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第九章 夏季休業

アクセサリーショップ

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「……」
「……」

 気まずい沈黙が流れる。

「……気持ちはわかるがその辺にしておきなさい。それにこんな往来でする話でもないだろう?」

 レリオンがそう窘めると、2人は渋々といった様子で頷いた。

 なんとも言えない重い空気を纏ってフィマエルの街を歩く。

「あっ」

 1軒の店の前で足を止める。看板には『アクセサリーショップ ローズ・ベリー』と丸っこい字で書かれている。

「何か気になった物でもあったのか?」
「うん。ちょっと寄っても良いですか?」

 そうギルガルドにお伺いを立てる。

「ああ、構わねぇ」
「でもギルガルドさんたちには居心地が悪くないですか?」
「……この手の店にはこういう時じゃなきゃ、おいそれと入れねぇからな。俺らも楽しませてもらうから気にすんな」

 そう言ってギルガルドは乱暴な手つきでマリアの頭を撫でた。

「髪型が崩れるからやめてください」

 ギルガルドの手を払い除けつつ、それを羨ましそうに見ている3人組の視線もスルーして店内に入る。

「アル坊はどうする?」

 アルフォードはレリオンの問いに少し迷う素振りを見せたが、軽く首を横に振ると言った。

「いや、僕も行くよ」

 そう言ってマリアたちの後を追った。

「ん~、どっちかな?」

 店内ではマリアがブレスレットを手に真剣に迷っていた。
 こじんまりとした店内には他にも数人の若い女性たちがおり、ギルガルドたちの見た目に少し眉をひそめていたが、特に何をするでもない者に文句を言えるわけもなく、ただ軽くギルガルドたちを睨んだだけだった。

「この服に合わせるんだったらこっちだけど、いつものならこっちなんだよね~」

 一方は大粒の翡翠色の石と、小ぶりな空色の石が交互に連なったもの。もう一方は深い瑠璃色の半透明な石が連なったもの。
 そして空色の石には蝶が、瑠璃色の石には大輪の花の絵が彫り込まれており、翡翠色の石には明るい光の筋が走っておりなかなかに綺麗だった。

「両方買ったらどうだ?」
「ん~でもアクセサリーなんて、そんなにあっても着けないし……」

 それにお金を使うのはと、マリアは渋る。

「……そんなの今さらじゃねぇか?」

 ギルガルドは呆れたようにそう溢した。

「それとこれは別の問題なんです!」
「うるさいの! 少しは周りの迷惑も考えるの!」

 思わず声を荒げればただちに文句が入る。

「あっ、すいません」

 マリアとさして歳の変わらない、黒に近い深い藍色の髪の少女に謝る。

「わかればいいの」

 少女はぷいっと横を向くと、手元に視線を落とした。その白い頬は僅かに赤くなっていた。
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