社畜のお仕事!本日も晴天なり✨

Lapin

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​第一部:オフィス侵攻編

第十話:二日酔いのデバッグ

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午前六時三十分。

 頭蓋骨の内側を直接ドリルで抉られるような振動。スマホのアラームが、昨夜の自分を呪う合図として鳴り響いた。

​「……うぅ。……福、お前のせいだよ。ひまわりの種、投げつけるから……」

​ 枕元には、空になったストロング缶と、袋のまま放置された冷たいたこ焼きの残骸。

 鏡を見れば、昨夜の化粧が中途半端に落ち、パンダどころかゾンビのような女が映っている。だが、綺羅々のプロ意識(あるいは生存本能)は、死んでいなかった。

​「……大丈夫。塗れば、消える。……クマも、後悔も、アルコール臭も……」

​ 慣れた手つきで、通常の三倍の厚さのコンシーラーを叩き込む。それはもはや化粧ではなく、地獄からの帰還を偽装する「高度な修復作業」だ。

​ 出社して真っ先に、彼女は部長のデスクに積まれた「タクシー代の領収書」の束を手に取った。

 二日酔いで回る視界の隅で、数字が不自然に踊っている。

​「……あれ。この領収書……」

​ 綺羅々の指が止まった。

 部長が「接待」と称して切っているタクシーの乗車時刻。それが、先月彼女が「部長の退勤ログ」として記録した時間と、微妙に、しかし致命的に食い違っている。

​「……午後十時三十分に退勤して、十時十五分に六本木でタクシーに乗る? ……時空でも歪んでいない限り、あり得ないわね(エラー)」

​ 胃から上がってくる不快な酸味を、冷めたコーヒーで無理やり流し込む。

 彼女は、部長がまだ出社していない静かなフロアで、静かにマウスをクリックした。
 
「犬飼くん、おはよう。……今日は、昨日よりもっと『晴天』になりそうよ」

​「お、おはようございます先輩!……あの、なんか今日、顔の層がいつもより厚くないですか?」

​「……静かに。今、部長の『パッション(横領)』を可視化している最中なんだから」

​ 彼女の瞳に、二日酔いの曇りを吹き飛ばすような、鋭利な光が宿った。
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