魔女様は平和をお望みです

yukami

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13.魔女様は救助隊長?

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「ルナオーガン、本当についてくるんですか?」
【嗚呼、当たり前だ。】
「その姿で?」
【変な虫がついたら困るのでな】

1日過ぎて4日目になってしまいましたが、今日は行かないと心配をかけてしまいます。
今日は街に行きますと伝えたら人型で私の作った刀を腰にさしてルナオーガンがいつでもいける態勢で待ってました。

「龍に戻ったらダメですよ?」
【うむ】
「喧嘩もダメです」
【うむ】
「…お酒買うのダメですよ?」
【なぬ?!】
「それ目当てですね…」
【ち、違うぞ!それはついでだ!】
「まったく…わかりました。流石にお酒を極めて作ろうとは思いませんし、いいこととします。」
【ほっ…】

本当にお酒好きですね。弱いと知ってる私から見たら呆れたものです。
じゃあ、ラトくんに乗って…今日はルナオーガンさんだけですね。

「ルナオーガンさんは…」
【ふむ…長くないか?愛称…その、短くして呼んでもよいぞ?】
「ルナオーガンさんをですか?…そうですね…ルナと呼んだら女の子みたいですし…オーガンでよろしいですか?」
【うむ、オーガンと呼ぶのだ。】
「はい。」

オーガンは空を飛ぶのかと思ったら私を後ろから支えるようにラトくんの上に乗ります。

「…あの、オーガン?もう支えなくても大丈夫ですよ?」
【万が一だ。本来なら今日も眠ってて欲しいくらいだぞ。】
「1日遅れたので、念のためです。何かあったと心配かけていたら悪いですから。」
【まあ、仕方ない。だがしばらくは料理は私のだけしか口にするな。】
「オーガンの料理は美味しいですから。楽しみです」
異世界料理の味が極められています。私専門料理人だそうです。
私の料理も好きだと、料理を教えて代わり番こで料理作りあってたりしたんですよね。

街に着くと、オーガンの様子が変化します。
【…】
すごく険しい顔になっています。
「どうしました?」
【この街にあの国の人間がいる。】

あの国の人間…
もしかしてヒロトでしょうか?

「その子はいいです」
【だが…】
「あの国で起きたことを知らないでしょうし、あの子はあの国を良く思ってるわけではありません。それに転生者です。私、転生者の方の力になれたらいいかなって思うんです。」
【ふむ…しかし何があったかは理解してもらわねばならん。よいな?】
「はい、そうですね。」

私がレヴィさんとお話しする間探して話すというので、久々に1人ですね。

「こんにちは。1日ずれてしまい申し訳ないです。」
「おぉ!アン様、何かあったのではと少し心配しておりました。」
「心配おかけしました。もう大丈夫ですので」
「…何かあったので?」
「え?」
「疲れたお顔です。少し休まれていきますか?」
「ふふ、護衛にも休めと言われたところだったので…大丈夫です。リストをもらって少し納品したら今日は帰りますよ。」
「今日もカグチ様もいらっしゃるので?」
「いえ、今日は別の人で街に用事があるということで離れているんです。ふふ、護衛の意味ないですよね。」

「別…種族はなんでしょう。」
「え?」
「……こちらで勝手に推測していたのですが、アン様はとても強い。そして周りの方も同様にお強い。隠れ里のようなものがあり、種族は多種多様…なんてことを考えてみたりしまして…勝手に申し訳ない。」
「ふふふ、そういうことでしたか。半分あってますね。人があまりいない場所ではありますから。今日の連れは龍人です。」
「りゅ!?」
「お酒好きなので買ってあげたいのですが、何かいいものはありますか?」
「えぇ!もちろんです。いくつか品をお持ちしましょう。」

龍人族は酒豪ですから。と納得していただき、どこかに行きます。私の連れはお酒は好きですが弱いんですよね。ほどほどに飲ませることにしましょう。少し椅子に深く座り、ほっと一息つきます。
しばらく待っていると、受付の方が騒がしくなりました。オーガンさんが来たのでしょうか?

部屋を出て、少し様子を伺います。

残念ながら予想していたオーガンさんではありませんでした。
しかし私のことを呼んでいるようです。

「こちらに、オーガンという方のお連れ様がいらっしゃるとお聞きしました!すみません!お願いします!息子を助けてください!家が火事で!二階に取り残されてて!」

なんと!それはいけません!お母様のようですが、オーガンだけで片付けられそうですよ?ひどい火事なのでしょうか?呼んでいるのを放置するのも悪いですね。すぐに駆けつけます。

「私がオーガンの連れです。火事はどちらでしょうか」
「えっ…いや、でも…」
「火事なんですよね?どこですか!案内をお願いします!」
「……は、はい!!」

私を見たときのがっかり感強く感じ取れました。屈強な戦士とかもっと頼りがいのある魔道士を想像していたんでしょうか。
すみません、ひょろくて。

女性についていくと轟々と燃え上がっている家が見つかります。
下から井戸水をかけて消化活動に励む人たちがたくさん。その中にオーガンさんも見つけます。

「オーガンさん!」
【アン、来たか!水魔法と救助を頼む!】
あ、そういえば適正なかったですね。そんなに得意というわけでもなかったです。だから呼んだのですね。

「わかりました!」
家の入り口は轟々と燃え盛る炎に包まれています。そこの少し潜ればなんとか入れそうなところに近づきます。

「おい!何してる!」
男の人の声を無視して、中に入ったところでその入り口が塞がれてしまいました。

「一階の柱が崩れ落ちたら終わりですね。急いで見つけましょう。」

先に鎮火してしまって、脆い柱が崩れたら子供は無事では済みません。先に見つけましょう。柱の位置を確認したら補強をしつつ一階を隈なく調べます。私としたことが…子供の名前を聞いておくべきでした。

「誰かー誰かいませんかー」
二階になんとかたどり着きました。

二階のとある部屋が少し不思議な感じになっていました。
水の膜で覆って…火の手から逃げているのですね。魔法が使えるお子さんのようです。

「ここに誰かいませんか?」
「……!だれ!たすけてください!」
「中に入ってもいいですか?」
「ひはだいじょーぶですか!」
「まだ階段のところで止まっていますから。とりあえず入りますよ」
「あ、いまあけたらだめです!みずがとまらないんです!」
水がとまらない?…魔力を辿り状況を把握しました。この火事を消そうとしたのか、操りきれず暴走している。部屋に水が溜まり、少年はギリギリ息ができているけれど溺れかけている。
そろそろ部屋が水で埋まってしまいますね。


「安心してください。すぐに助けます」
まずは水の支配を奪いましょう。そしてこの水の量を減らさないと一階の柱が持たず、彼が怪我をしてしまう。

結界で部屋を覆い、水が溢れないようにします。
そして呼吸を整えて中に入り、溺れかけている少年に息ができるように結界を作ります。

「ぷはっ!はぁっはぁっはぁっ」
『そのままで。』
念話で指示をして、息を整え始めている子供を気にしつつゆっくりと床に下ろして、動かないように伝える。その間に水を凝縮させていきます。

「…みずが…」
私も息ができるようになったら、少年の結界も解き、凝縮した水の塊を片手で維持しながら少年に怪我がないかを確認します。魔力暴走もいつの間にか治っていますね。

「ないです」
「この水、ちょうどいいので借りますね。」
半分に分けて1つは窓から上へ打ち上げ、1つは階段下に向けて一階を包み込むように形を変えて火を消していく。

「うわぁ」
ゼリーのような見た目の水を維持したまま、少年の手を取ります。
「ここから下に行きましょう」
「え。でもみず…」
「大丈夫、さっきも息ができたでしょう?」
「……うん」
顔の位置に結界を展開させ、軽い水中散歩になりました。

二階を支える大事な柱をチェックして、脆そうなところには土魔法で更なる補強していきます。

「…ほわぁ」
「これで家は崩れないからね。」
「うん!」
崩れた入り口も水流を操作して避けて、外に出ます。

「はい、到着」
「すごーい!」
「リューゴ!」
「あ、おかーさま!」

感動の再会というのに遭遇した後、一階を包んでいた水をもう一度手元に戻し上へ打ち上げます。
最後はおまけですよ。

【アン、お帰り】
「はい、ただいまです」
【服濡れてるぞ、ほら】

熱風が包み込んで、服が一瞬で乾いてしまいます。オーガンは火と風と天候が得意ですから。
急に伝言なく出てきましたから、レヴィさんがお探しかもしれません。早く戻りましょう。

「まって!」
「はい。なんでしょう?」
「あの!ぼくのししょーになってください!」
「師匠ですか?んー…どうしましょう。」
無理ではないです
最近魔法の伝道師してましたし…
【なってやれば良いのではないか?この街に来るときに見てやればいい。】

「ぼく、リューゴって言います!お願いします!」
「はい、よろしくね。…嗚呼、そうだ。お母さんに家が火事になったとしても暗くならないで空を見上げてみてって伝えてくれるかな?」

「え?」
「お母さんに伝えてから、君もみてね。」

オーガンさんが空を見上げてほぅと喜んでいたので、恐らく彼らも喜んでくれるだろう。

「君らの生活に幸あらんことを」
早く空を見たいという一心で、親御さんのところに戻っていく少年。それを伝えたのであろう親子が一緒に空を見上げる頃、私はオーガンさんを連れて商業ギルドに戻っていった。


その空には青空と太陽と先ほど空に解き放った水で作り上げられた見事な虹が家から架けられていた。不運に見舞われた親子に幸せが訪れるようにと彼女が言っていたことを思い出した少年はこれからの事に不安を感じる事なく母親と共に見惚れていた。

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