こうして少女は最強となった

松本鈴歌

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第七章 それぞれの過ごす日々

本探し(2)

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 マリアが龍の属性について書かれた本を読んで戦々恐々としていた頃、リオナとアーティス本棚を前に分厚い和綴じの本を片手に頭を捻っていた。

「……これ、なんていう意味?」
「……ちょっと待って、確かさっき見た気がする……あれ?……えっと、何だっけ?」
「『いと』だよ!?」
「えっと、いといと……載ってないぞ」
「えっ、ちょっと貸して」

 長い歴史を誇る国の城の書庫だけあって最近の本ばかりではなく、古い文字や言葉で書かれた本もかなりの割合占めている。

 リオナは辞書を半ば奪うように受け取ったは良いがそのあまりの重さに少しよろめいた。

「お、重い……もう!どう考えても動詞のはずがないでしょうが!

開いていたページを見ると動詞が並んでいた。

「……こんなわかり辛い辞書なのがいけないんだ」「……まあなんで品詞ごとに分かれているのかは謎だけど。品詞ごとに分けるんだったら何冊かに分冊すれば良いのに」

 大変仕様が謎な辞書だった。作者は何を考えて作ったのだろうか。

「……内容を増やしていき続けた結果ってやつじゃないか?ある程度以上の量になると編集し直すのも大変そうだし」
「そうなのかな。え~と、……いと、いと……これかな?」
「あっ、そうじゃないか」
「意味は非常にとかとてもだって」
「えっと、それだと『とても簡単な魔術』になるな。……はずれか」
「次の本行こう」

 タイトルすらもまともに読めず、1冊のタイトルを理解するだけで数分かかっていた。

「……アーティス、次『つきづきし』」
「了解」

 最初の本を開くまでまだまだ時間がかかりそうだった。

◇◆◇

「……」

 エリザベートは少し離れたところでアーティスを睨んでいた。

(アーティス、お灸が据え足りなかったかしら?)

 どう見ても本棚を見ていないのに手は適確に魔術属性について書かれた本を抜き出しているところが怖い。

「……またはずれ。まったくアーティスのせいよ」

 本人が聞けば怒りそうな理不尽な八つ当たりをする。

「……この分だとあっちも期待できないかしらね」

 本を戻しながらそう呟いた。

「……あら、『魔物の扱う魔術』?興味深いわね」

 戻した本の隣にあった本のタイトルが気になり、本来の目的を忘れてそれを読み始めた。

(……ああ、なるほど。魔物にも属性があるのね。……えっ、『契約した魔物は契約者の属性を本来の属性よりは威力が落ちるが使用可能』って、マリアにくっついていたベルって子、全属性使えるってこと?……あっ、でも『一定以上の魔力が必要』って書いてあるわね。それだと難しいかしらね)

 ざっと一通り読んだところでその本は棚に戻さず手に持ったまま次の本を探し始めた。一応駄目もとでマリアに見せてみようと思ったのだ。
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