3 / 10
第3話 終わりのない悪夢
しおりを挟む
「ガゼル様、ガゼル様!」
デゼルの声――?
可愛らしく懐かしい、鈴をふるような綺麗なデゼルの声が聞こえて、ガゼルは驚いて飛び起きました。
泣きはらしたデゼルが傍にいて、目を覚ましたガゼルに抱きついてきました。
どうして自分が生きているのか、どうしてデゼルがここにいるのか、ここはどこなのか、ガゼルにはまるで、わかりませんでした。
「デゼル、ここは――? 私はいったい――」
「ごめんなさい、私がマリベル様に教えてもらった『夜明けの守護』を使ったせいで」
「それはいいんだ、それより、公国は――」
『夜明けの守護』には、デゼルが「夜明けの守護」と宣言すれば、デゼルのダメージをガゼルに引き受けさせることができるという、別の使い方もあったのですが、それも、ガゼルが生きていればのことです。
すぐに死ぬことになると考えたガゼルは、デゼルにその方法を教えなかったのですが、このままではデゼルが死んでしまうと判断したマリベルが、デゼルにその方法を教えたようでした。
「公国は……」
ささやくような震える声で、デゼルが泣きながら答えました。
「――滅びました」
目の前が真っ暗になって、ガゼルには自分がどうしてまだ生きているのか、本当に、わからなくなりました。
公国が滅びたのに、公子である彼だけが、何のために、生き残ってしまったのでしょう。
こんな、馬鹿なことが。
「ガゼル」
いつからいたのか、ネプチューンが冷たくガゼルに言いました。
「デゼルに手を出すなよ? 山賊どもの慰み者にされていたのを、オレが助けてやったんだ。デゼルがどうしてもと言うから、おまえの命も助けてやったが、デゼルはオレの妾にする。おまえがデゼルの傍にいるのは構わないが、手を出せば殺す。オプスキュリテ公国は滅んだ、一人で逃げたければそうしていいが、デゼルは置いていけよ」
**――*――**
ガゼルが意識を失っていた間に、公国は滅び、それを命じた皇帝と皇太子は、禁断の魔術に手を染めたネプチューンに討たれていました。
ネプチューンがまだ十歳のデゼルに度々、夜伽を申し渡して相手をさせるのに、ガゼルにはどうすることもできませんでした。
傍にいても、二人はもう、ふれあうことすら許されなかったのです。ネプチューンの相手をさせられて、震えながら泣くデゼルを抱き締めることさえ。
ガゼルの命を盾に取られているデゼルには、逃げることもできないのです。
デゼルはガゼルに、どうか、私のことは忘れて幸せになって下さいと、ここから逃げて下さいと、涙ながらに言いました。
いったい、何のために?
公国を滅ぼされ、デゼルを奪われ、大切だったすべてを蹂躙されてなお、一人で逃げて幸せになる――?
そんなこと、できるはずがありません。
公民を守れなかった彼が、一人だけ幸せになるなんて、許されるはずがありません。
**――*――**
その夜もまた、デゼルはネプチューンの夜伽に呼ばれていました。
「デゼル、待って」
振り向いたデゼルに、ガゼルは静かに微笑みかけて言いました。
「愛してる」
目を見開いたデゼルが、何度も、何か言いかけた後、静かに涙を落としました。
「ガゼル様、私も」
「ずっと、傍にいてくれてありがとう。守ってあげられなくてごめんね」
デゼルは泣きながら、首を横にふりました。
何度も、心配そうにふり向くデゼルを見送った後。
ガゼルは手首を切りました。
デゼルの声――?
可愛らしく懐かしい、鈴をふるような綺麗なデゼルの声が聞こえて、ガゼルは驚いて飛び起きました。
泣きはらしたデゼルが傍にいて、目を覚ましたガゼルに抱きついてきました。
どうして自分が生きているのか、どうしてデゼルがここにいるのか、ここはどこなのか、ガゼルにはまるで、わかりませんでした。
「デゼル、ここは――? 私はいったい――」
「ごめんなさい、私がマリベル様に教えてもらった『夜明けの守護』を使ったせいで」
「それはいいんだ、それより、公国は――」
『夜明けの守護』には、デゼルが「夜明けの守護」と宣言すれば、デゼルのダメージをガゼルに引き受けさせることができるという、別の使い方もあったのですが、それも、ガゼルが生きていればのことです。
すぐに死ぬことになると考えたガゼルは、デゼルにその方法を教えなかったのですが、このままではデゼルが死んでしまうと判断したマリベルが、デゼルにその方法を教えたようでした。
「公国は……」
ささやくような震える声で、デゼルが泣きながら答えました。
「――滅びました」
目の前が真っ暗になって、ガゼルには自分がどうしてまだ生きているのか、本当に、わからなくなりました。
公国が滅びたのに、公子である彼だけが、何のために、生き残ってしまったのでしょう。
こんな、馬鹿なことが。
「ガゼル」
いつからいたのか、ネプチューンが冷たくガゼルに言いました。
「デゼルに手を出すなよ? 山賊どもの慰み者にされていたのを、オレが助けてやったんだ。デゼルがどうしてもと言うから、おまえの命も助けてやったが、デゼルはオレの妾にする。おまえがデゼルの傍にいるのは構わないが、手を出せば殺す。オプスキュリテ公国は滅んだ、一人で逃げたければそうしていいが、デゼルは置いていけよ」
**――*――**
ガゼルが意識を失っていた間に、公国は滅び、それを命じた皇帝と皇太子は、禁断の魔術に手を染めたネプチューンに討たれていました。
ネプチューンがまだ十歳のデゼルに度々、夜伽を申し渡して相手をさせるのに、ガゼルにはどうすることもできませんでした。
傍にいても、二人はもう、ふれあうことすら許されなかったのです。ネプチューンの相手をさせられて、震えながら泣くデゼルを抱き締めることさえ。
ガゼルの命を盾に取られているデゼルには、逃げることもできないのです。
デゼルはガゼルに、どうか、私のことは忘れて幸せになって下さいと、ここから逃げて下さいと、涙ながらに言いました。
いったい、何のために?
公国を滅ぼされ、デゼルを奪われ、大切だったすべてを蹂躙されてなお、一人で逃げて幸せになる――?
そんなこと、できるはずがありません。
公民を守れなかった彼が、一人だけ幸せになるなんて、許されるはずがありません。
**――*――**
その夜もまた、デゼルはネプチューンの夜伽に呼ばれていました。
「デゼル、待って」
振り向いたデゼルに、ガゼルは静かに微笑みかけて言いました。
「愛してる」
目を見開いたデゼルが、何度も、何か言いかけた後、静かに涙を落としました。
「ガゼル様、私も」
「ずっと、傍にいてくれてありがとう。守ってあげられなくてごめんね」
デゼルは泣きながら、首を横にふりました。
何度も、心配そうにふり向くデゼルを見送った後。
ガゼルは手首を切りました。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
16
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる