魔女様は平和をお望みです

yukami

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5.勝負することになりました。

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「あ、そういえば男性の方が私に用だと聞いたのですが。あの方は?」

「男性?…誰ですか?ルーマ」
「ギブソンですね!えっと彼はですね…お手合わせしたいという話があったそうで。」
「商人のアン様に頼むことではありませんね?」
「…ですが、このままだと毎回来るたびに絡んでくる可能性がありまして…一度力を見せるだけでいいんです!お願いします!」
来るたびは面倒です…

「…彼がどのくらいというのは知りませんが…私そんなに強くないですよ?」
「最近倒した魔物の名前をお願いします」
「え?えっと…狩も当分してないし…えと…」
最近でというと…

「ん…?狩……?」
「ほらっ」
何やらルーマさんがレヴィさんを茶化していますが…。えと、なんでしたっけ。確か革細工に手を出したのが最後で…あ!

「ブモサウルスでしたか…」
「?!」
「あの皮が欲しいと職人の方に要望されたので…どうしましたか?レヴィさん。」
「ほらぁ」
「確かに…むむ。」

おや?少しレヴィさんがぐらついているような。

「とにかく、見せしめにしていただければ周りは静かになりますから。絡まれることもないでしょう。」
「…んー。まあ、毎回絡まれるのは時間がもったいないですし。相手にできるかもわかりませんから…そうですね。この程度だとわかってくれるのならやりましょう。」
「ありがとうございます!」
案内された場所はよくいうギルドの裏ではなく、入り口で、さらに外に向かい、街の門をも出ます。

「あの、外でやるのですか?」
「えぇ、その方が他の人も観れるでしょう?」
「それはまあ、そうですが…」

あ、先ほどの方が来られましたね。
その後ろにはぞろぞろと人が。今日って1人を相手するだけですよね?
何か騒ぎを聞きつけて、巡回の騎士の方も来られてるような…。

「何か大ごとになっていませんか?大丈夫です?」
「大丈夫です!ほら、レヴィさんが騎士の方に説明に行きました。そんなことは放っておいて、戦闘の用意を!」
「といっても…私素手なので用意らしいこともないのですが。」
いつでも戦える動きやすい服ですし。

「……アレ、そうでしたね……え、じゃあ素手でブモサウルス…」
「えぇ、首の骨折れば大抵倒せるでしょう?」
「……っ!!首だけは折らないようにお願いします!?」
あ、でもブモサウルスは手足を折ってからトドメに首でしたか。まあ、人相手にそんなことしませんよ。

相手の方が私を睨みつけてきます。

「本気で戦えよ!」
「…本気って…魔法もありにした方が?」
ルールは聞いておいた方がいいですよね。
「嗚呼!なんでもありだ!」
「降参するか気絶まででよろしいですよね?」
「今すぐ降参してもいいんだぜ?」
「実力を見せた方が絡まれないということなのでまだ降参はしません。開始の合図は…」

ルーマさんがやるそうです。

「…では…始め!」

合図の瞬間、足に風を纏わせます。
相手も大剣を構えて向かってきます。
風を纏わせた足で相手の目の前に移動。大剣を振り回す前の腕を掴み、大剣を無理やり離します。
そのあとは簡単。
足払いの後に背負い投げ!

軽く投げたはずでしたが、風魔法の風が威力を増加させたせいで相手さんが地面にめり込んでしまいました。

「……あ。」
「ガハ……」

「わぁー!すみません!!風魔法の余韻の計算忘れてました!」
すぐに地面から救出、お相手の方は気絶、骨がいくつか折れてました。

「気絶してる…のは置いといて、骨がいくつかいってる。えと、確かポーションが…」

魔法袋の中に入れておいた緊急時用のよく効くポーションを取り出して蓋を開け、口に一滴垂らします。苦い成分をごまかせるようカプルの果汁(リンゴのような果物)を使って誤魔化していますから苦くないはず。
口の中から唾液と一緒に飲んでくれたことを確認します。
その後少し効果を発揮して光ります。
これで骨も治ったはず…。

「よかった、これで大丈夫ですね。」
あとは目覚めるのを待つだけ。

「……あ、アン様?」
「あ、はい。もうこの方が目覚めるのを待つだけですね。」
「今、何飲ませました?」
「ポーションですよ?…薬剤師さんに念のためと持たされていたのです。」

「一滴でしたよね?」
「はい、一滴で四肢断裂も治るポーションだそうです。」
「……」
「…そちらを見させていただいてもいいでしょうか。買取するというわけでも奪うというわけでもなく、私、価値鑑定という加護を持っております。それによりその値打ちと効果が調べられるので商人ギルドの1人として確認しておきたいのです。」

これ一本しかないので譲ることはできませんが、見せるだけというなら構いません。量産は考えてませんし、この量あったら死ぬまで持つかと思ってますし…。

持って見せてもらうだけでいいというので、見えやすいように持ちます。

「…………っ!白金貨…ひゃ…せ…ま…ま?!」
「はぁ?!」

私は掠れた声で聞こえなかったのですが、ルーマさんは聞こえたみたいです。

「しまってください。もう大丈夫です!!」
「はぁ。」
気の抜けた返事を返して、倒れた人を覗き込んでみます。
まだ意識は戻りませんね。
というか眠ってますね。いびきかいてます…放置してても問題なさそうです。

「あの、レヴィさん。先ほどの集計データというのを見せてもらっても?」
「は!はい!こちらです!」
各アイテムごとなのでやはり分厚いですね。えーっと…

おや、どこの国に売られているとまで書かれてますが見ても大丈夫なのでしょうか?まあ、知ってる国は…む?

「セランディル…この国だけ沢山の木の小物の購入履歴がありますね。」
「あ!はい!木材の国とも言われていまして、アン様の細工がとても美しいと評判で新作を楽しみにされているようです。」
「新作…?当分はその予定はないのですよね。それに職人達からしたら芸術用ではなく一般的に使って欲しいと思うのですが…」
「もちろん使ってる方は使っておりますよ。しかしこの木材、燃えにくく水にも強く、欠けにくいという素晴らしい資質を持っていますので陶器の食器よりこちらの方がいいという声が多いです。」

まあ、一番頑丈な木と言われてるらしいですし、そうですよね。溶岩の上に乗せてもなかなか燃えませんから。

「衣服の方は…カレンヴェルですね。」
「はい、貴族が多く住み豪邸が多い国ですね。」
「何か要望とかありましたか?お客様の声とか。」
「…それなんですが。これを作った職人に会いたいという声がカレンヴェルのみならず他の国のデザイナー全員からの声が上がっておりまして…職人方に聞いていただけないかと。」

いやぁ、それ無理ではないですかね。職人ってまともなの私しかいませんよ?他みんな魔物ですから…。
「えと、それはお断りしておいてもらえますか。無理だと思いますので。」
「絶対でしょうか?」
「絶対です」
「…まあ、そう言われると思い、全て断っております。アン様の名前も言っておりませんからご安心ください。」
「ありがとうございます。」
「それで…ですね。冒険者ギルドに加担するというわけではないのですが…もし、職人方に渡して素材が少しでも余ったらそちらを売ってもらえないでしょうか。私共ではなく冒険者ギルドの方に。」
「余った素材…ですか?」
「はい。恐らく商人をしているアン様には確かに冒険者ランクというのは縁遠いものでしょう。しかし、ギルドにも規定がございます。低ランクであると不備が生じてしまうことがあります。」
「不備…」
「一応、ギルド員はランクで人を判断するなは頭に叩き込ませられているはずですが、他の人の目は違います。必ず一度は不快な気持ちにさらされてしまいます。それの予防策として、ランクは試験を受けるのはご気分に任せますがCには上げておいた方がよろしいかと思われます。」

ふむ、絡まれるということが減り、さらに予防策になる…ですか。

「もちろん、このままのランクであったとしてもこちら側がカバーを怠るというわけではありませんが、ランクが少しでも上の方がカバーがしやすいのです。」

お手数をおかけするのが減るということですね。そうなると…

「余った素材を納品することでランクが上がるという風に聞こえるのですが、よろしいのですか?最初、倒した魔物の数またはこなした依頼の数によってランクは徐々に上がるものだと聞いたものですから…異例ということになりませんか?」
「ここからは予測なのですが、アン様がお持ちのその素材が、討伐規定のランクが高いものばかりだと思われます。Fランクの冒険者がそれを狩取れるなんて広まってしまうと、他の被害が出てきてしまう可能性があるのです。」

自分がFであるが、Sランクの魔物に挑戦できる強さを持つのだから、やらせろなんていう人が出てくるかもしれない…と。

ランクによって挑戦できる討伐依頼があるのに、私が狂わせてしまうと。

「ふむ、わかりました。そういうことなら仕方ありません。素材はいくつ出せばよろしいでしょうか?皆さん、タランジールやオーガホースという名を出すと驚かれていたので、今所持しているあまりの素材をどうしようか悩んでたところだったのです。」
「…もし、ですが。この提案がなかった場合どうしていましたか?」
「そうですねぇ…ここで消費できそうになかったら他でも無理でしょうし…その辺の活火山の溶岩に投げ入れてますかねぇ。」

ほとんど燃えるゴミですし。

「…よ、よかったぁ!!レヴィさん!ありがとおおおお!!」
「…提案してよかったとホッとしてます…」
「捨てるの勿体無いなーって思ってたとこなんです。こちらこそ助かります。」
「ランクが上がった後も定期的に売ることをお勧めいたします。こちらとしても助かりますから。」
「そうなのですか?ならそういたしましょう。」

といってもかなり数がありますから少しずつにしましょうか。

「ではギルドの方に行きましょう」
「「はい」」

小さいものから売っていくことに。
鑑定するごとにルーマさんの意識が飛び欠けてましたが、FからCまでランクは上がって行きました。

「なんだなんだ。この騒ぎは」

素材を納品し終わり、ギルドを出る時立派な武装をした集団とすれ違います。周囲の反応を少し伺うとSランク冒険者パーティという人たちのようです。

ま、私には関係ありませんから、そのまま素通り、用事は終わったのでラトくんのところにと足を運びます。

しかし私はその後に大きな声で話し出した。すれ違った人たちの言葉を聞き足を止めました。

「厩舎にオーガホースいたの誰か見たか?睨みつけてきやがったからよ。殴って気絶させといたぜ!」


「ーーーー」
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