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6. お客様をお迎えします
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冒険者ギルドを出て、帰ろうとラト君のところに向かう途中ですれ違った人の言葉に私は足を止めました。
その言葉に近くの人が顔を引きつらせながらなぜそんなことをしたのか問いかけます。
しかし、当の本人は、周りのおかしな様子に気づかず、陽気に答えていました。
「…お、オーガホース?!な、なんで手を出し…」
「躾のなってない魔物だぞ?どんな奴だよあの主人サマは」
「ちょっ!…あ。」
「…失礼ですが。」
「んあ?」
「オーガホースに殴りつけたと聞こえました」
私はギルドの入り口に立つその人に近づき、確認をとりました。もしかしたら、ラト君がご迷惑をおかけしたのかもしれません。
「ああ!あれは最高だったな。野良でいると厄介な最強種もあんなにおとなしくペットにされてやがってよ。普段は近づくことすら危険な奴らだ。それが厩舎にいたんだぜ?殴らなきゃ損だろ!」
殴らなきゃ損…ですか?最初の言葉と違うようですね。
「…睨みつけられたから殴ったと聞きました。その理由はただのこじつけというわけでよろしかったでしょうか?」
私は今どんな顔をしているのでしょう?
ルーマさんが引き攣り震えているのは私のせいではないですよね?
「嗚呼そーさ。少し目があっただけだがそれがどうしーー」
リーダーと思しき存在はギルド受付に頭をめり込ませられました。
誰がやったなんて見たらわかります。
私です。
軽く…いえ、少し力を入れました。
適当な理由をつけ、大切な友人を傷つけた。怒りをそのままぶつけてしまったというところでしょうか。
「私も今、虫の居所というものが悪くなりまして、ちょうど目があったあなたを殴りたくなった。あなたは私の友人に同じことをしたのだから文句は言わせません。」
まあ、聞こえてないでしょう。
すぐに気分を切り替え、ルーマさんに謝罪と受付の修理費用をお渡しする。
「すみません、受付を壊してしまいました。あまりカッとなることってないのですが。次からは地面にします…これ修理費用として使ってください。それではまた7日後に来る予定ですのでその時に。」
パーティメンバーさん達が唖然と見守っていましたが、道を塞ぐ立ち位置でした。目の前に移動すると道を開けてくれたので軽く会釈をして、厩舎に急ぎます。
「…ラトくん!大丈夫ですか?」
“ん?どうしたの?大丈夫だよ?”
「男性に殴られ気絶したと聞いて慌ててきました!」
“嗚呼、アレね。なんかきたけど気絶までしてないよ。構ったら負けな気がして殴られて目をつぶってただけ”
「本当に?痛いところないですか?」
“大丈夫、大丈夫。”
「念のため治癒をかけましょう。どこ殴られましたか?」
“鼻先だけど…僕頑丈だし、あの程度痒い程度だよ?”
「虫刺されも立派な怪我ですよ」
“むぅ…もう用事は終わり?”
「はい、もう終わりです。次来るのは一週間後ですね。」
“なら早く空飛んで帰ろ。みんな待ってるよ”
「ふふ、そうですね」
さ、今日は終わりです。また明日も頑張りましょう。明日はえっと…デザインコンテストでしたね。素材はまだありますし…飾りが少し減ってましたね。飾り用の素材の確認して少ないものを補充しに行きましょう。一応コンテストはお昼からですからね。朝から大忙しですね。
服のコンテストは作る人、作られた服を着る人、それを評価する人の3人の役割があります。
まあ全部魔物なのですが。
評価するのは全員でだし、蜘蛛の子供達の腕前が上がりすぎてもうヒトの作ったものが低ランクに見えるんですよね。縫い目とか見えないくらい細くて頑丈な糸を紡いで縫いこんでいますから裏表が時々わからなかったりしてます。
ほつれたりすることもなかなかないでしょう。
今回もたくさん出来ました。一体一作品ではないですからね。みんな楽しく量産して好きなように装飾していきます。
服飾が趣味な魔物が今回で増加しましたので、これで大量購入があってもしばらくは大丈夫でしょう。
「明日はお客様が来られます。皆さん虐めるのはダメですからね?」
一応ほぼ全員がいるこの場を借りて念押しです。全員から返事が返ってきたので、このまま晩御飯といきましょう♪
「明日は何作りましょうかねぇ」
何がいいと言われてもいいように仕込んでおきましょう♪
ヒトがこんな奥深くにきてくれるようなことそんなにないですからね。
腕によりをかけますよっ!
お客様用に建てた家のお掃除をして、簡素な部屋を飾っているとあっという間に時間が経ってしまったようで、空に5つの反応。
え?なぜ分かるかですか?空に帰っていったのですから空から来ると踏んで、魔力の膜を張っていたのです。
その膜はその人たちに不快な感覚には陥らないように隠蔽魔法もかけています。
それに何かが触れたらすぐに私が分かるというだけの膜ですから。まあ、簡易的な結界ですね。弾く役割は持たず、何かを知らせるってだけで作っただけですが。
「ようこそ、いらっしゃいました。」
さあ、お客様をお出迎えしましょう。
「…呼びかける前になんで来たってわかった?」
「嗚呼、魔法を張っていたのです。すぐにお出迎えできるように。」
「…ほらな?」
「信じられませんが…本当に人がいましたね…」
「しかもすんなり奥に入れちゃってる…」
「あのあのあの!空から見えたのですが!鍛治場が見えました!他にも謎施設が!見せていただきたいのですが!!」
「………ふむ」
ウィルさんが連れてこられたお客様の中に1人元気な方がいらっしゃいますね。他の方々も、家を見られて驚かれています。
「見学は構いませんが…先にお名前をお伺いしても?私は人族で、この森の魔女。アンと申します」
「初めまして!魔族のケヴィンです!料理人兼鍛治士をしております!」
「いきなりなつきすぎですよ。吸血族のセルマと言います。」
「騎士のヤンガだよ~。魔族と猫族のハーフなんだ~」
「ルドと言います。」
1人だけ距離があるような…まあ人それぞれですね。
「よろしくお願いします」
「それで今日も…その茶会はあったり…」
「今日は皆様が来ることとなっていましたのでお休みです。お昼とお夕食の方ももしよろしければご馳走いたしますよ。それまでは施設の見学をされますか?」
「いいの?いいの??陛…がふ!」
「へい?」
「なんでもねーなんでもなねぇ!…ルド、ちょっとケヴィン落ち着かせてもらえるか?」
「………まったく…ケヴィン、連れてきてもらった時の約束を忘れたら…罰が待ってますよ」
「は!!ご、ごべんなじゃい!!」
何かお約束があるみたいです。一気に元気がしぼんでしまいました。
「ふふ、えと…どんなお約束かはわかりませんが、元気あることが罪なことはありませんから。そんなに落ち込まないでください。」
「ふおぉ…魔女さん優しい!」
「いえいえ。元気なのはいいことですから。それで、ケヴィンさんが興味を持たれている鍛治場からでよろしかったでしょうか?」
「…ちなみに何があるんだ?てか、増えてないか?」
「あの建物は皆様をお出迎えするために建てた…いわばお客様向けの別荘ですね。」
「は?!5日で建てたのか?!…あ、そうか。魔物の力を借りれば…」
「あ、いえ。ご近所さんの力を借りずとも家なんてすぐ建ちますよ?」
「へ?」
「………まあ、話が進みません。施設は鍛冶場からで構いませんので貴方の案内してもいいと言える場所のみお願いします。」
「わかりました。」
じゃあ最初は鍛冶場ですね。
鍛冶場は溶鉱炉を作って、屋根をつけただけなのでほとんど外みたいなものです。
陶器も挑戦してみたいですね。今度また竃を作りましょうか。
「あの!他にも人はいるのですか!」
「いえ、私だけですね。」
「!!ここ何度か使われていますよね!作品を見たいのですが!」
「作品ですか…えっと。見るのは出来ます。ですが譲ることも売ることも不可能でよろしいですか?」
「あ!僕は見れればいいんで…すが…」
1人の判断で勝手に受け答えしてはならないというのは守れるようですね。
「性能によるな…」
「ちなみに鉱石類ってどこかで調達できるんですか?…嗚呼街に行ってるって言ってましたね。」
「あ、いえ。鉱石はゴーレム達が近くの鉱山からある程度集まったら持ってくるんです。」
「近くの…って、秘境に鉱山があったなんて」
「ゴーレムの住処…」
「どんなものを持ってきますか?」
「そうですね…鉄、青銅、ミスリル、金、銀…」
「基本的なもののようで…」
「あと、アダマンタイトと、属性結晶、鉱石ではないですが、古い魔物の骨とか、魔導石とかもありましたね…」
「「は?!」」
「そ、それらで作った物がどこかあるということですよね!」
「はい、一応倉庫に」
見たい!見たい!という気持ちが漏れ出てますね。ケヴィンさん。
「売るおつもりは無いと。」
「えぇ、ありません。」
「作るだけ作って放置ですか?」
「私の自己満足で作ってみたものばかりですから。」
「物は使われてこそ力を発揮すると思いますが」
「人や私の友人達を傷つけることになりそうなものを世に解き放つ訳にはいきません。」
「…友人というのは魔物で良かったでしょうか」
「ここに住む魔物はほとんど家族のようなものですから」
「…」
「ルドが口論に負けた?」
「いやまだだ。」
何か自信ありげに話していますが、ルドさんとの会話は続くようです。
「貴方も魔物を倒して糧にして生きていますよね。それに武器を使用しないのですか?」
「私その才はないもので、武器は使っておりません。」
「武器でなくとも魔法で魔物を倒したりするでしょう?」
「確かに魔物を倒すことに関しては反対しません。私もこの秘境から出たら魔物を倒します。それらは生きるために私を襲いますから。しかし、ここにいる彼等は私を襲いません。私からわざわざ仕掛けに行くこともありません。私は敵意ある者から身を守る程度にしか戦いません。他の人にどうこういうわけではありませんが、それが私の生き方です。私の作った武器で私の友人達がもし傷ついたとき、それは私が傷つけたも同然だと解釈します。なのでお売りすることは絶対にできません。」
「…………………くっ」
「今負けたな」
「すごーい」
商人なめたらいけませんよ。口論に慣れていくのがサガですから。
「その様子だと見たら欲しいといいそうですね。販売するというのはいつか私の気持ちが変わればするかもしれません。私は気まぐれですから。」
「!」
「と言っても、売るとしたらミスリルまででしょう。それら以外の武器は販売しません。今回ミスリルまででしたらお見せしましょう。それでもよろしいですか?」
「………………ウィル様に任せます」
「お前でも無理か…ま、仕方ないな。ケヴィンがもう我慢の限界来そうだから、見せてもらえるか。」
「はい、こちらで少々お待ちください。」
待ってる間の魔族達。
「はぁ…」
「ルドお疲れ」
「ウィル様…彼女は何者ですか」
「知らん。だが粗相はするな?この森の頂点に立つ存在だろうから隷属魔法で攫うのも無しだ。」
「…何故ですか」
「頂点だからだ。下のやつらが騒げばこの人数じゃどうしようもない。」
「下…」
「この森には少なくとも10以上の最強種が集まっている。」
「じゅ?!」
「全世界が敵に回ったとしても彼女は生き残るだろう。」
「…………ヤンガ、彼女が行ってるという街での調査についてもう一度」
「商人として通ってるようだにゃ。呼び名は天馬の魔女商人。空飛ぶオーガホースを乗りこなし、謎の職人を複数抱え持ちながら彼女自らも強いということでもう人気者にゃ」
「謎の職人…て、彼女自身ですよね?」
「職人は別にいるの方が抱え込まれないと見込んででしょう」
「オーガホースって空飛ぶの?」
「いや飛べん…てか飛んだら世界が阿鼻叫喚だ。」
「ならどういう仕組みでしょう?」
「彼女自身の強さがまだわからんからな…下手な行動はするなよ。」
「「「「はっ」」」」
魔法袋をいくつかもって戻ると、ケヴィンさんが素早く反応して、目の前でお座りします。
「魔女さん早く早くっ」
「ふふ、今並べますね~」
武器を並べていると黒い鳥が1匹、柵の上に止まった。すぐに気づいたのはヤンガさん。
「…わっ…鳥?」
「ん?おや、ビランさんどうされましたか?」
カー(魔王についての報告を)
「……今手が離せないので…」
『念話でお願いします』
念話について注釈
『はっ。まず、我らはカグチ等と共に魔王を探しておりました。』
はい。頼んでいましたからね。
『魔王の存在はすぐに確認でき、名前、身体能力の高さを調べておりました。結果的に申しますと、魔王は魔女様より下です。よって隷属魔法は反転させることとなるでしょう。』
反転ですか?
『はい。弱き者が、強き者に向けて力を見誤り隷属魔法を行うと起きるのです。そしてその魔王の名前ですが。』
はい。どうしました?
『まず、今回の魔王は魔族と龍族のハーフで
名はドラグニル・サカイ・ハルトという名前で…よく偽名を使い外に出かけていまして。』
はい?偽名?外に出かける?
『その名が、ウィリアムです』
……ウィリアム……ウィル……
「ウィルさん」
「お?なんだ?」
「貴方、魔王だったんですか?」
その言葉に近くの人が顔を引きつらせながらなぜそんなことをしたのか問いかけます。
しかし、当の本人は、周りのおかしな様子に気づかず、陽気に答えていました。
「…お、オーガホース?!な、なんで手を出し…」
「躾のなってない魔物だぞ?どんな奴だよあの主人サマは」
「ちょっ!…あ。」
「…失礼ですが。」
「んあ?」
「オーガホースに殴りつけたと聞こえました」
私はギルドの入り口に立つその人に近づき、確認をとりました。もしかしたら、ラト君がご迷惑をおかけしたのかもしれません。
「ああ!あれは最高だったな。野良でいると厄介な最強種もあんなにおとなしくペットにされてやがってよ。普段は近づくことすら危険な奴らだ。それが厩舎にいたんだぜ?殴らなきゃ損だろ!」
殴らなきゃ損…ですか?最初の言葉と違うようですね。
「…睨みつけられたから殴ったと聞きました。その理由はただのこじつけというわけでよろしかったでしょうか?」
私は今どんな顔をしているのでしょう?
ルーマさんが引き攣り震えているのは私のせいではないですよね?
「嗚呼そーさ。少し目があっただけだがそれがどうしーー」
リーダーと思しき存在はギルド受付に頭をめり込ませられました。
誰がやったなんて見たらわかります。
私です。
軽く…いえ、少し力を入れました。
適当な理由をつけ、大切な友人を傷つけた。怒りをそのままぶつけてしまったというところでしょうか。
「私も今、虫の居所というものが悪くなりまして、ちょうど目があったあなたを殴りたくなった。あなたは私の友人に同じことをしたのだから文句は言わせません。」
まあ、聞こえてないでしょう。
すぐに気分を切り替え、ルーマさんに謝罪と受付の修理費用をお渡しする。
「すみません、受付を壊してしまいました。あまりカッとなることってないのですが。次からは地面にします…これ修理費用として使ってください。それではまた7日後に来る予定ですのでその時に。」
パーティメンバーさん達が唖然と見守っていましたが、道を塞ぐ立ち位置でした。目の前に移動すると道を開けてくれたので軽く会釈をして、厩舎に急ぎます。
「…ラトくん!大丈夫ですか?」
“ん?どうしたの?大丈夫だよ?”
「男性に殴られ気絶したと聞いて慌ててきました!」
“嗚呼、アレね。なんかきたけど気絶までしてないよ。構ったら負けな気がして殴られて目をつぶってただけ”
「本当に?痛いところないですか?」
“大丈夫、大丈夫。”
「念のため治癒をかけましょう。どこ殴られましたか?」
“鼻先だけど…僕頑丈だし、あの程度痒い程度だよ?”
「虫刺されも立派な怪我ですよ」
“むぅ…もう用事は終わり?”
「はい、もう終わりです。次来るのは一週間後ですね。」
“なら早く空飛んで帰ろ。みんな待ってるよ”
「ふふ、そうですね」
さ、今日は終わりです。また明日も頑張りましょう。明日はえっと…デザインコンテストでしたね。素材はまだありますし…飾りが少し減ってましたね。飾り用の素材の確認して少ないものを補充しに行きましょう。一応コンテストはお昼からですからね。朝から大忙しですね。
服のコンテストは作る人、作られた服を着る人、それを評価する人の3人の役割があります。
まあ全部魔物なのですが。
評価するのは全員でだし、蜘蛛の子供達の腕前が上がりすぎてもうヒトの作ったものが低ランクに見えるんですよね。縫い目とか見えないくらい細くて頑丈な糸を紡いで縫いこんでいますから裏表が時々わからなかったりしてます。
ほつれたりすることもなかなかないでしょう。
今回もたくさん出来ました。一体一作品ではないですからね。みんな楽しく量産して好きなように装飾していきます。
服飾が趣味な魔物が今回で増加しましたので、これで大量購入があってもしばらくは大丈夫でしょう。
「明日はお客様が来られます。皆さん虐めるのはダメですからね?」
一応ほぼ全員がいるこの場を借りて念押しです。全員から返事が返ってきたので、このまま晩御飯といきましょう♪
「明日は何作りましょうかねぇ」
何がいいと言われてもいいように仕込んでおきましょう♪
ヒトがこんな奥深くにきてくれるようなことそんなにないですからね。
腕によりをかけますよっ!
お客様用に建てた家のお掃除をして、簡素な部屋を飾っているとあっという間に時間が経ってしまったようで、空に5つの反応。
え?なぜ分かるかですか?空に帰っていったのですから空から来ると踏んで、魔力の膜を張っていたのです。
その膜はその人たちに不快な感覚には陥らないように隠蔽魔法もかけています。
それに何かが触れたらすぐに私が分かるというだけの膜ですから。まあ、簡易的な結界ですね。弾く役割は持たず、何かを知らせるってだけで作っただけですが。
「ようこそ、いらっしゃいました。」
さあ、お客様をお出迎えしましょう。
「…呼びかける前になんで来たってわかった?」
「嗚呼、魔法を張っていたのです。すぐにお出迎えできるように。」
「…ほらな?」
「信じられませんが…本当に人がいましたね…」
「しかもすんなり奥に入れちゃってる…」
「あのあのあの!空から見えたのですが!鍛治場が見えました!他にも謎施設が!見せていただきたいのですが!!」
「………ふむ」
ウィルさんが連れてこられたお客様の中に1人元気な方がいらっしゃいますね。他の方々も、家を見られて驚かれています。
「見学は構いませんが…先にお名前をお伺いしても?私は人族で、この森の魔女。アンと申します」
「初めまして!魔族のケヴィンです!料理人兼鍛治士をしております!」
「いきなりなつきすぎですよ。吸血族のセルマと言います。」
「騎士のヤンガだよ~。魔族と猫族のハーフなんだ~」
「ルドと言います。」
1人だけ距離があるような…まあ人それぞれですね。
「よろしくお願いします」
「それで今日も…その茶会はあったり…」
「今日は皆様が来ることとなっていましたのでお休みです。お昼とお夕食の方ももしよろしければご馳走いたしますよ。それまでは施設の見学をされますか?」
「いいの?いいの??陛…がふ!」
「へい?」
「なんでもねーなんでもなねぇ!…ルド、ちょっとケヴィン落ち着かせてもらえるか?」
「………まったく…ケヴィン、連れてきてもらった時の約束を忘れたら…罰が待ってますよ」
「は!!ご、ごべんなじゃい!!」
何かお約束があるみたいです。一気に元気がしぼんでしまいました。
「ふふ、えと…どんなお約束かはわかりませんが、元気あることが罪なことはありませんから。そんなに落ち込まないでください。」
「ふおぉ…魔女さん優しい!」
「いえいえ。元気なのはいいことですから。それで、ケヴィンさんが興味を持たれている鍛治場からでよろしかったでしょうか?」
「…ちなみに何があるんだ?てか、増えてないか?」
「あの建物は皆様をお出迎えするために建てた…いわばお客様向けの別荘ですね。」
「は?!5日で建てたのか?!…あ、そうか。魔物の力を借りれば…」
「あ、いえ。ご近所さんの力を借りずとも家なんてすぐ建ちますよ?」
「へ?」
「………まあ、話が進みません。施設は鍛冶場からで構いませんので貴方の案内してもいいと言える場所のみお願いします。」
「わかりました。」
じゃあ最初は鍛冶場ですね。
鍛冶場は溶鉱炉を作って、屋根をつけただけなのでほとんど外みたいなものです。
陶器も挑戦してみたいですね。今度また竃を作りましょうか。
「あの!他にも人はいるのですか!」
「いえ、私だけですね。」
「!!ここ何度か使われていますよね!作品を見たいのですが!」
「作品ですか…えっと。見るのは出来ます。ですが譲ることも売ることも不可能でよろしいですか?」
「あ!僕は見れればいいんで…すが…」
1人の判断で勝手に受け答えしてはならないというのは守れるようですね。
「性能によるな…」
「ちなみに鉱石類ってどこかで調達できるんですか?…嗚呼街に行ってるって言ってましたね。」
「あ、いえ。鉱石はゴーレム達が近くの鉱山からある程度集まったら持ってくるんです。」
「近くの…って、秘境に鉱山があったなんて」
「ゴーレムの住処…」
「どんなものを持ってきますか?」
「そうですね…鉄、青銅、ミスリル、金、銀…」
「基本的なもののようで…」
「あと、アダマンタイトと、属性結晶、鉱石ではないですが、古い魔物の骨とか、魔導石とかもありましたね…」
「「は?!」」
「そ、それらで作った物がどこかあるということですよね!」
「はい、一応倉庫に」
見たい!見たい!という気持ちが漏れ出てますね。ケヴィンさん。
「売るおつもりは無いと。」
「えぇ、ありません。」
「作るだけ作って放置ですか?」
「私の自己満足で作ってみたものばかりですから。」
「物は使われてこそ力を発揮すると思いますが」
「人や私の友人達を傷つけることになりそうなものを世に解き放つ訳にはいきません。」
「…友人というのは魔物で良かったでしょうか」
「ここに住む魔物はほとんど家族のようなものですから」
「…」
「ルドが口論に負けた?」
「いやまだだ。」
何か自信ありげに話していますが、ルドさんとの会話は続くようです。
「貴方も魔物を倒して糧にして生きていますよね。それに武器を使用しないのですか?」
「私その才はないもので、武器は使っておりません。」
「武器でなくとも魔法で魔物を倒したりするでしょう?」
「確かに魔物を倒すことに関しては反対しません。私もこの秘境から出たら魔物を倒します。それらは生きるために私を襲いますから。しかし、ここにいる彼等は私を襲いません。私からわざわざ仕掛けに行くこともありません。私は敵意ある者から身を守る程度にしか戦いません。他の人にどうこういうわけではありませんが、それが私の生き方です。私の作った武器で私の友人達がもし傷ついたとき、それは私が傷つけたも同然だと解釈します。なのでお売りすることは絶対にできません。」
「…………………くっ」
「今負けたな」
「すごーい」
商人なめたらいけませんよ。口論に慣れていくのがサガですから。
「その様子だと見たら欲しいといいそうですね。販売するというのはいつか私の気持ちが変わればするかもしれません。私は気まぐれですから。」
「!」
「と言っても、売るとしたらミスリルまででしょう。それら以外の武器は販売しません。今回ミスリルまででしたらお見せしましょう。それでもよろしいですか?」
「………………ウィル様に任せます」
「お前でも無理か…ま、仕方ないな。ケヴィンがもう我慢の限界来そうだから、見せてもらえるか。」
「はい、こちらで少々お待ちください。」
待ってる間の魔族達。
「はぁ…」
「ルドお疲れ」
「ウィル様…彼女は何者ですか」
「知らん。だが粗相はするな?この森の頂点に立つ存在だろうから隷属魔法で攫うのも無しだ。」
「…何故ですか」
「頂点だからだ。下のやつらが騒げばこの人数じゃどうしようもない。」
「下…」
「この森には少なくとも10以上の最強種が集まっている。」
「じゅ?!」
「全世界が敵に回ったとしても彼女は生き残るだろう。」
「…………ヤンガ、彼女が行ってるという街での調査についてもう一度」
「商人として通ってるようだにゃ。呼び名は天馬の魔女商人。空飛ぶオーガホースを乗りこなし、謎の職人を複数抱え持ちながら彼女自らも強いということでもう人気者にゃ」
「謎の職人…て、彼女自身ですよね?」
「職人は別にいるの方が抱え込まれないと見込んででしょう」
「オーガホースって空飛ぶの?」
「いや飛べん…てか飛んだら世界が阿鼻叫喚だ。」
「ならどういう仕組みでしょう?」
「彼女自身の強さがまだわからんからな…下手な行動はするなよ。」
「「「「はっ」」」」
魔法袋をいくつかもって戻ると、ケヴィンさんが素早く反応して、目の前でお座りします。
「魔女さん早く早くっ」
「ふふ、今並べますね~」
武器を並べていると黒い鳥が1匹、柵の上に止まった。すぐに気づいたのはヤンガさん。
「…わっ…鳥?」
「ん?おや、ビランさんどうされましたか?」
カー(魔王についての報告を)
「……今手が離せないので…」
『念話でお願いします』
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『はっ。まず、我らはカグチ等と共に魔王を探しておりました。』
はい。頼んでいましたからね。
『魔王の存在はすぐに確認でき、名前、身体能力の高さを調べておりました。結果的に申しますと、魔王は魔女様より下です。よって隷属魔法は反転させることとなるでしょう。』
反転ですか?
『はい。弱き者が、強き者に向けて力を見誤り隷属魔法を行うと起きるのです。そしてその魔王の名前ですが。』
はい。どうしました?
『まず、今回の魔王は魔族と龍族のハーフで
名はドラグニル・サカイ・ハルトという名前で…よく偽名を使い外に出かけていまして。』
はい?偽名?外に出かける?
『その名が、ウィリアムです』
……ウィリアム……ウィル……
「ウィルさん」
「お?なんだ?」
「貴方、魔王だったんですか?」
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