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第三章 闇を彷徨う心を癒したい
第71話 町人Sは痛恨の失策をする
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デゼルを見失ってから、十三日が過ぎた。
僕をかくまってくれたユリシーズの話によれば、デゼルを助けてくれたのは、やっぱり、ネプチューン皇子だったみたいで、それが三日前のこと。
助けられたデゼルは丸一日、昏睡して生死の境をさまよったのに。
意識が戻ると、高熱すら引かないうちに、闇主たちを率いて帝国の内戦に参加、皇帝を討ったらしいんだ。
その後、皇子に夜伽を命じられると、デゼルは水神になって逃げてしまって、行方がわからなくなったんだって。
信じられないよ。いったい、どういうことなんだろう。
デゼルじゃなく、ネプチューン皇子が何を考えているのか理解できないんだ。
まだ十歳の、瀕死のデゼルに皇帝を討たせたあげく、夜伽を命じるなんて。
デゼルを助けてくれたことには感謝するけど――
ユリシーズが帝国に来たのはユリア様のご不幸について聞いてすぐ、ちょうど、僕達と入れ違いになるタイミングだったみたい。
デゼル、いつまで待てば、僕のところに戻ってきてくれるんだろう。
エリス様にまた、酷い目に遭わされたりしないか、心配だな。
だけど、もう本当に、追いかけようがないから。
先回りする意味でも、帝国の動向から目を離さない意味でも、ここにいるしかないんだ。
フォンと、虚空からきらめく光が波紋のように拡がったのは、ユリシーズにレモングラスっていう、爽やかな香りのハーブティーを淹れてもらっていた時だった。
「デゼル!」
クロノスの魔法で、デゼルが戻って来てくれたんだ。
「急に姿を隠したから、心配したんだよ」
「サイファ様……」
僕、絶対に、お仕置きしようと思ってたのに。
無事なデゼルの姿を見たら、それだけで、何もかも許せてしまって。
だって、邪神に追われて、すごく酷い目に遭わされて、それでも帰ってきてくれたんだ。
どんなに、つらかっただろう。
僕、何のためにお仕置きしようとしてたんだろう。
きっと、さっきまでの僕は、今の僕に比べたら、あんまり、頭が良くなかったんだ。
僕、成長期だから、たちまち成長したんだね。
「……?」
うつむいたきり、デゼルは僕の手を取ろうとしなかった。
「こどもを……」
胸が、どきんとした。
ガゼル様のお子様ならともかく、そうじゃなかった時、僕は、デゼルが孕まされた子供を愛せる――?
デゼルがどうして僕の手を取れないのか、今さら、わかったんだ。
デゼルの頬を、涙が一滴、もう一滴、零れ落ちた。
ただの悪夢なら、よかった。
デゼルの身に起きた、エリス様にさらわれてからのことは、忘れることも、なかったことにも、できないんだ。
「殺します」
それは、思いがけないデゼルの言葉で。
考える時間なら、たくさんあったのに。
僕は、考えなきゃいけないこと、何にも、考えていなかった。
デゼルに代わって、僕がしてあげなきゃいけない決断だったのに。
この決断をデゼルにさせてしまったことは、ずっと、響いた。
『私は何の罪もないこどもを殺したんだよ』って、デゼルは何度も、命を大切にしない選択を繰り返すことになるんだ。
僕が決断していれば、デゼルほど苦しんだりしなかったのに。
だって僕は、デゼルより遥かに冷酷だから。
デゼルを手籠めにした闇主の子に命を与えない決断に、僕なら、良心の呵責なんてなかったんだ。
僕をかくまってくれたユリシーズの話によれば、デゼルを助けてくれたのは、やっぱり、ネプチューン皇子だったみたいで、それが三日前のこと。
助けられたデゼルは丸一日、昏睡して生死の境をさまよったのに。
意識が戻ると、高熱すら引かないうちに、闇主たちを率いて帝国の内戦に参加、皇帝を討ったらしいんだ。
その後、皇子に夜伽を命じられると、デゼルは水神になって逃げてしまって、行方がわからなくなったんだって。
信じられないよ。いったい、どういうことなんだろう。
デゼルじゃなく、ネプチューン皇子が何を考えているのか理解できないんだ。
まだ十歳の、瀕死のデゼルに皇帝を討たせたあげく、夜伽を命じるなんて。
デゼルを助けてくれたことには感謝するけど――
ユリシーズが帝国に来たのはユリア様のご不幸について聞いてすぐ、ちょうど、僕達と入れ違いになるタイミングだったみたい。
デゼル、いつまで待てば、僕のところに戻ってきてくれるんだろう。
エリス様にまた、酷い目に遭わされたりしないか、心配だな。
だけど、もう本当に、追いかけようがないから。
先回りする意味でも、帝国の動向から目を離さない意味でも、ここにいるしかないんだ。
フォンと、虚空からきらめく光が波紋のように拡がったのは、ユリシーズにレモングラスっていう、爽やかな香りのハーブティーを淹れてもらっていた時だった。
「デゼル!」
クロノスの魔法で、デゼルが戻って来てくれたんだ。
「急に姿を隠したから、心配したんだよ」
「サイファ様……」
僕、絶対に、お仕置きしようと思ってたのに。
無事なデゼルの姿を見たら、それだけで、何もかも許せてしまって。
だって、邪神に追われて、すごく酷い目に遭わされて、それでも帰ってきてくれたんだ。
どんなに、つらかっただろう。
僕、何のためにお仕置きしようとしてたんだろう。
きっと、さっきまでの僕は、今の僕に比べたら、あんまり、頭が良くなかったんだ。
僕、成長期だから、たちまち成長したんだね。
「……?」
うつむいたきり、デゼルは僕の手を取ろうとしなかった。
「こどもを……」
胸が、どきんとした。
ガゼル様のお子様ならともかく、そうじゃなかった時、僕は、デゼルが孕まされた子供を愛せる――?
デゼルがどうして僕の手を取れないのか、今さら、わかったんだ。
デゼルの頬を、涙が一滴、もう一滴、零れ落ちた。
ただの悪夢なら、よかった。
デゼルの身に起きた、エリス様にさらわれてからのことは、忘れることも、なかったことにも、できないんだ。
「殺します」
それは、思いがけないデゼルの言葉で。
考える時間なら、たくさんあったのに。
僕は、考えなきゃいけないこと、何にも、考えていなかった。
デゼルに代わって、僕がしてあげなきゃいけない決断だったのに。
この決断をデゼルにさせてしまったことは、ずっと、響いた。
『私は何の罪もないこどもを殺したんだよ』って、デゼルは何度も、命を大切にしない選択を繰り返すことになるんだ。
僕が決断していれば、デゼルほど苦しんだりしなかったのに。
だって僕は、デゼルより遥かに冷酷だから。
デゼルを手籠めにした闇主の子に命を与えない決断に、僕なら、良心の呵責なんてなかったんだ。
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