悪役令嬢と十三霊の神々

冴條玲

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第一章 悪役令嬢はナイトメアモードを選ぶ

第46話 悪役令嬢はヒロインと女子会をする

「どういったご用向きでしょうか」

 うわぁ、綺麗。
 さすがヒロイン。
 侍女にしておくにはもったいない、儚げな美少女ユリアが緊張した様子で私を見たの。

「――京奈?」

 ユリアが目を見開いた。
 あ、京奈の記憶があるのね。よかった。
 記憶がなければ意味がわからないだけの言葉だから、カマをかけてみたの。

「今、なんて?」
「京奈よね? 私、雪乃よ」

 ユリアがびっくりした様子で、口許を手で覆ったの。

「嘘! どうしてデゼルなの!? 私、びっくりしたのよ、この段階で、もうデゼルとユリシーズがネプチューン様に会いにくるなんて思わなくて。ううん、そんなことより、あなたも神様に会ったの? よりによって、デゼルに転生したいってお願いしたの??」
「神様には会ったけど、星ロマの世界に転生してみないって軽く言われて、そういえば、どのキャラに転生するのか聞かなかった」

 ユリアが吹いた。

「あなたってどうしてそうなの、ふつう、悪役令嬢なんかに転生したら大変だから、キャラは確かめるわよ!?」
「……」

 どうしてかしら。
 深く考えなかったな。

「ねぇ、それより、ガゼル公子すっごいイケメンじゃない。あの子がデゼルのモブリーダー?」
「ううん、黒装束のサイファよ」
「あっちか、なかなか可愛い顔してたわね、あなたなら好きそう。でも、もったいないなぁ。ガゼル公子がいいじゃない、ネプチューンには負けるけど、ガゼル公子があと五年育てば……で、サイファはどこの貴公子なの? なれそめ聞かせてよ」

 あ、どうしよう。
 ものすごく、どうでもいい雑談なのに楽しすぎる。

「サイファったらすごいのよ! まだ十歳の時に、すっごく素敵なプロポーズをしてくれたの。ああ、思い出すだけでときめきがよみがえる、秋の草原でね」

 私がきゃーきゃー言いながら語ったのろけ話を、ユリアはつまらなさそうに聞いたの。

「何かしら、このデジャ・ビュ。翡翠の話を聞いたような気分よ。いくら、デゼルが七歳の時だからって、よく、ランドセル背負ったお子様にときめけたわね……」

 翡翠っていうのは、星ロマの攻略対象者の一人で、明るさと健気さが魅力の可愛い子。
 一部ではショタ向けと言われているけど、私、とっても心外なの。
 翡翠は十七歳よ?
 ショタじゃないもん。

「いけない、こんなこと、話してる場合じゃなかった。ねぇ、ユリアはシナリオ通り、おとなしく死を選んでヒロインに転生するつもりなの?」

 さすがに、憂鬱ゆううつそうな顔になってユリアがため息を吐いた。

「そりゃ、死にたくはないけど、ヒロインには転生したいわ? やっぱり、しっかりシナリオ通りに進めないと、ネプチューン様に何があるかわからないし」
「ユリアのままでネプチューンと幸せになるっていうのは? 私、協力するよ」

 難しい顔をして考え込んだユリアが私に聞いた。

「ユリアが死ななくても、闇の十二使徒がネプチューン様の配下にそろうかしら」
「闇落ちしてない闇の十二使徒をそろえるつもりよ。闇落ちを阻止したら、クライスがもうピストルを開発したから、闇落ちしてなくても大丈夫そう」
「えぇ、嘘!? あなたって相変わらず、すごい裏技で攻略してるわね……」

 さらに、考え込んだユリアが、真剣な顔で私を見た。

「ねぇ、正直に答えてくれる? あなた、ネプチューン様を見てどう思った?」
「?」

 え。正直に!?
 ロリコンの変態なんじゃないかと思った、とか、どうかと思った、とかって答えるの!?
 それは!
 ネプチューンに惚れ込んでるユリアに答えてはいけない本音な気がするッ!

「デゼルだもの、ときめいてしまったんじゃないの?」

 ぶっ。
 私、飲んでいた紅茶を吹いてしまったわ。

「きゃっ」
「あ、ごめん」

 慌ててテーブルを拭きながら、私は力いっぱい否定した。

「ないない、それはないよ! だって私、もう、サイファと契ったもの、サイファしか考えられないよ!」

 今度はユリアが吹いた。

「はぁ!? あの子まだ子供じゃない、あなた、契るの意味わかってるの? キスしたとかその程度なんじゃ」
「おはようのキスなら毎日よッ!」

 私は握りこぶしでうなずいたの。
 話が全然、噛み合ってないような気もするけど、ユリアは私がネプチューンを好きなんじゃないか、と考えるのはやめてくれたみたい。

「つまり、あなたはあの麗しいネプチューン様を見ても、サイファがいいと。あなたの摩訶不思議な目には、サイファこそが運命の人に見えて、他の人なんて考えられないと言うわけね?」

 私が真剣な顔でうなずくと、ユリアが腕組みして言った。

「わかった、考えてみるわ。皇帝になったネプチューン様とこのまま、何の悲劇もなく幸せになれるなら、それが一番、いいものね」


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