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小田の出会い
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「なぁ、鎌田。ちょっと聞いて欲しいんだがよ」
「どうしたのさ、急に」
小田から私の元へ、連絡が来ました。
「お前が言ってた通販サイト……俺も、使ってみたんだよ」
「はあ!?」
ドッキリだと思いました。
でも、聞けば聞くほど、そうではないようで。
「まあ聞いてくれよ。俺な、出会いが欲しいって思ってんだ。今もそうなんだが……通販サイトを使うより前は、特にな」
「えぇ、ああ、うん……?」
「四日前だったか。何が良いアプリでも無いかと思って、マッチングアプリとか婚活サイトとか、そういうとこを片っ端から漁ってたんだよ。やっぱそういうとこって、サクラも多いイメージなんだよな。だから、ちゃんと安全なサイトを調べたかったんだ」
「それで、いろんなサイトを漁ってる内に辿り着いたってこと?あの、『カメレオン』に」
私からの話を聞いていた筈なのに、Tさんの事件もあった筈なのに。
不用心なのか、サイト自体にそういう作用があるのか……私には分かりませんが。
「そういうこった。で、俺は通販サイトの検索ボックスに勿論、『出会い』って入力しちまったんだよ。何か衝動みたいなのが胸の中で昂っちまってよ。今では、何でわざわざそんなサイトに、『出会い』なんて漠然とした単語を入れちまったのかも分かんねえ」
「何か、影響は?もう出たの?」
「ああ、勿論出たよ。一昨日、部屋に女が訪ねてきたんだ。『雨宿りさせてください』って」
「それ……家に入れたの?」
「いいや。勿論断った。物騒な世の中だからな。それに、そもそもあのサイトを使った後……お前が言ってたことと、Tが音信不通になったってことを思い出したからよ。俺は居留守を使ったんだよ。そしたら」
「そしたら?」
「あの女、家の扉を叩き始めたんだよ。ドンドン、ドンドンって。最初の方はそんなでもなかったんだがよ。だんだん、音がうるさくなってな。扉が壊れるんじゃあねぇかと思う程になりやがった」
「おお……それはもう……完全に望まぬ出会いって感じだね」
「そんなん、バケモンだろうがリアル人間だろうが怖いだろ。俺は警察に電話しようと思ったんだ。でも、そこからが問題だった」
「問題?」
「警察に電話をかけた筈が、俺の電話は知らねぇ番号に繋がってた。そしたら、向こうから聞こえんだよ。ドンドンドンドンって、俺ん家のドアを叩く音が」
「ドアの前の女……?まあオバケなら、そういうこともあるかな……?」
「正直なところ、俺は何が起こったか分からなかった。俺、もう我慢できなくなっちまって。包丁とフライパンを持って、布団に籠ることにしたんだ」
「古典的だなあ」
「ンなこと言ってる場合じゃあねぇんだって!……ま、あの日はアレで済んだから、よかったんだがよ。最近、妙に視線を感じるんだよ。ストーカーにでもつけられてるっつーか」
「犯人は、その女かな?オバケだったら取り寄せちゃったのが憑いてるんだろうし、人間だったらヤバい女と出会う機会を取り寄せちゃったのかもね」
「……あぁ、畜生。参ったな」
「じゃあ、一緒に住もうか?僕もいたら、その女も近づけないんじゃない?」
「いいって。いくら女みたいな見てくれだからって、そう彼女とは間違えちゃくれねぇだろ」
「え?」
「うん?」
「何言ってんの、小田……」
普通に、「友人が常に一緒にいる相手にストーカー行為をするのはキツいだろう」という意味で言ったのですが……間違えられてしまったみたいです。
「と、とにかく、だ。俺は大丈夫だけど……もし俺が消えるようなことがあったら、それのせいだと思ってくれ」
小田はそう言い残し、電話を切りました。
スピーカーの向こうで、微かに「ドンドン」という音が聞こえたような気がしたのですが……気のせいであることを祈るばかりです。
翌日。
その後、小田から「女を倒した」との連絡がありました。
ここまで来たらヤケクソだとか言って、扉を開けた瞬間に女を部屋の中へ引きずり込み、ベッドへ押し倒したそうな。
そうしたら、女は逃げ出したと……小田は、そう言っていました。
それからのことは、詳しく聞いていませんが……少なくとも、そのような被害は無くなったそうです。
小田は何とか無事だったとはいえ、いずれ通販サイトの被害は、もっと拡大していくでしょう。
明日は我が身です。
私は念のため、見覚えのないサイトへアクセスさせられてなどいないかをチェックしてから、パソコンをシャットダウンするのでした。
「どうしたのさ、急に」
小田から私の元へ、連絡が来ました。
「お前が言ってた通販サイト……俺も、使ってみたんだよ」
「はあ!?」
ドッキリだと思いました。
でも、聞けば聞くほど、そうではないようで。
「まあ聞いてくれよ。俺な、出会いが欲しいって思ってんだ。今もそうなんだが……通販サイトを使うより前は、特にな」
「えぇ、ああ、うん……?」
「四日前だったか。何が良いアプリでも無いかと思って、マッチングアプリとか婚活サイトとか、そういうとこを片っ端から漁ってたんだよ。やっぱそういうとこって、サクラも多いイメージなんだよな。だから、ちゃんと安全なサイトを調べたかったんだ」
「それで、いろんなサイトを漁ってる内に辿り着いたってこと?あの、『カメレオン』に」
私からの話を聞いていた筈なのに、Tさんの事件もあった筈なのに。
不用心なのか、サイト自体にそういう作用があるのか……私には分かりませんが。
「そういうこった。で、俺は通販サイトの検索ボックスに勿論、『出会い』って入力しちまったんだよ。何か衝動みたいなのが胸の中で昂っちまってよ。今では、何でわざわざそんなサイトに、『出会い』なんて漠然とした単語を入れちまったのかも分かんねえ」
「何か、影響は?もう出たの?」
「ああ、勿論出たよ。一昨日、部屋に女が訪ねてきたんだ。『雨宿りさせてください』って」
「それ……家に入れたの?」
「いいや。勿論断った。物騒な世の中だからな。それに、そもそもあのサイトを使った後……お前が言ってたことと、Tが音信不通になったってことを思い出したからよ。俺は居留守を使ったんだよ。そしたら」
「そしたら?」
「あの女、家の扉を叩き始めたんだよ。ドンドン、ドンドンって。最初の方はそんなでもなかったんだがよ。だんだん、音がうるさくなってな。扉が壊れるんじゃあねぇかと思う程になりやがった」
「おお……それはもう……完全に望まぬ出会いって感じだね」
「そんなん、バケモンだろうがリアル人間だろうが怖いだろ。俺は警察に電話しようと思ったんだ。でも、そこからが問題だった」
「問題?」
「警察に電話をかけた筈が、俺の電話は知らねぇ番号に繋がってた。そしたら、向こうから聞こえんだよ。ドンドンドンドンって、俺ん家のドアを叩く音が」
「ドアの前の女……?まあオバケなら、そういうこともあるかな……?」
「正直なところ、俺は何が起こったか分からなかった。俺、もう我慢できなくなっちまって。包丁とフライパンを持って、布団に籠ることにしたんだ」
「古典的だなあ」
「ンなこと言ってる場合じゃあねぇんだって!……ま、あの日はアレで済んだから、よかったんだがよ。最近、妙に視線を感じるんだよ。ストーカーにでもつけられてるっつーか」
「犯人は、その女かな?オバケだったら取り寄せちゃったのが憑いてるんだろうし、人間だったらヤバい女と出会う機会を取り寄せちゃったのかもね」
「……あぁ、畜生。参ったな」
「じゃあ、一緒に住もうか?僕もいたら、その女も近づけないんじゃない?」
「いいって。いくら女みたいな見てくれだからって、そう彼女とは間違えちゃくれねぇだろ」
「え?」
「うん?」
「何言ってんの、小田……」
普通に、「友人が常に一緒にいる相手にストーカー行為をするのはキツいだろう」という意味で言ったのですが……間違えられてしまったみたいです。
「と、とにかく、だ。俺は大丈夫だけど……もし俺が消えるようなことがあったら、それのせいだと思ってくれ」
小田はそう言い残し、電話を切りました。
スピーカーの向こうで、微かに「ドンドン」という音が聞こえたような気がしたのですが……気のせいであることを祈るばかりです。
翌日。
その後、小田から「女を倒した」との連絡がありました。
ここまで来たらヤケクソだとか言って、扉を開けた瞬間に女を部屋の中へ引きずり込み、ベッドへ押し倒したそうな。
そうしたら、女は逃げ出したと……小田は、そう言っていました。
それからのことは、詳しく聞いていませんが……少なくとも、そのような被害は無くなったそうです。
小田は何とか無事だったとはいえ、いずれ通販サイトの被害は、もっと拡大していくでしょう。
明日は我が身です。
私は念のため、見覚えのないサイトへアクセスさせられてなどいないかをチェックしてから、パソコンをシャットダウンするのでした。
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