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第四章 護衛依頼

十二日目(6) 事後処理

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 それからは目の回るような忙しさだった。
まず、バードの他にこの件に関わっている人物を全員拘束し、牢に入れた。その数は何と屋敷にいた者の半数以上に上り、牢はぎゅうぎゅう詰めのすし詰め状態となった。
そして、残った者で事後処理をすることになった。
 アーティス、アルフォードの2人は他の者たちに混じり、取り調べの手伝いをしていた。主に下の方の者ではスムーズに取り調べができない幹部クラスの者たちを相手にしていた。最初彼らは自分が何だと思っていると、地位を笠に着て、高圧的な態度をとる者もいたが、2人が自身の名を告げると一転してごまを擦り始めた。その変わり身に呆れながらも何とか全員の取り調べが終わったのは日付が変わる頃だった。
 エリザベートは執務室で証拠の書類を押さえると、領内に向けて今回の件に関することを知らせ、今年の税は免除することを告知した。そして、そのことに関する書類仕事に追われた。
 マリアは3人のように特段できることもなく、暇を持て余していた。それを見かねたエリザベートが保護した少女たちと話してみたらどうだと提案し、マリアは少女たちの村の話を聞いて過ごした。
 行方がわからなかった者たちだが、全員男爵邸の別邸で無事発見された。ただ、皆精神に大きな傷を負っており、元の生活に戻れるのは随分先になるであろうというのが、男爵家の侍医の見立てだった。中には男性が近寄っただけでひどく怯えたり、恐慌に陥る者もおり、その様子にエリザベートは心を痛め、回復するまで男爵家で全面的に支援することを決めた。男爵家で最初に保護された少女たちが彼女たちの面倒は自分たちが見ると申し出、人手が足りないこともあり、エリザベートは喜んでそれを受け入れた。

 そして次の日、マリア以外の3人は眠い目を擦っていた。

「おはようございます。随分眠そうですが大丈夫ですか?」
「はい。心配はいりません。少し昨日寝るのが遅かっただけですから」
「家族と話し込んでしまったんですか?」
「……そんなところです」

 アレキスの質問にエリザベートは曖昧に答えた。

「そう言えば聞きました?」
「何をですか?」
「何って、代官が捕まったって話ですよ。なんでも不正行為が領主にばれたとか……」
「……悪いことはできないってことですね」
「まったくです」
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