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ep.02

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「改めてよろしくね、治くん。賢いあなたなら理解しているかもしれないけれど、今の世の中について、男の子のあなたがどういう存在かを説明するわね」

カレンさんはそういってこの世界の常識、俺からすればこの世界を選んだ理由ともいえる話をしはじめた。

この世界の設定はこうだ。


今から数えて約100年前、世界中の男性だけが感染する感染病が流行した。この感染症の発症率は約50%、空気感染、飛沫感染、唾液感染とありとあらゆる経路で感染する。さらに発症すれば致死率は100%、潜伏期間が約1ヵ月ということが研究結果としてわかっている。

1ヵ月の潜伏期間の間に感染は拡大し、1例目の発症者が出たころには世界の約3割の男性が感染していたと推定されている。1例目の発症から数か月の後にこの感染症は全世界の男性に感染した。結果、男性の人口は激減した。発症により約50%の男性はこの世を去り、残った半分の男性の中から再発するケースも確認され、男性の人口は1年間で3割にまで減少した。

さらにここで大きな問題が生じた。残った男性3割の生殖機能が著しく低下していたのだ。感染症への抗体を作り出すために女性ホルモンを生み出す必要があり、その抗体を作り出した代償として男性としての性欲や機能が低下してしまったのだ。これにより世界は人口減少の一途をたどり始める。

時は経ち現在、人口は減少傾向にあり、男女比は2:8にまできている。日本では年間約1000人の新生児が誕生するが、男の子は平均20人である。したがって、この世界では男性は社会的に優遇される一方で、精通したその日から週に一度の採液の義務を負っている。
したがって、この世の男性は女性に対して興味がないまたは女性嫌いが多く、かつ横柄な態度をとるものが多いのである。



「という風に、この世の女性は男性に飢えているから男性である治くんは外に出れば自分の身体の安全に注意しなければならないの。私はボディガードの役割も果たすから外出中は特に私から離れたりしないようにね」

俺の身の安全は最悪自分でも守れるようにステータスを上げていかなければならないが、こんな美人に守ってもらえるなんて最高だなあと思う。

「はい。カレンさんこれからよろしくお願いします」

そんな話の後、俺とカレンさんはリビングでテレビを観る。

この世界のテレビにも男性は少しだけ登場するが、どの男性もあまりやる気はない。男性が出ているというだけで視聴率が稼げるので、好きにやらせているのだろう。

ほとんどの番組やドラマでは男装をした女性の演者さんと可愛い恰好をした女優さんの2人の絡みがほとんどで、俺の基準ではレズ物を鑑賞している気分少し落ち着かない。

テレビ番組でピアニストが出演しており、何か習い事をしたいと考えていたということを思い出した。

「カレンさん、家庭教師では何を教えて頂けるのですか?うぬぼれかもしれませんが、小学校レベルの教養なら備わっていますし、中高以上のレベルとなればそんなに焦らなくてもいいと思うのですが」

「私から見ても、治くんは小学校の勉強程度簡単に解いてしまうでしょうね。家庭教師といっても家政婦兼ボディガードなので、治くんが教えてほしいことがあれば何でも言ってください。私にできないことであればお母様にお話しして習い事などに通わせてもらいましょう」

俺がやりたいこと、まずはピアノだ。前世では音楽的なセンスが皆無だったため、演奏する人や音楽を産み出す人に憧れる気持ちがあったのだ。

「僕はピアノをやってみたいです」

「ピアノですか。私も子供のころは少し習ったのですが、教えられるほどではありません。お母様に連絡しておきますね」

カレンさんが母さんに連絡しれくれるそうなので、近いうちにピアノには通えるだろう。
しかしどうしたものか。カレンさんとの会話が続かないのだ。母さんに連絡をするといったカレンさんはスマホでメールを打っているようだし、この後の会話のビジョンが全く描けない。
基本的にカレンさんから少し距離感を感じるのだ。
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