月曜日の巫女【弐】

桜居かのん

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第五章 逢いたい人

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「金閣寺に、仁和寺に、お、北野天満宮も入ってるな」


「それ何?」


隣りに座っている藤原が何か冊子のようなものを持ってて私は覗き込むと、表紙を見せた。


「修学旅行の、しおり?」


「あの人が無理矢理持たせたんだが、わざわざ作らせたんだろ。

完全に面白がってるな」


その冊子の前にはそんな題名がついていて、セーラー服と学ランの学生イラストまであった。

うちの学校はブレザーだけど。


「で、なんで北野天満宮に反応したの?」


藤原がにやりと私を見た。


「学問の神様といわれる菅原道真公をまつってるんだよ。

まさに修学旅行にふさわしいな、必死に拝んでおけよ?」


私は楽しそうにそういう藤原を睨んだけど、藤原は笑ったままだった。


最初の目的地である金閣寺の駐車場に着き、受付まで砂利道を歩く。

きらびやかな金閣寺が見える場所はもの凄い人で、ただ歩くだけでも息が上がりそうになる。

藤原は私の鞄を持ってくれ、歩くスピードもかなり抑えてくれたけど、思ったより疲れてきた。

それをじろりと藤原に見られる度、悟られまいと必死に笑顔を浮かべた。


「あの、写真撮って貰えませんか?」


女の人達4人くらいのグループが藤原に声をかけてきた。

金閣寺に着いてから藤原が女性に声をかけられるのはもう3回目で、私はその度に少しは休憩出来るのがラッキーだと思い、離れた場所にあったベンチに座っていた。


藤原が写真を撮ってあげると、その女性達が藤原にお礼を言った。


「あの、よろしければこの後ランチでもご一緒しませんか?あ、妹さんも」


私は少し離れたとこにいたが、しっかりとその言葉は聞こえた。


「いえ、彼女とデート中なので失礼します」


私はその言葉に固まった。

藤原の背中しか見えてなかったけど、『彼女』とか『デート』とかの単語が聞こえたような気がする。

はは、まさか。

うん、やっぱり聞こえた気がするけどその場しのぎの嘘だ、深く考えたら負けだ。


「ほら行くぞ」


藤原はこっちに戻ってきてそう言うと、手を差し出した。

私は藤原の顔とその手を交互に見る。


「既に疲れてるだろうが。ばれてるんだよ。

それとももう戻るか?」


「絶対いや!」


私は慌てて藤原の手を握った。

それを見て藤原は吹き出すと、ゆっくりと手を繋いで歩き出した。

この手はカモフラージュなのかな?気遣いなのかな?

私は頭と心が混乱しながら、金閣寺を後にした。


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