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Case5 美人故に結婚が難しくなった29歳
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しおりを挟む『初めて会った時の妻の第一印象は、ダサイ』
「辛辣!」
『向こうは俺が出てきて相当に驚いたらしい。
まぁイケメン出てくるとは思わないよな、ネットで知り合って』
確かに自分でも勝手な印象として、ネットでゲームをしている人だとあまり良い印象では浮かばないかも知れない。
『最初はギクシャクしたけど、そもそも何年もネットで話してたから慣れるのも早くて。
で、思ったより彼女は表情豊かで、何より胸がでかかった』
「そこか!」
『いつもナイス突っ込みありがとう。
いや、胸大事よ?最大の癒やしだから。
俺胸のデカイ人、大好き』
「次に進んで」
『進みまーす。
で、何度かデートしてて、あ、居心地良いなって。
まぁオタクな一面なんて向こうは知ってるし、かっこつけなくて言い訳よ。
これはかなり楽だった』
「それは、わかる気がする」
『で、今まで付き合った中で一番気楽でいられる人だな、そういう相手ならずっと一緒に居たいと思って結婚したわけ』
「まぁそこからタクヤさんに結婚の覚悟まで決めさせる何かがあったと」
『あ、でき婚じゃないから。
普通よ?ふつー』
「なんだそういう事かと思ったのに」
『まぁ、結婚してもいいな、と思わせた初めての女性だったということですよ』
何だか最後は照れくさそうに話すタクヤさんに、ごちそうさまです、と私は笑いながら返した。
きっと今までの言葉も彼なりの恥ずかしさ故あんな言葉を言っているのだろう。
彼が奥さんを心から愛していることが通話だけなのにしっかりと伝わった。
『あー時間だねぇ』
「うん、また予約入れるわ」
『よろしくー。
新しい情報待ってる』
気軽な彼の声で通話は終了した。
ヘッドフォンを外し、湯飲みを持ち冷めたお茶をすする。
もてていた彼が照れて話すほど夢中にさせた女性は、きっと中身も素敵な人なのだろう。
それに比べると、私はいわゆる美人というのがウリだったのに、それが年齢というもので、どんどん価値が下がっていった。
そうしたら、自分の中身のウリはこれ!というものが無い事に気がついた。
きっと私には、タクヤさんの奥さんのように、男性の気持ちを変えるほどの美しい心も持っていないわけで。
そう思うと、なんだか惨めな気分になった。
そう、私には、美人、以外に自分にアピールポイントなんて無いのだ。
同じようにネット婚活中の友人から戦果を尋ねる電話があり、素直に状況を伝えた。
そして友人も何と、あのオタクな松本さんが気になったらしい。
名前をフルネームで教えて、私から連絡する、なんて言うから、教えてしまった。
タクヤさんも友人も同じ答え。
私はやはり男性を見る目が無いのだろうか。
婚活をし始めて、私のプライドや自信がどんどん落ちていく。
それを自覚していくのは、悲しくて、切なくて、苦行のようだ。
こんな惨めな自分を友人、ましてや今までの知り合いになんて知られたくはない。
私は、「宿り木カフェ」に予約を入れた。
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