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第三章 願いの枠が余ったので
第75話 悪役令嬢はヒロインの激怒を買う
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「京奈、私よ! ユリシーズじゃない、私がそうなの」
クロノスでサイファのところに戻った私が訴えると、京奈が目を丸くして私を見た。
やっぱり、ユリアの記憶がないのね。
「お願い、話は私もしたい。でも、先に、サイファを解放して欲しいの」
「京奈、デゼルは蠱惑の魔女だ。下手に話せば洗脳されるやもしれぬ」
サイファに短剣を突きつけたままの蒼紫が言った。
蒼紫の思慮深さ、仲間の時には安心できて素敵なんだけど、敵に回られると厄介なのね。
ううん、蒼紫なら一時の感情でサイファを傷つけたりはしないだろうから、やっぱり、安心かな。
蒼紫は切れ長の目をした、静かな印象の美青年。
「でも、闇主たちは確かに僕達に危害を加えようとしないし、信じてあげてもいいんじゃ」
優しい胡桃色の髪の少年、翡翠が、助け舟を出してくれた。
翡翠は優しくて可愛いの。
「翡翠、人質を解放してもそうだとは限らない」
「それは、……そうかもしれないけど」
ごめんね、という目で翡翠が私を見た。
うん、助け舟だけでも、出してくれてありがとう。
蒼紫も翡翠も、私が気に入っていた光の使徒よ。
京奈がユリシーズの私と話し合うつもりだったのは、きっと、本当なのね。
ユリシーズの私がネプチューンの副官をやめて身を引くなら、蒼紫か翡翠を譲ってあげるとか、そういう方向かな?
「……いいわ、デゼル。落ち着ける場所で話しましょう。山賊達は、あなたの闇主達が片づけてくれるようだし。蒼紫、油断しないで。その人はまだ解放できない」
「わかった」
少し離れた滝のそばで二人になると、京奈が口を開いた。
「本当なの? 嘘をつくとためにならないわよ? あなたが雪乃だとしたら、どうして、彼らにわざわざマワされたのよ」
どうしよう、涙が出そう。
「わざとじゃ、ないよ」
「ユリシーズが隻眼ではないのは?」
「……私が、闇の十二使徒すべての闇落ちを阻止しようとしたの」
軽く目を見張った京奈が、私の頬を鋭く叩いた。
「あなたらしいわ、確かに雪乃よ!」
「京奈」
「ええ、あなたはいつだって八方美人だったものね! そうやって私の邪魔をしてくれたあげく、あなた自身の闇落ちイベントの阻止には失敗したわけ? 二十七名もの闇主を従えているそうね? マワされて気持ちよかった?」
「……」
「なんとか言いなさいよ!」
声を出そうとしたら、涙がこぼれて、また、京奈に叩かれた。
「被害者ぶらないで! 私の本命がネプチューン様なのは知っていたはずなのに、ひどいのは雪乃よ!」
「ごめん……なさい……」
「本当に悪いと思っているの? そのごめんなさいが嘘じゃないなら、ユリシーズを殺してきてよ!」
「そんな! 京奈、私、そんなことできない!」
「どんな話をしてるのかと思って聞いてみれば……」
私も京奈も目を見張った。
ネルが聞いていたみたいなの。
「意味のわからねぇ話をしていたが、往復ビンタのあげくにユリシーズを殺してきてとは、聖女様が聞いてあきれるな?」
「ネル様、違うの……違うのよ!」
「まぁ、女同士で好きにケンカすればいいが――俺はふけるぜ? デゼル、ユリシーズを殺せば、ネプチューンにサイファを殺されるかもしれないな」
「ネル様、待って!」
私と京奈はネルを追って蒼紫たちのところに戻ったけど、見失ってしまった。
「京奈、ネルのことなら私が――」
忘却をかければ、なんとかできると思うの。
ネルがおとなしく、かけられてくれるかはわからないけど。
「デゼル、あなたの魅了スキルと私の聖女の力、どちらが強いかしらね?」
怒りに震える声で、京奈が囁いた。
「蒼紫、翡翠、話し合いに応じてはもらえなかった。ネプチューンとユリシーズに停戦の意志がない以上、ネプチューンの副官であるデゼルも見逃すわけにはいかない。ここで討ちましょう」
「京奈!?」
「京奈、待って! それは可哀相だよ、デゼルは抵抗しないみたいだし、捕虜にしたんじゃ駄目なの?」
「翡翠、ネプチューンがしたことを忘れたのか。デゼルもまた、無辜の民を魔物に変えたネプチューンに与する者だ、少女の姿に惑わされるな」
翡翠が泣きそうな顔で、私とサイファを見た。
「京奈、聞いて! ネルのことなら私が――!」
「黙って、蠱惑の魔女であるあなたに、それ以上の口をきかせるわけにはいかない」
「待って下さい、デゼルは、皇帝の悪事に与しては――!」
訴えかけたサイファに、京奈がぜんまいを組み合わせたような、奇妙な形状の杖をつきつけた。
このイベントの重要アイテム、魅了を解除する聖杖イレイズ。
「安心していいのよ、サイファ、だったわね? 私達、無抵抗のデゼルを討ったりしない。蒼紫も翡翠も聞いて、デゼルの裁きは闇主に任せましょう。デゼルの魔力に心を奪われ、奴隷とされてきた者にこそ、彼女を裁く権利があると思うの」
翡翠が大きくうなずく横で、蒼紫も小さくうなずいた。
クロノスでサイファのところに戻った私が訴えると、京奈が目を丸くして私を見た。
やっぱり、ユリアの記憶がないのね。
「お願い、話は私もしたい。でも、先に、サイファを解放して欲しいの」
「京奈、デゼルは蠱惑の魔女だ。下手に話せば洗脳されるやもしれぬ」
サイファに短剣を突きつけたままの蒼紫が言った。
蒼紫の思慮深さ、仲間の時には安心できて素敵なんだけど、敵に回られると厄介なのね。
ううん、蒼紫なら一時の感情でサイファを傷つけたりはしないだろうから、やっぱり、安心かな。
蒼紫は切れ長の目をした、静かな印象の美青年。
「でも、闇主たちは確かに僕達に危害を加えようとしないし、信じてあげてもいいんじゃ」
優しい胡桃色の髪の少年、翡翠が、助け舟を出してくれた。
翡翠は優しくて可愛いの。
「翡翠、人質を解放してもそうだとは限らない」
「それは、……そうかもしれないけど」
ごめんね、という目で翡翠が私を見た。
うん、助け舟だけでも、出してくれてありがとう。
蒼紫も翡翠も、私が気に入っていた光の使徒よ。
京奈がユリシーズの私と話し合うつもりだったのは、きっと、本当なのね。
ユリシーズの私がネプチューンの副官をやめて身を引くなら、蒼紫か翡翠を譲ってあげるとか、そういう方向かな?
「……いいわ、デゼル。落ち着ける場所で話しましょう。山賊達は、あなたの闇主達が片づけてくれるようだし。蒼紫、油断しないで。その人はまだ解放できない」
「わかった」
少し離れた滝のそばで二人になると、京奈が口を開いた。
「本当なの? 嘘をつくとためにならないわよ? あなたが雪乃だとしたら、どうして、彼らにわざわざマワされたのよ」
どうしよう、涙が出そう。
「わざとじゃ、ないよ」
「ユリシーズが隻眼ではないのは?」
「……私が、闇の十二使徒すべての闇落ちを阻止しようとしたの」
軽く目を見張った京奈が、私の頬を鋭く叩いた。
「あなたらしいわ、確かに雪乃よ!」
「京奈」
「ええ、あなたはいつだって八方美人だったものね! そうやって私の邪魔をしてくれたあげく、あなた自身の闇落ちイベントの阻止には失敗したわけ? 二十七名もの闇主を従えているそうね? マワされて気持ちよかった?」
「……」
「なんとか言いなさいよ!」
声を出そうとしたら、涙がこぼれて、また、京奈に叩かれた。
「被害者ぶらないで! 私の本命がネプチューン様なのは知っていたはずなのに、ひどいのは雪乃よ!」
「ごめん……なさい……」
「本当に悪いと思っているの? そのごめんなさいが嘘じゃないなら、ユリシーズを殺してきてよ!」
「そんな! 京奈、私、そんなことできない!」
「どんな話をしてるのかと思って聞いてみれば……」
私も京奈も目を見張った。
ネルが聞いていたみたいなの。
「意味のわからねぇ話をしていたが、往復ビンタのあげくにユリシーズを殺してきてとは、聖女様が聞いてあきれるな?」
「ネル様、違うの……違うのよ!」
「まぁ、女同士で好きにケンカすればいいが――俺はふけるぜ? デゼル、ユリシーズを殺せば、ネプチューンにサイファを殺されるかもしれないな」
「ネル様、待って!」
私と京奈はネルを追って蒼紫たちのところに戻ったけど、見失ってしまった。
「京奈、ネルのことなら私が――」
忘却をかければ、なんとかできると思うの。
ネルがおとなしく、かけられてくれるかはわからないけど。
「デゼル、あなたの魅了スキルと私の聖女の力、どちらが強いかしらね?」
怒りに震える声で、京奈が囁いた。
「蒼紫、翡翠、話し合いに応じてはもらえなかった。ネプチューンとユリシーズに停戦の意志がない以上、ネプチューンの副官であるデゼルも見逃すわけにはいかない。ここで討ちましょう」
「京奈!?」
「京奈、待って! それは可哀相だよ、デゼルは抵抗しないみたいだし、捕虜にしたんじゃ駄目なの?」
「翡翠、ネプチューンがしたことを忘れたのか。デゼルもまた、無辜の民を魔物に変えたネプチューンに与する者だ、少女の姿に惑わされるな」
翡翠が泣きそうな顔で、私とサイファを見た。
「京奈、聞いて! ネルのことなら私が――!」
「黙って、蠱惑の魔女であるあなたに、それ以上の口をきかせるわけにはいかない」
「待って下さい、デゼルは、皇帝の悪事に与しては――!」
訴えかけたサイファに、京奈がぜんまいを組み合わせたような、奇妙な形状の杖をつきつけた。
このイベントの重要アイテム、魅了を解除する聖杖イレイズ。
「安心していいのよ、サイファ、だったわね? 私達、無抵抗のデゼルを討ったりしない。蒼紫も翡翠も聞いて、デゼルの裁きは闇主に任せましょう。デゼルの魔力に心を奪われ、奴隷とされてきた者にこそ、彼女を裁く権利があると思うの」
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