見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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四〇七

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 敵愾心むき出しで俺を睨み付ける。
そんなに気に障るか。
俺はジッとそいつの顔を見た。
心なしか辺りを気にしているように見える。

「……ひょっとして内緒なのか?」

「う、うるせえ!」

 どうやらそうらしい。
どう言う事情かは判らんがコイツは女だ。
女だとなめられるのかもしれない。
それはそれで、かなりの苦労だろう。

「お前に妹が居るだろう」

「な、何の話だ!」

「このメモを見せたら、姉の字だと言った」

 !

 ヤツがビクッとする。

「……テメエ」

「止めとけ、別にお前をいじめに来た訳じゃない」

「るせえ!訳の判らん事ばっか言いやがって!早く返しやがれ!」

 女は気色ばんだ。
もう女で良いだろう。
コイツはキロの姉だ。

「キロが心配しているぞ」

「そんな奴は知らん!早く返せ!」

 あくまでもシラを切るつもりか。

「お前の妹を預かっている」

「!?」

 嘘は言っていない。
確かにキロたちは俺が預かっているのだ。

「……知らねえ」

 なに?

「そんな奴知らねえ!メモを渡しやがれ!」

 やれやれ。
こんなに頑固とはな。

「そこまでだ兄さん。あんまり子供をいじめるなよ」

 物陰から様子をうかがっていた奴らが、姿を現した。
シビレを切らしたか。
それとも筋書き通りか。

「なんだお前ら。取り込み中だ。邪魔をするな」

「そうはいかねえなあ。俺たちは優しい大人だからよ、子供がいじめられてるとあっちゃ、素知らぬふりはできねえよ」

 男が汚い目付きで俺を見た。
モヒカン頭で言うセリフか。
どう見ても悪者じゃねえか。
他の連中も似たり寄ったりだ。
手に武器を携えて、どう見ても町の自警団には見えない。

「……邪魔しようってのか?」

 俺はため息混じりに尋ねた。

「邪魔?俺たちはかわいい子供を助けたいだけの正義の味方だよ」

 どの口が言うか。
女は否定しなかったが、微妙な表情で奴らの話を黙って聞いていた。
話は通っているようだが、快諾してる訳でもなさそうだな。

「……そうか。秘密結社ネオジョルトの行動隊長、このサフィリナックス様の邪魔をしようと言うのか」

 男たちはギョッとした。

「なんだと?」

「良いだろう。その度胸に免じて、貴様ら全員泣かしてやる」

 俺はギラリと殺意のこもった視線を、奴らに振り撒いた。

「へ!ふざけやがって!この人数にハッタリは効かないぜ!」

 さっきからうるさいモヒカン頭が、先陣を切って襲い掛かってきた。
素人め。
俺はあえて避けずに、そのまま男の振り下ろした棒を頭で受けた。

 バキイッ!

 乾いた音が辺りに響いた。
硬い黒木の棒が俺の額で止まった。

「ば、ばかな!?」

 男は俺の額を打った体勢で固まった。

「どうした。俺の頭を割るんじゃなかったのか?」
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