勇者「その武器重くねぇの？」

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宿主「おや、勇者様。どうなさいました？」

勇者「少し寝付けなくてね。外の空気を吸ってくる」

宿主「今夜は冷え込みますから、あまり長居はしないほうがよいかと」

勇者「ん、ありがとう」



勇者「さて、と……」ｼｬｷﾝ

勇者「……ふっ……はあっ……！」

勇者（……修練なんて、いつぶりかね……」ﾌﾞﾝ

勇者（村にいるときは、毎日のようにしてたのになぁ）ﾌﾞﾝ　ﾌﾞﾝ

勇者（自分の弱さが身に染みてから、めっきりしなくなっちまった）ﾌﾞﾝ　ﾌﾞﾝ　ﾌﾞﾝ

勇者「……スライムにすら勝てない勇者ってなぁ」

勇者「はぁ、ほんとなさけねぇよなー」

ﾊﾟｷ

勇者「……誰だ！」


魔法使い「あ……ご、ごめん」

勇者「なんだ、魔法使いか……どうしたんだ、こんな時間に」

魔法使い「なんか、胸騒ぎがして……というか、それこっちの台詞」

勇者「なんでだよ」

魔法使い「勇者こそ、何してんのさ。こんな夜中に」

勇者「別になんでも……そうだ、魔法使い」

魔法使い「ん？なに」

勇者「その斧、貸してくれないか」

魔法使い「ん？いいよ、はい」

ｽﾞﾝｯ

勇者「く、おっ……ふっ、くっ」

ｸﾞｸﾞｸﾞ

勇者「……くそ、やっぱ、無理、か……」

魔法使い「いきなり無理しちゃダメだよ……」

勇者「お前、トンでもねぇもん振り回してんだな」

魔法使い「ボクにとってはもう体の一部みたいなもんだしね」

勇者「なるほどな……」

魔法使い「……」

勇者「……」


魔法使い「で、でもさ……っ！」

魔法使い「今回のだって、勇者の力がなきゃこの結果にはなって無かったよね？」

勇者「まぁな」

魔法使い「だから、さ……その、ね」

魔法使い「無理はしないで欲しいな……なんて」

勇者「……」

勇者（……なんか、無駄な心配させちまってるみたいだな）

勇者（心配なんてしてないぞー！って顔して人一倍心配性だからなぁ、こいつ）



勇者「……綺麗だな」

魔法使い「……え？」

勇者「……月」

魔法使い「あ……ほんとだ」

勇者（魔法使いの横顔……いつもとは違う弱弱しい表情だ）

勇者「魔法使い」

魔法使い「え？」

ぎゅっ

魔法使い「え、えぇっ！？」

勇者「心配すんな、お前を残して死んだりは絶対しねーよ」

勇者「殺されても死なねぇ、絶対に」

魔法使い「ゆ、ゆーしゃ……」


ーーーーーーーーーーーーーーー


氷幼女「人が寝たフリをしておれば……」

氷幼女「これだから人間と言うのは、蒸し暑いのじゃ。見ておれん」

僧侶「……じれったい」

氷幼女「うぉわ！？なんじゃい、おぬしも起きとったのか！」

僧侶「……静かに」

氷幼女「す、すまん……」


魔法使い「ゆ、ゆ、ゆうしゃっ！」

勇者「……あ」

ﾊﾞｯ

勇者「す、すまん……つい」

魔法使い「あ、謝られても……なに言っていいか、分かんないじゃんか……」

勇者「……」

魔法使い「……」

勇者「……戻るか」

魔法使い「……うん」


ーーーーーーーーーーーーー


氷幼女「かーっ、見ておられんのう……臆病者め」

僧侶「……」ｽﾀｽﾀ

氷幼女「む、僧侶？どこへ行くのだ？」

僧侶「……トイレ」ﾊﾞﾀﾝ

氷幼女（なんじゃあ、あいつ……）


魔法使い「……どうする？」

勇者「いやー……流石に別々に寝る、よな？」

魔法使い「だからボクに聞かれても……ボ、ボクは別に、いいけど」

勇者「……なら、うん……」

魔法使い「……う、うん」

氷幼女（……僧侶よ、そういうことか……）

氷幼女（そういうことなら、わらわもクールに去るぞよ）



僧侶「……」ｺｸﾘ　ｺｸﾘ

氷女王「……いや、なにしとるんじゃ」

僧侶「……静かに」

氷女王（覗きたかっただけか……気を利かせて損し……）

氷女王「むむむ、これは……」

僧侶「……ちょっと」

氷女王「なるほど、ほうほう……」

僧侶「……詰めて」

氷女王「あ、こら押すでない……っ」


ガタンッ

勇者「……！」

魔法使い「な、なにっ！？」

僧侶「……」

氷女王「……」

勇者「何やってんだ？お前ら」

氷女王「いや、これはその……じゃな」

僧侶「……ぐぅ」

氷女王（な、なんという猿芝居を）

魔法使い（み、見られて、た……？）

魔法使い「あう、あう、あ……」

氷女王「や、やめぃ！これ以上熱くするでない！溶ける！本気で溶ける！」