月曜日の巫女【弐】

桜居かのん

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第七章 もう一度あの場所で

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専用の大きな駐車場に誘導員の人に従い車を止め、車から降りると既に楽しげな音楽が流れていてワクワクする。

チケットを藤原が買ってくれ、行列が進んでやっと園内に入れば、音楽隊やメインキャラクター達が来場者を出迎え、写真を撮る人たちや、目的の乗り物に急ごうと早足で歩く家族連れやカップルなどでごったがえしていた。


「覚悟はしてたがまだ午前中なのに酷い暑さだな」


入場ゲートから中に入り二人で並んで歩いていると、うんざりとした表情で藤原は言った。

藤原は去年のように髪を下ろして眼鏡をかけているが、長袖のシャツの中にTシャツを着ていて、下は濃い紺色の細身のジーンズ姿。

私は目一杯遊ぼうと一瞬パンツにしようと思ったが、やはり初デートなので薄手のパーカーに下はロングのチュールスカート、斜めがけのバッグをしてきて、唇にはピンクのグロスとマニキュアもして自分なりに頑張ってみた。

だけど、既に藤原をちらちら見ている女の人達がいる。

今すぐ手を繋いで、私の彼氏なんです!ってアピールしたいけど、こんな場所、考えて見たら学校の誰かと会う可能性だってある訳で。

思わずその場に立ち止まってしまった。


「どうした?」


「もしかしたらここに学校の子、いるかもしれないよね」


「そうだなぁ、卒業生含めると俺は相当に厳しくなるけどな」


「ごめん」


思わず言うと、頭を撫でられた。


「俺は学校辞めてももう一つの仕事があるし、最悪どちらもやらなくても当分何とかなるだけの蓄えはあるから安心しろ。

もしお前に何かある場合は、どんな手段を取ってでも学校にいられるようにするからそこも気にしなくて良い。

あぁお前も十分養えるし、いざとなれば駆け落ちでもするか?」


そう言って笑った藤原を、私は喜んで良いのか心配して良いのかわからなくなった。


「もうどこから突っ込んで良いかわかんない」


「とりあえずお前は気にしなくても良いってことだ。

ほら、どこから行きたい?」


「まずはファストパス取って、近くのアトラクション乗って時間見て動きたい」


「お前、乗り倒す気満々だな」


藤原は苦笑いしながら、私の手を取ると歩き出した。

見られたらどうしよう、という思いと、デートしている、という実感が湧いて、結局私はデートを満喫する事に決めた。


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