月曜日の巫女【弐】

桜居かのん

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『Sweet Sweet』

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「お前は可愛くて、甘い」


そんなことをした上で満遍の笑みでそう言い放った藤原を、私は呆然とみていた。

そして恥ずかしさとか何かわからないものが心の奥底からトルネードで湧き上がる。


「最低!!!」


「なんでだよ?!」


私の言葉にギョッと藤原はしているけれど、最低以外の言葉が見当たらない。

きっと今までの彼女にもこういうことをしてたから平然とやれちゃうんだ。

そう言えば以前、私についたシュークリームのクリームを舐められた事があったのを思い出し、なんて最低な大人なんだと、ふつふつと怒りがわき上がる。


「最低!ほんと最低!!」


「だからなんでそうなるんだよ?!」


「うっさい!良いからコンビニ行って!!」


「わかったから!

って危ないから腕をつねるな!」


「足を蹴りたいけど蹴れないから仕方ないでしょ!」


「どう仕方ないんだよ・・・・・・」


呆れたような声が聞こえて車が動き出す。

あんな態度も言葉も、絶対普通の高校生男子ならやらないし、言わない。

いや、加茂君ならやるかな?

助手席の窓に映る運転している藤原の顔を眺め少し迷った後、指を伸ばしその口のあたりをすっ、と横に滑らせた。

私の彼氏は年上で先生だけど、焼き餅焼きで、時々弱気で、でも可愛い。

あ、偉い人だってのも忘れてた。

知らずに口元が緩んでて、それを気づかれないように私は拗ねたふりをする。


「ペリエと、プリンも追加ね、それも豪華なやつ」


「へいへい」


助手席の窓に映る藤原は、そんな返事の割に楽しそうだ。

結局バレンタインデー当日に喧嘩して、チョコを渡して、仲直りしてドライブして。

今度、ドライブじゃなくてもっと違うデートを提案してみようかな。

いや、高校生の時の写真を見せてもらう方が先かな。

私はそんなことを思いながら窓に映る恋人の横顔を、小さく笑みを浮かべながら眺めていた。


                                                                                          END
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