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第四章 いにしえの都
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しおりを挟むばくん、と心臓が掴まれて、一瞬息が止まった。
私はすぐ近くの柱に逃げるように隠れ、酷い音を立てる心臓の上に手を置き、必死に押さえようとするけど耳に聞こえるほど音が響いて、呼吸が浅くなる。
京都の、綺麗な、女性。
あぁ、そうか、あの人が。
あはは、あんな凄い女性に勝てるわけがない。
そもそも勝とうだなんて思ってなかったけれど、あんな綺麗な人からすれば私なんてミジンコだ。
・・・・・・勝とうだなんて思ってなかった?
ううん違う、別れちゃえばいいのに、って思った事だってある。
巫女が見つからなければ良いのにって未だに心の中では思ってる。
そうしたら、もしかしたら、もしかしたら私にも、って汚いことを考えた事が無い訳じゃ無い。
私は自分の最低さを認識しながら、怖いと思いつつ、柱の陰から玄関を覗いた。
それは女性をタクシーの後部座席に乗せ、藤原もその隣りに乗り込んだ瞬間だった。
そっか、もうこんな遅い時間なのに二人ででかけちゃうんだ。
もしかしたら私に会いに来てくれたのかも、なんて思った私はなんて馬鹿なんだろう。
頭を撫でる相手は私だけ、なんて思ってたなんて、本当に馬鹿だ。
不思議と涙は出ない。
私はふらふらとロビーの端にあるソファーに行きそこに座ると、ただぼんやりとしていた。
「もう消灯時間ですよ、部屋に戻って下さい」
その声にゆっくりと顔を上げると、葛木先生が立っていた。
「・・・・・・何かありましたか?」
私の顔を見て急に真面目な顔になった先生に、私は首をゆっくりと横に振った。
「もしかして体調が悪くなりましたか?」
私は何故か声を出す気力がでなくて、再度首を横に振った。
「なら部屋に戻りましょう、明日みんなと色々回るのでしょう?
ここにいたら風邪を引いて、一日宿で過ごすことになりますよ」
私は顔を上げ、優しくそういう先生を見ると、こくりと頷いた。
部屋まで先生が付き添い、ドアが開き、実咲が出てきた。
「どうも東雲さんはまだ体調がかんばしくないようです。
明日のグループ行動では気をつけていてもらえますか?」
「はい。ほら、部屋はいろ?」
私は先生を見上げると、小さくお辞儀をして部屋に入った。
「どうしたの、顔色良くないわよ?薬とかもらう?」
部屋の中にいた塔子が心配そうに声をかけてくる。
「・・・・・・ちょっとまだだるいだけ。
ごめん、先に寝るね」
私は心配する二人の顔をまともに見ることも出来ず、布団に入ると頭まで毛布を掛けた。
こんなに辛いのに涙が出ない。
ただぼんやりとするだけ。
何も考えたくないだけ。
そんな事より明日は目一杯みんなと楽しむんだ。
首に掛かったままだった匂い袋を取り、毛布から手だけ出して外に置くと、私は目を瞑った。
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