31 / 66
31次の一手は
しおりを挟む
ルーナルーナが王妃に抱きしめられて窒息しそうになり、キュリーの事情を知ったコメットが情報の拡散に勤しみ、リングがぼんやりと後宮の方を眺めていた頃から数時間後。ダンクネス王国では、サニー達が作戦会議を行っていた。
「なるほど、国内のキプルの実はほぼ完全に採り尽くされていると」
「はい。キプルの木は、王城以外ですと、基本的に各教会支部の敷地内にしか存在しません。そこで、手の者を放って虱潰しに探しましたが、このような結果となりました」
アレスは低い声で報告を終える。公爵家の彼は、泥鼠程の専門性はないが、諜報のための配下を個人的に持っていた。サニーと出会って以降、見込みのある者を少しずつ自らスカウトし、育て続けてきたのだ。ようやく組織として動かせるようになってきたのは近年のこと。泥鼠が王族に忠実なのに対し、この組織『灰鷹』はアレスとサニーにのみ忠実であるよう教育されている。
「メテオからも何かないのか?」
「そうだな。やはり、シャンデル王国へ渡ったことがあるという人間が増えてきていることが分かってきた。つまり、ルーナルーナが話していたヒートという商人が、かなりの量のキプルジャムを売り捌いているということだろう」
サニーは唇を噛み締めた。
「だが、これだけの多売は本当に最近になってからのことだ。これを単なる商人の思いつきで済ませて良いかどうかだな」
アレスも見解を述べる。
「確か、そのヒートとやらは、ダンクネスとシャンデルの物を相互に行き来させて、その珍しさを武器に商売しているそうじゃないか。もし、二つの世界が一つになるとこの商売は成り立たなくなる。となると、ヒートが異教徒の元締めという線は薄いな。もしかすると、別の金蔓が絡んでいるか、もしくはヒートの背後に黒幕がいるんじゃないか?」
「実は、そのヒートという商人が俺に会いたいと言ってきているらしい」
サニーは、どこからか取り出したナイフを壁に向けて投げつけた。刺さった場所からジワリと赤いものが滲み出し、同時に誰かのくぐもったうめき声が壁越しに伝わってきた。サニーの瞳が刃のようにギラリと光る。
「良かったの? あの気配、知ってる。そこで死んでるの、たぶん王の配下だよ」
メテオはわざと砕けた口調で話しかけると、肩をすくめた。
「なかなか報告に来ないからって、痺れを切らして密偵を放つとはな」
アレスも、サニーと関わるようになってからはこの程度の荒事は些細なことである。全く動じない。
「報告に行くのは、全てが終わってからだ。そしてその時には……」
(ルーナルーナの話もせねばならないだろうな)
サニーは遠くを見ていた。世界を超えて、身分を超えて、そしてサニー自身は全く気になっていないことだが年の差も超えて、二人が結ばれる未来を。そのためには、まだまだせねばならない事がたくさんある。サニーは、大物を殺る時だけに使う剣を腰に下げた。
そんなサニーに友二人は温かな眼差しを送る。ずっと身近なところからサニーの知られざる苦労を見てきた。こんな境遇であれば、もっと捻くれた男に成長してもおかしくない。なのにサニーはあくまでピュアな狂人となり、そして一人の女性に恋をした。これを応援せずにいられようか。
これまでサニーは人との縁に恵まれない人生を歩んできた。家族との絆は無きに等しく、本来向き合うべき国民とは裏舞台でしか関わることしかできない。その異端な外見から、誰しもから嫌悪の目で見られてしまう。だからこそ、今のサニーは本気になっていた。
これまでも必死に王位継承権を守るために、体を張って働いてきたが、それとは全く異なる原動力がここにはある。サニーが目を閉じるとルーナルーナがほほ笑み、次の一歩を踏み出す勇気を与えてくれるのだ。
ルーナルーナには日常が戻っていた。サニーのところへ毎晩でも通いたいが、ジャムは一瓶しかない上、サニーの忙しさを考えると邪魔はできない。夜眠る前に、サニーの夢が見られますようにと祈りを捧げるのが関の山だ。
「はぁ……」
コメットが盛大にため息をついた。
「どうされました?」
ルーナルーナが尋ねると、コメットはジト目で睨み返してくる。
「いいわねぇ、ルナには素敵な婚約者がいて」
「あの、正式にはそういうわけでは……」
「誤魔化さないで! あのドレスも靴も装飾品も、全部あの方がご用意くださったのでしょう? 高級品を揃える財力があるだけでなく、センスもあるなんて。しかも、あのカッコ良さ! やっぱりうちのと交換しない?」
(コメットの婚約者の方も侯爵家の方だし、きっと十分に条件が良い方でしょうに……ここまで言われては、ちょっと気の毒だわ。確かに、サニー程の方はいないと思うけれど)
ルーナルーナの頬が緩むのを目ざとく見てしまったコメットは、王妃の洗濯物を乱暴に籠へ押し込んだ。
「あー、イライラする! キュリーもいつの間にか宰相をたぶらかしてるみたいだし、なんで私以外は皆、玉の輿なのよ?!」
ルーナルーナは、いっそのことサニーとの間にある世界と身分と年の差の壁について説明しようかと思ったが、ちょうど別の侍女が話しかけてきた。
「ルナ、神殿から封書が届いてるわよ」
最近、ヒートやエアロスの影響もあり、コメット以外の王妃付き侍女達は、ルーナルーナに対する態度を改めつつあった。それにはコメットの尽力もあるのだが、なぜか本人はそれを隠そうとしている。
「ありがとう」
ルーナルーナは早速封を切って中をあらためた。以前、コメットから神殿に行って悩み相談をすることを勧められた際、祈祷の申込みをしていたのだった。祈祷はとっかかりにすぎず、大抵は信者の話を聞いて、それに関係する経典の言葉を与えられるという流れだ。それを行ったからといって何か生活が変わるわけではないが、敬虔な信者らしい行為をすることでご利益を感じられるという効果がある。
(まさか、大巫女様が祈祷してくださるなんて!)
ルーナルーナは、書かれてあった担当する巫女の欄を読んで驚いていた。同時に、手紙を持っているのと反対の手ではガッツポーズを決めている。
(これを申請した時には何も下心もなかったけれど、これはちょうどいいわ! シャンデル王国の神殿の秘密に迫ることができるかもしれない)
ルーナルーナは、ダンクネス王国の教会とシャンデル王国の神殿は同一のものだと思っているが、これはあくまで推測だ。その確固たる証拠がほしい。それ次第では、サニーの動き方も変わるはずだ。
「なるほど、国内のキプルの実はほぼ完全に採り尽くされていると」
「はい。キプルの木は、王城以外ですと、基本的に各教会支部の敷地内にしか存在しません。そこで、手の者を放って虱潰しに探しましたが、このような結果となりました」
アレスは低い声で報告を終える。公爵家の彼は、泥鼠程の専門性はないが、諜報のための配下を個人的に持っていた。サニーと出会って以降、見込みのある者を少しずつ自らスカウトし、育て続けてきたのだ。ようやく組織として動かせるようになってきたのは近年のこと。泥鼠が王族に忠実なのに対し、この組織『灰鷹』はアレスとサニーにのみ忠実であるよう教育されている。
「メテオからも何かないのか?」
「そうだな。やはり、シャンデル王国へ渡ったことがあるという人間が増えてきていることが分かってきた。つまり、ルーナルーナが話していたヒートという商人が、かなりの量のキプルジャムを売り捌いているということだろう」
サニーは唇を噛み締めた。
「だが、これだけの多売は本当に最近になってからのことだ。これを単なる商人の思いつきで済ませて良いかどうかだな」
アレスも見解を述べる。
「確か、そのヒートとやらは、ダンクネスとシャンデルの物を相互に行き来させて、その珍しさを武器に商売しているそうじゃないか。もし、二つの世界が一つになるとこの商売は成り立たなくなる。となると、ヒートが異教徒の元締めという線は薄いな。もしかすると、別の金蔓が絡んでいるか、もしくはヒートの背後に黒幕がいるんじゃないか?」
「実は、そのヒートという商人が俺に会いたいと言ってきているらしい」
サニーは、どこからか取り出したナイフを壁に向けて投げつけた。刺さった場所からジワリと赤いものが滲み出し、同時に誰かのくぐもったうめき声が壁越しに伝わってきた。サニーの瞳が刃のようにギラリと光る。
「良かったの? あの気配、知ってる。そこで死んでるの、たぶん王の配下だよ」
メテオはわざと砕けた口調で話しかけると、肩をすくめた。
「なかなか報告に来ないからって、痺れを切らして密偵を放つとはな」
アレスも、サニーと関わるようになってからはこの程度の荒事は些細なことである。全く動じない。
「報告に行くのは、全てが終わってからだ。そしてその時には……」
(ルーナルーナの話もせねばならないだろうな)
サニーは遠くを見ていた。世界を超えて、身分を超えて、そしてサニー自身は全く気になっていないことだが年の差も超えて、二人が結ばれる未来を。そのためには、まだまだせねばならない事がたくさんある。サニーは、大物を殺る時だけに使う剣を腰に下げた。
そんなサニーに友二人は温かな眼差しを送る。ずっと身近なところからサニーの知られざる苦労を見てきた。こんな境遇であれば、もっと捻くれた男に成長してもおかしくない。なのにサニーはあくまでピュアな狂人となり、そして一人の女性に恋をした。これを応援せずにいられようか。
これまでサニーは人との縁に恵まれない人生を歩んできた。家族との絆は無きに等しく、本来向き合うべき国民とは裏舞台でしか関わることしかできない。その異端な外見から、誰しもから嫌悪の目で見られてしまう。だからこそ、今のサニーは本気になっていた。
これまでも必死に王位継承権を守るために、体を張って働いてきたが、それとは全く異なる原動力がここにはある。サニーが目を閉じるとルーナルーナがほほ笑み、次の一歩を踏み出す勇気を与えてくれるのだ。
ルーナルーナには日常が戻っていた。サニーのところへ毎晩でも通いたいが、ジャムは一瓶しかない上、サニーの忙しさを考えると邪魔はできない。夜眠る前に、サニーの夢が見られますようにと祈りを捧げるのが関の山だ。
「はぁ……」
コメットが盛大にため息をついた。
「どうされました?」
ルーナルーナが尋ねると、コメットはジト目で睨み返してくる。
「いいわねぇ、ルナには素敵な婚約者がいて」
「あの、正式にはそういうわけでは……」
「誤魔化さないで! あのドレスも靴も装飾品も、全部あの方がご用意くださったのでしょう? 高級品を揃える財力があるだけでなく、センスもあるなんて。しかも、あのカッコ良さ! やっぱりうちのと交換しない?」
(コメットの婚約者の方も侯爵家の方だし、きっと十分に条件が良い方でしょうに……ここまで言われては、ちょっと気の毒だわ。確かに、サニー程の方はいないと思うけれど)
ルーナルーナの頬が緩むのを目ざとく見てしまったコメットは、王妃の洗濯物を乱暴に籠へ押し込んだ。
「あー、イライラする! キュリーもいつの間にか宰相をたぶらかしてるみたいだし、なんで私以外は皆、玉の輿なのよ?!」
ルーナルーナは、いっそのことサニーとの間にある世界と身分と年の差の壁について説明しようかと思ったが、ちょうど別の侍女が話しかけてきた。
「ルナ、神殿から封書が届いてるわよ」
最近、ヒートやエアロスの影響もあり、コメット以外の王妃付き侍女達は、ルーナルーナに対する態度を改めつつあった。それにはコメットの尽力もあるのだが、なぜか本人はそれを隠そうとしている。
「ありがとう」
ルーナルーナは早速封を切って中をあらためた。以前、コメットから神殿に行って悩み相談をすることを勧められた際、祈祷の申込みをしていたのだった。祈祷はとっかかりにすぎず、大抵は信者の話を聞いて、それに関係する経典の言葉を与えられるという流れだ。それを行ったからといって何か生活が変わるわけではないが、敬虔な信者らしい行為をすることでご利益を感じられるという効果がある。
(まさか、大巫女様が祈祷してくださるなんて!)
ルーナルーナは、書かれてあった担当する巫女の欄を読んで驚いていた。同時に、手紙を持っているのと反対の手ではガッツポーズを決めている。
(これを申請した時には何も下心もなかったけれど、これはちょうどいいわ! シャンデル王国の神殿の秘密に迫ることができるかもしれない)
ルーナルーナは、ダンクネス王国の教会とシャンデル王国の神殿は同一のものだと思っているが、これはあくまで推測だ。その確固たる証拠がほしい。それ次第では、サニーの動き方も変わるはずだ。
0
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
【12月末日公開終了】有能女官の赴任先は辺境伯領
たぬきち25番
恋愛
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26)
ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。
そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。
そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。
だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。
仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!?
そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく……
※お待たせしました。
※他サイト様にも掲載中
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
公爵家の秘密の愛娘
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。
過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。
そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。
「パパ……私はあなたの娘です」
名乗り出るアンジェラ。
◇
アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。
この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。
初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。
母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞
🔶設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞
🔶稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇♀️
冷徹と噂の辺境伯令嬢ですが、幼なじみ騎士の溺愛が重すぎます
藤原遊
恋愛
冷徹と噂される辺境伯令嬢リシェル。
彼女の隣には、幼い頃から護衛として仕えてきた幼なじみの騎士カイがいた。
直系の“身代わり”として鍛えられたはずの彼は、誰よりも彼女を想い、ただ一途に追い続けてきた。
だが政略婚約、旧婚約者の再来、そして魔物の大規模侵攻――。
責務と愛情、嫉妬と罪悪感が交錯する中で、二人の絆は試される。
「縛られるんじゃない。俺が望んでここにいることを選んでいるんだ」
これは、冷徹と呼ばれた令嬢と、影と呼ばれた騎士が、互いを選び抜く物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる