ムーンライト

くるみぱん

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十五年

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あれから十五年経った今も、ソラの情報がオレの耳に届くことはない。

ソラがいなくなった日の夜、父がソラの母親に電話をしたら、「もう大丈夫です。お世話になりました」と言われたので、それ以上何も言えなかったらしい。


次の日からオレは野球の練習に復帰した。何もかも忘れたくて、一心不乱に打ち込んだ。
中学に入ると丸坊主にして、ますます野球に没頭した。

そんな生活の中で、ソラと過ごした日々のことも、いつの間にか記憶の隅へと追いやられていった。

高校に入ると野球から離れ、バイトを始めた。

オレは自分で言うのもなんだが、そこそこ顔が良かったので、髪を伸ばした途端、モテ始めた。
初めて違和感を感じたのは、バイト先の女の子から告白された時だ。
どうしてもそういう気になれなかった。
でもその時は、その子が自分のタイプじゃなかったのだと、それ以上深く考えなかった。

その後も、友人たちが、好きな女子のタイプや下ネタの話題で盛り上がっていても、オレは全く興味が持てず、適当に聞き流していると、

「お前好きな奴いねーの?イケメンのくせにそんな話全然きかねーけど」

と言われた。

「好きな奴」と言われて、なぜか頭に浮かんだのが、しばらく思い出すことがなかったソラだった。
「好き」にはいろんな種類がある。ソラは大切な友達だった。だから好きなんだ。
でも、ソラを思うとあの五月の日に感じた胸の高鳴りが蘇る。


ソラにすごく会いたい。
忘れてなんかいなかった。思い出さないようにしてただけ。
ソラを虐待男から守れなかった自分が、本当は今でも許せない。

「オレがお前を守る」そう約束したのに。

あの時試合に行かなければ…、オレが居れば絶対ソラを渡さなかった。

その後も、どんなに美人で、優しくて、気が合う女の子とも、付き合いたいとか、思春期のそういう欲とかは全く感じなかった。


大学に入ると、周りと自分を比べ、少しずつ違和感が大きくなってきた。

大学卒業を控えた冬に告白された時、話したことも無いその女の子と付き合ってみることにした。
何かが変わるかもしれないという期待がオレをそうさせたのだ。


付き合って三か月が経ったある日、彼女の一人暮らしの部屋に行った時、彼女はオレに失望した。
オレは彼女を大切に思っていたし、性格も良い子だったので「好き」だった。
だけど、出来なかった。
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