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14.こちらをご覧ください
しおりを挟む火事が起きて連れが私を呼んで言伝もなしに出てきてしまったことをレヴィさんに謝ります。
「すみません、急に何も言わずに出ていってしまい」
「いえ、騒ぎを見ていた者達から聞きましたので…火事はどうなりましたか?」
「はい。消してきました」
「嗚呼…消して………アン様がでしょうか。」
「ええ、連れは水魔法の適性を持っていなかったので私を呼んだのです。あ、この人が先ほど話した今日の護衛のオーガンです。」
【よろしくな】
オーガンさんの軽い挨拶を終えた後、
「……アン様は魔法が扱えるのですね。」
「えぇ」
「…その、答えたくなければよろしいのですが…属性はいくつ…」
コンコンコン
レヴィさんが何か聞いてくる途中で扉をたたぬ音が聞こえてきました。
おや、お客様のようです。
「…誰ですか?」
「マーレンです。受付に領主の奥様が来られておりまして…アン様に取次をと…」
「…は?……確認してきますので少々お待ちください。」
「はい」
領主の奥様にいつお会いしましたっけ?
はて?
【先ほどの…親子ではないよな?】
「あー…そうなのかもしれませんね…」
その可能性はありますね。見晴らしのいい場所にあった建物だったのを覚えています。
【ふむ、恩ができたということだろうな】
「さらに師匠さんですからねぇ」
【アン、お礼を渡されたらどうするのだ?】
「受け取りませんよ。ご贔屓にしてくださいって断ります。」
しばらくして、レヴィさんが戻ってきた。
やはり先ほどの親子がそうなのだという。どうしても話があると帰られないそうなので別室で待機してもらってると言われる。
「どのような内容かは?」
「それが、アン様とオーガン様に直接と」
オーガンと顔を見合わせつつ、話は聞くだけ聞くことに。
案内された部屋にはリューゴ少年もいた。
「先程は本当にありがとうございました!」
「ありがとーございました!」
「いえいえ、怪我人が出なくてよかったです」
【そうだ、命があればどうとでもなろう。】
何度もありがとうと頭を下げるのをやめず、とりあえず落ち着いてもらう。
「すみません、取り乱してしまい…」
「いえいえ。あの家は治せそうですか?」
「あの家は別荘だったもので…とりあえず夫には連絡してすぐこちらに来ると言われたのですが…今は宿に」
まあ、崩れないように補強しただけだし、中は炭ですしねぇ。2回は無事でしたが、一階が不安定ですからね。建て直してからでなければ住むことは難しいでしょう。
「とりあえず、あの家は崩して新しく建ててもらうにしても…」
「ぼく、あそこがいい…」
「リューゴ…」
「何か訳が?」
話を聞くとお母さんの祖父母の家だったらしく思い出が詰まってるそうな。
部屋も全部焼けてしまったけど。あの家がいいそうな。
「じゃあ、一階を改装しましょう」
「でも、私達はそれ関係に疎くて…全部夫に任せてましたし…」
「私に2日くださいますか?材料取ってくるので。」
【3日にしてくれ】
え…オーガンさん、そんなこと言わず。
【お前は1日休めといってるだろうが】
「むむ。」
「え…っと…材料を調達してくれても…大工が」
「大丈夫です。任せてください」
「ぼくもなにかおてつだいします!」
木を磨くのを魔法の練習にしてもいいですね。
「じゃあお仕事作っときますね」
「はいっ」
「リューゴ、どういうこと?」
「ししょーになってくださいっておねがいしたの」
「まあ!何から何まで…ご迷惑ではありませんか?」
「この街に通っていますからこの街にいる間のみと限らせてもらいます。それでいいとの事なので。この街にいる間は指導しますよ。」
「ありがとうございます。このご恩は必ず。」
「うちの扱っている商品を贔屓にしていただければ幸いです。」
「商品…商人の方だったのですか?冒険者ではなく?」
「はい、オーガンさんは私の護衛で、私はいろんな商品をこの街に納品しているんです。」
「…リスト確認させていただいても?」
「えっ。結構ありますし…今決めなくてよろしいですから…ね?」
「拝見させていただきますわ。」
女性の目になりましたね。ドレスとか写真付き又はイラスト付きのカタログにしてもいいかもしれません。ドレスに限らずですね。
「見にくいと思いますので…少しお時間もらっても?」
「えぇ、構いませんが…」
「少しお待ちください。」
時魔法でそこから時を止めます。
【………アン、それは少しとは言わんぞ】
「む、オーガンさんも範囲内だったはずなのに。」
【魔力の色を見てやると思ったからな】
「むむ…まあ本当に少しですけどね。」
魔法袋の中身を取り出して、紙に描写していく。
値段も添えて、種類順にページを作り見やすくしてカタログを作成。簡易的なものを用意しました。流石に全部というわけにはいかないですね。
こんな感じかな。
時魔法も解除して、魔法袋からそれを取り出す。
「こちらは私向けですから、奥様にはこちらがよろしいかと。」
「どう違うの?」
「こちらは顧客用となります。商品の絵を描いて金額を記入してありますので見やすいでしょう。私の方は名前だけですから。物が見たい場合はおっしゃってくださればすぐに出しましょう。」
「まあっ!こんなに見やすいリストは今までなかったわっ。沢山あるのね…あら、服飾…」
服飾に目が行って真剣な表情で吟味始める奥様。
女性はそこに目が行っちゃいますよねぇ。
「……かたろぐだ」
おや?カタログをご存知なのですね。まあ、名前からして、彼も恐らくですが転生者ですよね。
「リューゴくんも見ますか?興味があったら言ってくださいね。」
「…うん!」
「…あ、そうだ。リューゴくんはこっちも興味が出るかな」
「え?」
もう触れることが叶わないと思っていたもの。転生者たちが欲しがりそうな魅惑の商品たち。
「こ、これは…!!」
あるんですか!あるんですね?!と目を輝かせる少年につい吹き出してしまう。
「ぷふっ…」
「あ…うぅ…」
やられたという顔になりましたね。
「家に欲しいものあったら言ってくださいね。」
「チェックしときます!」
特別メニューですから、料金はひとつだけ初回タダですと伝えると高いやつを選ぶかアレを選ぶかと悩ましげな様子。
結局、アレになったみたいです。
「いま欲しいです」
「ふふ、いいですよ。これからもご贔屓に」
魔法袋からそれを取りだし渡す。
ソレとは、漫画である。
「かみはそんざいした」
「私が覚えている範囲ですけどね。その先はわからないです。」
「これで後は…炭酸とかあれば。」
こそっと、カタログ食材カテゴリーを開く。
「へ?………やすいっ」
「お小遣いの利用は計画的にね?」
「ふぁい!…これでひとつ!」
「はい。」
引きこもり、もしくは隠れオタク勢確定ですね。
「これでさらにまほーのしどーもしてくれるとか…あのかみよりかみだ。」
『ちょっとー!私の座を狙うとか!アン…恐ろしい子!』
そんな座いりませんね。速攻返却します。
リューゴ少年とはこれを機にさらに仲良くなりました。飲み物を持って様子見で入ってきたレヴィさんが奥様の持つカタログを見て目の色を変えた所ですね。
「アン様、アレを複製できますでしょうか。」
「えぇ、できますよ。」
「もう一つ作っていただいても?」
「もうありますからどうぞ」
最初の時点で三つ作ってたのでありますよ。
奥様用、少年用、レヴィさん用です。
「……これはどなたがお作りに?職人の方ですか?」
「私ですね。」
「…!!…どのように作られたかお聞きしても?」
見たものを念写する魔法を紙に使用しただけなんだと伝えると。念写とは何かと聞かれる。
実際にやってみせた方が楽そうです。レヴィさんが是非とも他の職員含めて教えて欲しいとおっしゃるので、教えることに。
念写魔法がここから広まり、カタログが一般的になるのには時間がかからなかったがそれは起点となったアンが気になるほどの話ではなかった。
「アンさん、私これとこれが気になるのだけど。」
「はい、どちらですかね。」
「たんさんさいこー♪」
「…あら、リューゴ。それは何かしら」
奥様の気になるものの商品を出していると、レヴィさんもリューゴくんが持っている物に興味を示した。
「アン様、私も見たことないのですが…こちらは?」
「それは…ドリンクです。好き嫌いは分かれる物ですね。」
「子供向けということでしょうか?」
「そうとは限りません。甘くしてあるので子供でも飲みやすいようにしています。果汁も少し入れてますよ。」
「どういうものなのか飲みたいのですが。」
「エールの甘いジュース版ですね。」
「エール…とりあえず一杯飲んでみたいのですが、よろしいですか?」
果汁を入れたものを選んでもらう。リューゴに渡したカタログの食材カテゴリーを開いて。
それを渡したままなのがいけなかった。
「……コレは我々に納品されているリスト以外のものがたくさんありますが…」
「…あー。そっちは材料費が少しかかるのと、職人が1人なので、納品は難しいかと思いまして…」
「しかし、リューゴ様にはお渡ししていましたね。」
「えと…特定の顧客のみの販売にしようかと。」
「…私は駄目でしょうか?」
え。
「んー…レヴィさんにはいつもお世話になっていますし…そうですね。考えておきます。」
当分は転生者限定にしようかと思ったんですけど。あ、ヒロトにも見せてあげたいですね。ウィルさんにも見せないと拗ねそうですね。
「オーガン、ヒロトには会えましたか?」
【ん?嗚呼、一応何があったかは知らせた。アンの言う通り、あいつはマシな方だな。すぐに家と縁切ると言ってたぞ。】
「お、それはそれは。」
【一応アレが国を継ぎたかったみたいだが、アンにあんなことをした国の王にはなりたくないだと】
「へー。」
ヒロトが王なら交易がしやすいんですけどね。まあ、自分勝手な判断を見誤ってたり、間違った行動をする王に意見せずに従う騎士達のことも評価の一つなのかもしれません。
【そういえば、話したがっていたな。夕方酒場に行く約束をしたのだった】
「え、そうなのですか?」
「…アン様、申し訳ありません。少し話が聞こえてしまったのですが。何かあったのでしょうか。」
「あ。」
普通に話してしまいましたね。
「えと…お恥ずかしながら。とある国に遠出した際、拉致監禁されてしまいまして。」
「…なんですと?」
レヴィさんの様子が一瞬で変わり、黒い何かが蠢く幻覚が見えることに気づかないまま話を続ける。
「魔封じの鎖で繋がれて監禁されて、昨日このオーガンに救出してもらって戻ってきて…それでこの度こちらに来るのが遅れてしまい…」
「…どこの国でしょうか」
気にしないでくださいと言う前にオーガンさんが国の名前をいう。
【アズルーンだ。】
「あ。オーガンさん、勝手に!」
【フン、あんなところにアンの商品なんぞ売らんでいいのだ。交易差し止めておいてくれ】
「勿論、そうさせてもらいます。アン様はとても大事なお客様。その方を危険に晒してタダで済むわけがない…ふふ、お任せください。」
な、なんかレヴィさんが怖いです。
私が何もしなくていいと言ってもお任せくださいと笑うだけ。
任せたら大変なことになりませんかね?!
「…ぼくのめがみにひどいこと…フフフ、やみうちひっす…」
「…リューゴくん、今なんて言いました?」
「なんでもないよっ」
いや不吉なこと言いませんでした?!
なんか空気が悪いです。奥様も目が据わってますし…
「奥様?」
「……なんでもありませんよ。こちらのドレスを試着したいのだけど。」
「あ、それでしたら別室に移動いたしましょう。ご案内します。」
「アンさんも来てくださいます?」
「え、はい。構いませんよ。」
【終わったら酒場に来れるか?】
「先に行くのはいいですけど…お酒は飲みすぎないでくださいよ。」
【わーってる】
「もうっ」
返事が適当なのが一番不安なのです。
奥様の気に入ったドレスにあう装飾品もお勧めして、一式の購入が済み帰宅していく。
魔法の指導とお手伝いに関しては明日とりあえず一日休み、明後日から行動すると伝えた。
レヴィさんには1日遅れの納品を終わらせ、酒場で約束をしてるからとその場を離れた。
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