月曜日の巫女【弐】

桜居かのん

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第七章 もう一度あの場所で

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「一つ、聞いても良いですか?」


先生の静かな声に、何を聞かれるのかと箸を置いて思わず身をただす。


「東雲さんは、光明のどこが好きなのですか?」


思わずぽかん、と先生を見た後、顔が熱くなる。

まさかそんな事を聞かれるなんて思ってなかった。


「すみません、これは私の単なる興味なんです。

光明のどこを好きになってくれたのかな、と」


穏やかに微笑みながらそう言う先生を見て、部下としてではなく純粋に聞いているのだと伝わってきた。


「どこ、と言われると、なんと言えばいいのか・・・・・・」


俯きがちに答え、少し悩んで口ごもっても、先生は待っている。


「我が儘だし、子供だし、訳分からない行動して、手が掛かるなぁって思うんです。

でも、意地っ張りで、一人で頑張ってて、寂しそうにしてて、なんというか、放っておけなくて。

あれ?好きなとこかな?これ」


口に出しながらわからなくなって首をかしげると、先生が口に手を当てて軽く吹き出した。


「他に何かありますか?」


楽しそうに私を見ながら先を促され、私は困りながら考える。


「しいていえば、笑ってるとこ、でしょうか」


「笑ってるとこ?」


「なんというか、藤原が凄く無邪気にというか、心から笑ってる、その笑顔が好きだなぁ、と」


何だかやっぱり恥ずかしくて、ぼそぼそそう言うと、東雲さん、と呼ばれ顔を上げる。



「光明は貴女に見つけてもらって本当に良かったです」



とても優しい笑みを向けられ、色々な事が恥ずかしくてたまらない。

考えて見たら、藤原との交際をこうやって話せているのは加茂君以来で、それも安心して話せる相手だと思うとほっとするし、誰かに話したいのを我慢していたから凄く嬉しい。


「なんか、藤原が違う人のように思えるんです」


「どういうことですか?」


「今まで大きな子供だったなずのに、凄く過保護になって、何故かヤキモチとか焼いて、恥ずかしい言葉も言ったりするんで本当にこれは藤原なのかな、と」


葛木先生はきょとんとしたあと、口に手を当て身体を曲げながら肩を震わせている。

さすがに笑いたくなる気持ちは私でもわかった。


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