に動かしていくと、硬くて大きなモノに触れてしまった。
「ご……ごめんなさ……俺……」
「理玖……」
いちおうそこはタオルで隠すようにしていたが、明らかに勃ち上がっていて、タオルがテントを張ったような状態になっていた。
「大丈夫、同じ男同士だし、気にならないよ。若くて元気な証拠だ。どうせならソコも手伝おうか? はははっ」
ここは大人として自然なことだと笑って、冗談で流してあげようとした。
やめてよと返されるのかと思っていたら、理玖は俺の手を掴んで、なんとそこへ導いてしまった。
「お願い……ハル兄」
心臓がバクバクと壊れそうなくらいに鳴った。
茹で上がりそうな頭でやっと考えたのは、理玖は右腕を怪我していて、擦りづらいのだということだった。
「そ、そうだったなっ、動かすの大変だよな。分かった、恥ずかしくないように見ないようにするから」
俺は理玖の後ろに座って、タオルで隠された中に手を入れた。
理玖のそこはすでにガチガチに硬くなっていて、俺が触れたらビクンと揺れた。
手で掴んでゆっくりと上下に動かし始めたら、どんどんとデカくなるので、ごくりと唾を飲み込んでしまった。
ヤバい……、こんなところまで俺の好み過ぎる。
この長くて太いヤツでゴリゴリ中を擦られたい。
タオルを押し上げて見える形もエロ過ぎてたまらない。
俺は途中からこれが理玖のものだということを忘れて、夢中で擦ってしまった。
「はぁ……はぁ……はっ……あっ、あっ……」
理玖の口から漏れる声がエロ過ぎ興奮が止まらない。
俺のアソコももう熱くなって爆発しそうだ。理玖の背中に擦り付けてしまった。
気持ちいい……気持ちよくてたまらない。
「ハル兄……ハル……も……いっ……くっっ」
「あっ……っ」
理玖がビクビクと腰を揺らして達した瞬間、俺も一緒に達してしまった。
理玖の声に重なったが、わずかに声を漏らしてしまって、ハッとして正気に戻った。
「ハル兄……ごめんね、こんなことまで……でも、気持ち良かった」
放心状態の俺の耳元に理玖が息を吹きかけるように囁いてきて、ぶるりと震えてしまった。
キスをされるのかと思った。
それくらい近い距離で息の熱さまで感じてしまった。
理玖の瞳は燃えているみたいに熱くて、視線に囚われた俺はしばらく動けなかった。
これは夢ではないのか。
目の前にいる理玖が夢の中の理玖に見えてしまい慌てて首を振った。
すべて、俺の性欲と妄想のせいだ。
「ハル兄、たくさん出ちゃったから流してくれる?」
理玖の低くて色気のある声にゾクゾクとして震えてしまった。
分かったと言ってシャワーを手に取ったが、胸の高鳴りはいつになっても治らなかった。
ヌいてやると提案したのは俺で、俺がリードしていたはずだった。
それなのに、まるで理玖にイカされたような感覚だった。
まさかと信じられず、その思いを慌てて頭の中で打ち消したのだった。
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「…………」
「悪いけど、俺、自分だけで楽しめるタイプじゃないからさ……じゃあ……」
気まずそうな顔で男が部屋を出て行って、バタンとドア閉まる音がした。
俺はベッドに座っていたが、唸り声を上げて後ろに倒れて転がった。
「なんでだ……クソっ……どうしてダメなんだ」
平日の真昼間なんて人の少ない時間にやっとつかまった男だった。嗜虐趣味はNGだったけど、無理やり頼み込んでライトなプレイだったらとOKとしてもらった。
いつもだったらこれで十分だったはずだ。
それが、俺のソコは全く反応しなかった。
俺のあまりの無反応ぶりに、男も萎えてしまった。
せっかく見つけた相手だったのに、可哀想なやつという目で見られて帰られてしまった。
コッチの事情を男に慰められるなんて初めてだった。
屈辱、というより狼狽という言葉が近い。
欲求不満だと思っていたのに、ちっとも興奮しないし、まるで枯れてしまったような感覚だった。
「はぁ…………」
何をやっているんだと虚しくなった。
夢の中ではあんなに興奮しているクセに、現実では役立たずなんて笑えない冗談だ。
ハル兄……
悪い子だね、こんなところへ遊びに来るなんて
俺が可愛がってあげるだけじゃ足りないの?
目を瞑ったら頭の中に理玖の声が響いてくる。
いつも悪夢の中の理玖は、俺の理想の相手だと言っていい。徹底的に俺を痛ぶって優しくしてくれる。
義父が俺に与えた圧倒的な暴力は、思春期だった俺に大きな影響を与えた。
生きている実感を得るのと快楽を得るのはよく似ている。
生半可な快感では満たされない。
ひどく、痛くされて、ベタベタに甘やかされたい。
そうされることで、俺はやっと満たされる。
自分でも本当に面倒でどうしようもないやつだと思う。
本当に……こんなに変態だったなんて……
俺のこと考えて、大きくしちゃうなんて
理玖の声にハッとして目を開けたら、さっきまで静かな海のようだったソコが、大きくなって天を向いているのが見えてしまった。
「う……嘘だろぉ……、なんで今」
わざわざラブホのベッドで、誰もいないのに自慰をすることになるなんて、どんな変態だともう泣きそうになった。
せっかくだから時間いっぱいいて、仮眠までしてホテルから出た。
もう悩むのもバカバカしくなって、美味いものでも買って帰ろうと思ったら視界に高そうな革靴が見えた。
下を向いて歩いていたので、誰かにぶつかりそうになったのかと思い、顔を上げて道を譲ろうとした。
「あ……やっぱり、瀬名さん」
ぼんやりしていたが、どこかで聞いた声に名前を呼ばれて一気に現実に戻ってきた。
目の前に立っていたのは、理玖の担任である堀川だった。
先生がこんなところにと思ったが、左腕に校外巡回中という文字が見えてしまった。
そういえばここは学校近くの繁華街にあたる場所だということに気がついて、一気に体が冷えて真っ青になった。
ホテルから出てきたところなので、ばっちり見られてしまっただろう。
「今、ホテル街の見回り強化中でして……、すみません、見なかったことにするべきでしたね」
「い……いえ、先生も大変ですね。あの、じゃあ、これで……」
なんてところを見られてしまったんだ。
これから行事でどんな顔をしたらいいのか、もう考えるだけで頭が痛かった。
さっさと消えようとしたのに、何故か堀川は俺の横に並んで一緒に歩き始めてしまった。
「そんなに気になさらないでください。大人ですし、出入りは自由ですから」
「ははは、そうご理解いただけると助かります」
「……それにしてもお一人で出ていらした、ということは相手の方は置いてこられたんですか? 意外と冷たい……ああ、すみません」
「……一人だったので、一人で出てきただけですから」
堀川の調子に合わせて話していたが、口に出してから俺は何を話しているのかと慌てた。
「……お一人でラブホテルに? もしかして、自宅では気を使って解消できないとか……」
「あの、こちらも色々と事情があるので、深く聞かないでいただけると助かるんですけど」
先日のサッパリした印象とは違い、やけに絡んでくる堀川に疑問を感じて言葉を強めたら、サッと目の前に小さな紙が出された。
「私の連絡先です。子育てのこととか、その他のことでも、なんでも相談に乗りますよ。普段は保護者の方にここまでしませんが、瀬名さんと気が合いそうだなと思ったので……」
軽くウィンクされてしまった。
用意がよく遊び慣れた手つきに、これは相当な男だなと感じたが、思わずその紙を手に取ってしまった。
「では、連絡待ってます」
長い指でサラリと俺の手を撫でてから、堀川は真面目な顔に戻って繁華街の方へ行ってしまった。
俺はしばらくその場で立ち尽くしていたが、ため息をついてから紙をポケットの中にねじ込んで歩き出した。
悪夢と下半身の問題に、担任教師にラブホ通いがバレて、もう散々だった。
理玖に言うことはないと思うが、弱音を握られたような気がして、この時はモヤっとした気持ちになった。
「最近、よくスマホ見てるね」
沈んだ声が聞こえてきて、ハッとして顔を上げると、理玖が寂しそうな顔をして俺を見ていた。
しまった、やってしまった。
食事の最中に、しかも理玖が作ってくれた夕飯を前にして、何をやっているんだと冷や汗が出てきた。
「食事中にすまない、本社からの連絡が多くて……」
「ごめんなさい。お仕事のことなのに……、責めるようなことを言って……」
「いや、俺が悪い。理玖がせっかく作ってくれた食事なのに手もつけずに……。今日はペスカトーレか。美味そうだ、おかわりはある?」
「うん、冷凍しておけばいいかと思ってたくさん作ってあるよ。いっぱい食べてくれると嬉しい」
無理やり誤魔化すように謝ったが、理玖は嬉しそうに微笑んでくれた。
ホッとしながら、さすがにまずかったとスマホをポケットにしまった。
口止めをしようと思ったわけではないが、向こうの考えが知りたくて、理玖の担任堀川と連絡を取るようになった。
堀川は忙しい仕事なのにまめな男で、毎日メッセージを送ってくる。
他愛無い世間話から、理玖の学校での様子がほとんどだが、こんな風にやり取りする相手が今までいなかったので、気がつくとスマホを確認するクセができてしまった。
また俺は自分のことばかりだと反省しながら、理玖が作ってくれた夕食を残さず平らげた。
先に食べ終わった理玖が食器を片付けようとした時、痛みを堪えるような声がして皿が机の上に落ちた。
割れることはなかったが、ゴトンという鈍い音が響いた。
理玖は慌てた様子で布巾を使って溢れたソースを拭いていたが、間違えて落としてしまったにしては、不自然な動きに気がついた俺は理玖を呼び止めた。
「理玖、もしかして怪我をしていないか?」
「あ……、え……えと、うん」
申し訳なさそうにシュンとなった理玖の顔を見て、俺は慌てて立ち上がって理玖の側に移動した。
「実は……体育の時間に右腕にボールが当たって……大したことじゃないから」
理玖はなかなか腕を見せようとしないので、少し強引に腕を掴んで服の袖を捲り上げたら、腕は青くアザになって腫れていた。
「なっ……、大したことないって……ひどいじゃないか!」
「大丈夫、保健室で診てもらって、打ち身だろうって。冷やしてもらったし湿布もあるから……」
「っっ……! 学校から連絡が……」
「体育会系の部活なんてしょっちゅうだから、これくらいじゃ連絡はいかないよ」
分からない。
学校との絡みなんて仕組みがよく分からないし、そう言われてしまえば、そうなのかとも思うけれど、それにしてもまた気が付かなかった自分に腹が立った。
「理玖……お前のことだから迷惑をかけたくないとか思ったのかもしれないけど、とにかく小さなことでも何でも話してくれ。昔の理玖は体が弱かっただろう。大きくなったからといって安心はできない。心配でたまらないよ」
理玖は目元を赤くして潤んだ目をしていた。
泣き顔を見せたくなかったのか、両手で口元をサッと隠した。
こんな純粋な子が傷ついたことを我慢していたなんて、想像しただけで胸が張り裂けそうになった。
「湿布をして、包帯を巻こう。確か薬箱に入っていたはずだ」
「あ、でも、まだお風呂に入ってなくて……」
理玖の申し訳なさそうな様子を見て、俺は考えてしまった。
まだ痛みが強くて皿を落としてしまうくらいだ。
シャワーだけ浴びるとしても、あの腕だと服を脱ぐのも苦労するかもしれない。
若干自分の自制心に不安があるのだが、ここは義兄としてやらなければと決意を固めた。
「その腕じゃ大変だろうと思うから、俺が一緒に入って助ける」
思春期の理玖にこんな提案は嫌がるかと思ったが、理玖は少し驚いた顔をしたが、じゃあお願いしますと素直に返してきた。
もしかしたら、日常の動作でも痛みが続いて大変だったのかもしれない。
またまた胸が痛くなった。
「そこに座ってくれ、ボディソープを用意するから」
裸にした理玖を浴室の椅子に座らせて、俺は体を洗う準備を始めた。
理玖の方をなんとか見ないようにしているが、シャツを脱ぐのを手伝った時は、涎をこぼしそうになってしまった。
部活は文系と聞いていたが、まるで運動部のエースのような厚く盛り上がった胸板と割れた腹筋に思わず手が出そうになった。
ズボンを脱がす時は目線を下に向けて、何とか見ないように気をつけた。
しかし視界に思った通り立派なモノが見えてしまったら、もう頭の中がそれしか考えられなくなった。
俺まで素っ裸になるわけにいかず、大きめでゆるめのTシャツを選んで、下も同じく緩めのハーフパンツを履いた。
もちろん汚れてもいいし、万が一、血迷った時の膨らみを隠す目的もある。
恐れていた通り、理玖の裸を見て、謎の欲求不満男は半勃ち状態になった。
「ええと、スポンジはこれでいいかな……」
「ハル兄、あのさ……ごめんね。俺、肌が弱くてスポンジとかで赤くなって荒れちゃうんだ。だからいつも手で……、ごめん、やっぱり自分でやるよ」
「なっ、何を言ってるんだ。ここまで準備したんだから俺の方は問題ない。手で洗えばいいんだな」
また遠慮がちになる理玖に、俺は何でもないことだと分かってもらうために笑顔でアピールをした。しかし声は裏返ってしまったし、胸はドキドキとうるさく鳴っていて顔も赤くなっている気がする。
夢の中で想像していた以上に、理玖の体は俺好みになっていた。
少し厚みのある胸に腕が触れたら、理玖体はピクンと動いた。敏感な部分だから丁寧にしないといけない。
ごくりと唾を飲み込んでしまった。
まずは頭を洗った後、よくボディソープを泡立てて、理玖の体を洗い始めた。
背中を中心に手を広げながら優しくマッサージするように肌の上を滑らせて、後ろから胸の方まで洗っていった。
「んっ…………」
理玖の口から艶っぽい声が漏れてドキッとしてしまった。
平常心平常心と思いながら、手を下半身の方に動かしていくと、硬くて大きなモノに触れてしまった。
「ご……ごめんなさ……俺……」
「理玖……」
いちおうそこはタオルで隠すようにしていたが、明らかに勃ち上がっていて、タオルがテントを張ったような状態になっていた。
「大丈夫、同じ男同士だし、気にならないよ。若くて元気な証拠だ。どうせならソコも手伝おうか? はははっ」
ここは大人として自然なことだと笑って、冗談で流してあげようとした。
やめてよと返されるのかと思っていたら、理玖は俺の手を掴んで、なんとそこへ導いてしまった。
「お願い……ハル兄」
心臓がバクバクと壊れそうなくらいに鳴った。
茹で上がりそうな頭でやっと考えたのは、理玖は右腕を怪我していて、擦りづらいのだということだった。
「そ、そうだったなっ、動かすの大変だよな。分かった、恥ずかしくないように見ないようにするから」
俺は理玖の後ろに座って、タオルで隠された中に手を入れた。
理玖のそこはすでにガチガチに硬くなっていて、俺が触れたらビクンと揺れた。
手で掴んでゆっくりと上下に動かし始めたら、どんどんとデカくなるので、ごくりと唾を飲み込んでしまった。
ヤバい……、こんなところまで俺の好み過ぎる。
この長くて太いヤツでゴリゴリ中を擦られたい。
タオルを押し上げて見える形もエロ過ぎてたまらない。
俺は途中からこれが理玖のものだということを忘れて、夢中で擦ってしまった。
「はぁ……はぁ……はっ……あっ、あっ……」
理玖の口から漏れる声がエロ過ぎ興奮が止まらない。
俺のアソコももう熱くなって爆発しそうだ。理玖の背中に擦り付けてしまった。
気持ちいい……気持ちよくてたまらない。
「ハル兄……ハル……も……いっ……くっっ」
「あっ……っ」
理玖がビクビクと腰を揺らして達した瞬間、俺も一緒に達してしまった。
理玖の声に重なったが、わずかに声を漏らしてしまって、ハッとして正気に戻った。
「ハル兄……ごめんね、こんなことまで……でも、気持ち良かった」
放心状態の俺の耳元に理玖が息を吹きかけるように囁いてきて、ぶるりと震えてしまった。
キスをされるのかと思った。
それくらい近い距離で息の熱さまで感じてしまった。
理玖の瞳は燃えているみたいに熱くて、視線に囚われた俺はしばらく動けなかった。
これは夢ではないのか。
目の前にいる理玖が夢の中の理玖に見えてしまい慌てて首を振った。
すべて、俺の性欲と妄想のせいだ。
「ハル兄、たくさん出ちゃったから流してくれる?」
理玖の低くて色気のある声にゾクゾクとして震えてしまった。
分かったと言ってシャワーを手に取ったが、胸の高鳴りはいつになっても治らなかった。
ヌいてやると提案したのは俺で、俺がリードしていたはずだった。
それなのに、まるで理玖にイカされたような感覚だった。
まさかと信じられず、その思いを慌てて頭の中で打ち消したのだった。
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彼は会社を興した祖父のことをとても尊敬していて、自分も起業したいと熱く語ってくれた。
そして、俺の手を握って「できれば親友のお前には俺の右腕になってほしい」と言われた。
同性愛者の俺のことを気持ち悪いと遠ざけることもせずに、親友のままでいてくれた彼に俺は感謝して、同じ大学に進学して、大学の頃に彼と一緒にゲームを作成する会社を起業した。
あれから二十年間、本当に二人三脚で駆け抜けてきた。
そして、昨年売り出したVRMMOが世界的に大ヒットし、ゲーム大賞を取ったことを祝うパーティーで親友が語った言葉に俺の覚悟も決まった。
「俺もそろそろ恋愛したい」
親友のその言葉に、俺は、長年の片想いを終わらせる覚悟をした。
不憫な拗らせアラフォーが”愛”へと踏み出すお話です。
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