霞月 ～魂盗り～

五 祟り

五 祟り ～淡い光の中に～

　光の中にいた。
　淡く優しい光の中、どこか、懐かしい場所。

“ お兄ちゃん ”

　幼い少女の声が、降るように響いた。
　儚く、切なく、優しい。

“ お姉ちゃんはね、お兄ちゃんにあげる。あやにあげるの。だからね…… ”

　どこにも、姿は見えなかった。彼自身の姿も。
　そこはどこでもない場所。
　けれど、確かにそこにいた。彼自身も、失いたくなかった子らも。

“ 来なくていいの。お姉ちゃんは来なくていいの。
　だから、いつかまた、お兄ちゃん、佳矢を見つけたら、かんざしを挿してね―― ”

　すぐそばから、小さな男の子の声もした。

“ 智兄なんて、薄情だからもういないんだよ。
　霞月姉ちゃん、来なくていいんだ。
　僕たち、待っていないんだ。
　霞月姉ちゃんは御影と一緒がいいんだから、そこにいたらいいんだ。
　僕たちが、また生まれて、会いに行くから……。
　だから、その時にはまた、遊んでね―― ”

　智から伝言があるんだと、直が思い出したように告げた。

“ 男の子が生まれたら、どうしても、五右衛門がいいって ”
“ 五右衛門？　やだね ”

　遺言なのに、御影が即座に却下すると、楽しげな笑い声が唱和した。
　佳矢と直がいつものように突撃してきた気がして、ぎゅっと、両腕に抱いた。

“ だから、もう、泣かないで ”
“ お姉ちゃんが泣かないように、笑ってね… ”