悪役令嬢と十三霊の神々

第三章 願いの枠が余ったので

第91話 ゲームをリタイアしますか？

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　闇巫女デゼルに運命の女神テュケーの承認が与えられました。
　闇巫女デゼルは十二神の承認を集めました。
　これより十三日後に最後の神の祝福を授かります。

　ゲームをリタイアしますか？
　≪はい／いいえ≫
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　なんで!?
　どうして、こんなこと聞かれるのかわからないけど、私、リタイアしないよ。
　絶対にクリアして、サイファを癒してもらうの。

　≪いいえ≫

「ねぇ、デゼル。どうして、私に星ロマをクリアして欲しかったの？」
「あ、えっとね。テュケー様の承認を頂きたかったの」
「ああ……それで。デゼル、いくつの承認を集めたの？」
「十二」

　答えたら、ぎょっとした顔で、京奈が私を見たの。

「デゼル、駄目よ！　今すぐ、リタイアして！　デゼルじゃ絶対、続けたら後悔する！」

　さすがに、不安になったけど。

「だって、私、サイファの目と腕を癒して頂きたいの。リタイアなんてできないよ」
「本末転倒よ！　エリス様の裏攻略ガイドで見たの、最後の神のｓ」

　そこでいきなり、京奈が凍りついた。
　文字通りの氷に覆われてしまったの。

「京奈!?」
「ちょ～っと、今のはルール違反だな」
「神様……！」

　いつの間にか、主神が降臨していて、京奈だけじゃなく、みんなの時が凍りついて見えた。

「大丈夫、京奈の時を凍りつかせただけだから。十三日後には、元通りにして解放してあげるよ」
「待っ……」

　主神はそれだけで、京奈と一緒に消えてしまった。
　京奈が突然、この場からいなくなったのに、誰も疑問に思った様子がなかった。
　誰に聞いても、「京奈は大切な用事があるんだ、十三日後に戻ってくるよ」って答えるの。

　主神は本当に、神様だったのね。
　当たり前なんだけど、改めて、なんでもありなんだって思った。

　裏攻略ガイドに、何が書いてあったんだろう。
　私には読めなかった。
　災禍エリス【Lv5】で、読むためには五人を災禍の犠牲にする必要があったの。
　本末転倒――
　最後の神の試練は、私が死んじゃうようなやつなのかな……。
　京奈は、私が死んじゃったら、サイファが悲しむから本末転倒よって言いたかったのかな……。
　でも、必要なら、私はそれでもいいよ。
　私、どうしても、サイファを救いたいの。
　叶うなら、もっと、たくさんの時をサイファと重ねていたかったけど。

　視界にふわっと、唐突に、愛らしい子供の姿が降ってきたのはその時よ。

「やぁ、デゼル」
「レーテー様」
「三つの願いを叶えてもらったら、もう、ゲームはおしまいだから、ぼく達の祝福は失われるんだ。今のうちに、サイファとエトランジュと、せっかくの祝福で遊んでおいたら？」

　レーテー様が優しい笑顔で勧めてくれて、私は少し、ほっとした。

　やっぱり、きっと、私が死んじゃうやつね。
　レーテー様は「ぼく達の祝福は失われる」っていう言い方をしたけど、つまり、私が死んじゃうから失われるんだ。

　そっか。

　じゃあ、私、残された十三日の間に、一生分の思い出をつくっておこう。

　そっか……。

　だから、リタイアしますかって聞かれたのね。
　さっきのエンディングを見ていて、私、

『よく頑張ったね、デゼル。ご褒美ほうびだよ』

　主神にそう、言われているような気がしたの。
　本当に、最高のご褒美だった。
　私、サイファに出会えてよかった。