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第十章 巫女という存在
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しおりを挟む「今まで許してくれていたからと言って、今回のことを彼女の優しさに期待して受け身でいる、なんてことは最悪の結果しか招かないんじゃ無いのか?」
「わかっている!そんな事は!!」
吐き捨てるように怒鳴り立ち上がった光明を、克明はまた自分が配慮に欠けた発言をしてしまったことを申し訳なく思いながら見上げる。
「そうだよな、わかっているから焦るんだよな、すまない」
その克明の言葉に、光明はドスンとソファーに座ると顔を正面から背け、悪い、と呟く。
「親として何もしなかった私が、今の妻とのことをお前に話すのはおかしいことだとはわかっているんだが、もう少しだけ我慢して聞いて欲しい」
克明はそう言いながら目の前の光明を見たが、こちらを見てはいないのをわかりつつ話しを続ける。
「長を退き、私は巫女にしてしまった彼女に意を決して気持ちを伝えた。
だが、見事に断られたよ」
光明は驚いて顔を上げる。
光明の記憶では早々に二人は一緒に住んでいた気がしていたからだ。
「つい一緒にいてくれるから、彼女は当然に自分と同じような感情を抱いてくれていると思い込んでいた。
だが考えてみれば今まで彼女が私の側にいたのは、この都市を守るため。
離婚も出来ないくせに、今度は長と巫女という関係が切れないように告白するんだ、身勝手な男だと思われるのも当然だった。
私は何一つ、彼女に一人の男として彼女に愛してもらう努力をしてなかったことに気がついたんだよ、その時になって」
光明の視線に気がつき、克明は軽く笑った。
「だから必死になって彼女に愛してもらえる男になろうと努力した。
長ではなくなったとしても、経済力もそれなりの社会的立場を持ち、君を幸せにするから少しだけ時間が欲しいと。
幸せにするからなんて馬鹿みたいな言葉だ、彼女じゃ無ければ幸せを感じないのは自分自身で、離婚すらも出来ないのによくそんな言葉を必死に言ったと思うよ。
彼女が待ってくれるかわからない、少しでも早く彼女に認めてもらうには時間が無いと焦るばかりで、そんな中無理がたたり、私は倒れた。
そこに彼女が病院まで駆けつけてくれて、そこでも私は再度思いを伝えた。
情けない話だがわざわざ彼女が来てくれたのだ、少しでも望みがあるのなら弱っているところを見せて同情を買え無いだろうかとすら思ったんだ。
そして彼女は困ったような顔でうなずいた、根負けしたってね」
光明は自分の父親がこんなにもみっともなく巫女を求めていた事を初めて知らされた。
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