月曜日の巫女【弐】

桜居かのん

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第十一章 儀式

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「君は、光明君とどこで、どんな立場で出会った?」


その言葉は私を何故か驚かせた。

藤原との繋がり、そして私が一番らしくいられる立場。


「私は、ただの高校生として行けば良いんですね」


私がはっきりとそう言うと、土御門さんは目を細めた。


「儀式を行う際、我々はあの着物を正装として着る。

そして君の正装は制服だ。

生徒として、そして、まぁここは言いたくなかったけれど恋人として、困った彼氏を思いきり叱っておいで」


小さな苦笑いを浮かべそんなことを言った土御門さんに思わずぽかんとして、急に顔が熱くなる。

土御門さんは、生まれ変わりでも、巫女でも無く、ただの高校生の東雲ゆいとして行くように言ってくれた。

ずっと悩んでいた。本当の私は何も持っていないのだと。

だけど私はただの高校生であることが普通。

そのまま、藤原の元へぶつかりにいけば良いんだ。

ずっとあった心の中の雲が晴れて急に目の前が開けた気がした。


「はい!」


私の力強い返事に土御門さんは笑みを浮かべ、


「さてお互い準備に取りかかろうか、ゆいちゃんはここで着替えて待っているように。ユキもね」


土御門さんがそう言うと、気がつけば私の後ろに小さなユキがお座りをしてじっとこちらを見ていた。


「まずはお着物を」


土御門さんが部屋を出ていくと、部屋にいる女性達がわっと寄ってきてあっという間に着物を脱がしてくれる。

脱ぐととても身体が軽い。

そして自分で真新しい折り目のついたブラウスの袖を通し制服に着替えると、スカートのポケットに匂い袋と櫛を入れた。

土御門さんは、きっとこうなることをわかっていたんだ。

だから服も先に用意して、もしかしたらここに私を呼んだのも藤原を助けるためだったんじゃ無いだろうか。

もし私が東京にいても、きっと以前の皇居の時のようにはいかなくて私はどうしていいのかわからず泣いていたかもしれない。

土御門さんは本当は私を行かせたくは無いのに、私の意思を尊重してくれた。

絶対に戻ってこなきゃいけない、藤原を元に戻して。

私はぎゅっとペンダントを握った。



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