こうして少女は最強となった

松本鈴歌

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第六章 王都への帰路

フェジーの過去(5)

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キィン

 金属がぶつかり合う特有の高く澄んだ音が響き渡った。想像していた痛みは一切ない。
 恐る恐る目を開けた私の目にまず飛び込んできたのは長いピンク色の髪だった。

「えっ?」

 身の丈ほどもある銀色の杖を持ったその人物は、私がよく知っている人だった。

「……何をしているのかしら?」

 尋ねた言葉は冷ややかで、けれどそれでいてどこか温かみがあった。

「小娘には関係がない!そこをどけ!」
「そ、そうだ!」

 男たちはその人物が誰だかわからないようだった。

「……小娘?」

 紡がれた言葉は感情が一切感じられなかった。

「関係がない?笑わせないで、レオン・ベルジュラック、それにアーノルド・ベルジュラック」
「っ!?貴様!我らを呼び捨てにするとは不敬だぞ!」
「……不敬?どの口がそう言うのかしら?教えてくださる?」

 そう言って彼女は微笑んだ。

「姫様!我らを置いて勝手に出歩かれては困ります!」

 そこへそんな叫び声と共に走ってきたのは初老の中年男性だった。

「ごめんなさいね、モーリス。でも彼女が、フェジーがピンチだったものだからつい……」

 そう、私を助けてくださったのはローズマリー様だった。
 対照的にベルジュラック兄弟はこれでもかというほどに青ざめていた。

「……モーリス・クールセル近衛騎士長?それに姫様?まさかローズマリー王女?」
「う、嘘だよね?兄さん」

 再度ローズマリー様がベルジュラック兄弟に向けた目は冷ややかだった。

「……王族である私に刃を向けた挙句に先ほどの暴言。とても見過ごせるものではないわ」
「そ、そんな。ご慈悲を……」

 ローズマリー様に近づこうとしたレオンをモーリスさんは鞘に入ったままの剣で薙ぎ払った。そしてそのまま気絶させると、どこからか取り出した縄で縛り始めた。

「……ごめんなさいね」

 そんな様子を横目で見ながら、ローズマリー様は頭を下げられた。

「手紙、読んだわ。まさかあんなことになるとは思わなくて……。ああ、あなたの横領の疑いはすでに晴れているから安心して。真犯人がわかったから……あなたのお陰よ?」

 ローズマリー様はそう言って微笑まれた。

「……やっぱり犯人は先輩たちですか?」
「ええ。お陰で宮廷錬金術師は軒並み捕まって工房は閉鎖。このままだと宮廷錬金術師という役職もなくなりそうよ」

 そう言って肩を竦めた。

「……ねぇフェジー、あなたが良ければ戻ってこない?あんなことがあった後に訊くのはなんだと思うのだけれど……」
「……そうですね。私、城勤めは向いていないことはよくわかったので辞めておきます。こっちの方が性にあっているので……」
「……そう」

 ローズマリー様はそれ以上何も言わなかった。

 それから1月後、ローズマリー様が出奔したという噂が流れた。
 それが真実だということもすぐにわかった。王国騎士が総出でローズマリー様を捜索していたからだ。ちょっと世直ししてくると書かれた書置きが部屋に残されていたらしい。
 それ以来私はローズマリー様とはお会いしていない。

☆★☆★☆

フェジーの過去編はこれで終了です。
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