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第三章 桜舞う逢瀬
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しおりを挟む「・・・・・・行くぞ」
ため息をついた藤原が、顔をくい、と促すように動かした。
「いや、用事あったんでしょ?私一人で」
「行くぞ」
不機嫌な声でそう言われ、私は困惑して葛木先生を見れば、
「ちゃんと消毒してきて下さいね」
と笑顔で先生はそう言うと手を放した。
私は頷き、入り口で背中を向けている藤原の方に行くと、こちらも振り向かず歩き出してしまった。
私はティッシュでぐるぐる巻きにした指を胸元に置き、大きな背中を見ながら後ろを着いていく。
「ねぇ」
「・・・・・・」
「ねぇってば」
珍しく人がおらず、足音が響く階段を降りながら、前を歩く藤原に声をかけるのにまた無視された。
私は久しぶりに会えて凄く嬉しかったのに、藤原はむしろ面倒事を押しつけられて不機嫌きわまりない態度だなんて。
正月は電話して、匂い袋までもらって、もしかしたら良い年になるかと思ったのに良かったのは最初だけで、後は怖い事に巻き込まれたりまともに会う事も話すことも出来ず、ひたすら心配したり我慢したりすることばかりだった。
だからこそ、新学期からまた仕切り直し出来るよう桜の木にお願いまでしたはずなのに、やっと会えた好きは人は不機嫌であげく私を無視する。
私は段々腹が立ってきて、その背中に向けて思い切り舌を出した。
保健室に着き、藤原がノックした後ドアを開ける。
机の上には『不在ですので用がある場合は職員室に』と紙が置いてあり、それに藤原は視線を向けた後、すたすたと部屋の奥に行くとガラス戸の棚から慣れたように薬品とかを取り出し始めた。
きょろきょろと中を見回せば、ベッドにも誰もおらずここには私達だけ。
私が入り口近くで立っていると、無言で椅子を指さされた。
なんで何も言わないでさっきからそういうことばかりするのかな。
段々腹が立つより悲しい気分になっていく。
そんなに嫌ならしなきゃいいのに。
私が椅子に座ると、藤原は手を洗った後保険医の先生が座る椅子に座り、私の手を取って指に巻き付けられたティッシュをゆっくりと外し始めた。
「いたっ!」
「・・・・・・」
血が固まって切ったところがティッシュに張り付いたのか、傷口がまた裂けてしまい血が溢れ出してきた。
藤原は私の声を聞いても、顔を上げずに脱脂綿に消毒液をつけている。
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