2 / 12
お給金のゆくえ
しおりを挟む
前領主イクナート様に指示された任務のお給金って、新しい領主様から頂けるのでしょうか。
そのように、お伺いを立てただけでも、もしかして、粗相なのでしょうか。
皆さんが、哀れな者を見る目で、僕を見ます。
やがて、レイデン様がおっしゃいました。
「――ヴァン・ガーディナ皇子に直訴するのは、命が惜しければやめておけば? 仕方ない、ヴァン・ガーディナ皇子にご挨拶した後で、補佐官のゼルダ皇子にご挨拶して、聞いてみなさい。ゼルダ皇子は優しい方だ、おまえが最初の挨拶でヴァン・ガーディナ皇子のご不興を買わなければ、何とかして頂けるだろう」
うう。最初のご挨拶はしないといけないんですね。
そこは飛ばせないんですね。
「補佐官のゼルダ皇子……あの、先程のお話で、ヴァン・ガーディナ皇子に瀕死の重傷を負わされたとかいう方、とは別ですよね?」
ゼルダ皇子は、尊くも領主様の弟君であらせられます。血を分けた弟君を滅多刺しはないでしょう。
「いや、その方だよ。ヴァン・ガーディナ皇子は補佐官をゼルダ皇子一人しか置かれていない。ヴァン・ガーディナ皇子はゼンナとキールサキスを側近として使っているが、ゼンナとキールサキスは皇子の忠実な配下で、皇子に意見できる立場ではない。曲がりなりにも、ヴァン・ガーディナ皇子に意見できるのはゼルダ皇子だけだ」
僕はただ、うめくしかありませんでした。
弟君でさえ、不手際をすると滅多刺しなのですか……。
それは、僕などが不手際をしたら、秒殺されるということですか。
秒殺だったら、痛い、と感じる時間は長くなさそうなのが、せめてもの救いなのでしょうか。
泣きそうです。
泣いてもいいですか。
僕は本当に恐ろしかったのですが、無事に帰れることを神に祈りながら、新しい領主様のお部屋に向かいました。
丸一年かけて調査した、僕の努力の結晶を胸に抱えて。
**――*――**
「あいつ、イクナートに左遷されたこと、気付いてなかったんだな……」
「手土産も持たずに、挨拶に行ったんだったか?」
僕の後ろで、そんな会話がされていることなど、僕が知るよしもなく。
「あ、まずいな。ヴァン・ガーディナ皇子への挨拶にも、手土産を持たないんじゃないのか、あいつ」
「あぁ、それっぽいな。……冥福を祈ってやろう」
僕の後ろで、そんな会話がされていることなど、僕は知るよしもなく。
そのように、お伺いを立てただけでも、もしかして、粗相なのでしょうか。
皆さんが、哀れな者を見る目で、僕を見ます。
やがて、レイデン様がおっしゃいました。
「――ヴァン・ガーディナ皇子に直訴するのは、命が惜しければやめておけば? 仕方ない、ヴァン・ガーディナ皇子にご挨拶した後で、補佐官のゼルダ皇子にご挨拶して、聞いてみなさい。ゼルダ皇子は優しい方だ、おまえが最初の挨拶でヴァン・ガーディナ皇子のご不興を買わなければ、何とかして頂けるだろう」
うう。最初のご挨拶はしないといけないんですね。
そこは飛ばせないんですね。
「補佐官のゼルダ皇子……あの、先程のお話で、ヴァン・ガーディナ皇子に瀕死の重傷を負わされたとかいう方、とは別ですよね?」
ゼルダ皇子は、尊くも領主様の弟君であらせられます。血を分けた弟君を滅多刺しはないでしょう。
「いや、その方だよ。ヴァン・ガーディナ皇子は補佐官をゼルダ皇子一人しか置かれていない。ヴァン・ガーディナ皇子はゼンナとキールサキスを側近として使っているが、ゼンナとキールサキスは皇子の忠実な配下で、皇子に意見できる立場ではない。曲がりなりにも、ヴァン・ガーディナ皇子に意見できるのはゼルダ皇子だけだ」
僕はただ、うめくしかありませんでした。
弟君でさえ、不手際をすると滅多刺しなのですか……。
それは、僕などが不手際をしたら、秒殺されるということですか。
秒殺だったら、痛い、と感じる時間は長くなさそうなのが、せめてもの救いなのでしょうか。
泣きそうです。
泣いてもいいですか。
僕は本当に恐ろしかったのですが、無事に帰れることを神に祈りながら、新しい領主様のお部屋に向かいました。
丸一年かけて調査した、僕の努力の結晶を胸に抱えて。
**――*――**
「あいつ、イクナートに左遷されたこと、気付いてなかったんだな……」
「手土産も持たずに、挨拶に行ったんだったか?」
僕の後ろで、そんな会話がされていることなど、僕が知るよしもなく。
「あ、まずいな。ヴァン・ガーディナ皇子への挨拶にも、手土産を持たないんじゃないのか、あいつ」
「あぁ、それっぽいな。……冥福を祈ってやろう」
僕の後ろで、そんな会話がされていることなど、僕は知るよしもなく。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
冷遇妃マリアベルの監視報告書
Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。
第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。
そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。
王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。
(小説家になろう様にも投稿しています)
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる