魔女様は平和をお望みです

yukami

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15.お仕置きです

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商業ギルドを出て、酒場に向かうと案の定、顔が赤くなったオーガンさんが酒に呑まれていた。

お酒が弱いのにお酒が好きなのどうにかなりませんかね…。

「あ!姉……アンさん!助けて!」
【んあー?ヒック…アンじゃねーか。おせーぞ~ヒックほら、俺の隣座れ】

こう言う時って酷く冷静になるんですよね。ほんと、約束は守ってほしいものです。

「連れ帰る身にもなってほしいものです。」
【早く座れよ】

隣の椅子に座れと大声で呼ぶので落ち着いて、近寄ります。
「ねぇ…アンさん、酒に呑まれたこの人どうやって黙らせれば…」
【黙らせるってなんだぁ?やんのかぁ?なあ?アン…そんなやつほっとけ~】
「オーガンさん、私との約束は?」
【んあー?】
「お酒飲みすぎないって言いましたよね」
【酒は水と変わらんっ】

会話になってない。

「痛い目にあいたいと言うことでよろしかったですか?」
「え?」
【なんだぁ?やるっていうなら…】

酔っ払っている人の頭を鷲掴みにします。ギリギリと握りつぶす勢いで力を込めます。

「…ゥ、ワァ…」
【イ”ッ!!イダダダダ?!】
「あと5分くらいこのままで。」
【起きた!起きたから!!悪かった!すまん!飲みすぎましたぁ!ア”ア”ア”!!!】
「1、2、3…」
【今から”ァ”?!】

それからも秒数を数えながら悲鳴を聞き流し、冷たい目線を向け続けた結果。注目を浴びつつ、その場に遭遇した数人はお酒を飲むのを控えて酔ってた数人は酔いが覚めた顔で青ざめながらコソコソと逃げるように出ていく。
この騒動により魔女商人はからみ酒が嫌いと広まっていった。

「…………297、298、299、300」
パッと手を離して解放する頃には痛みで失神したオーガンさんの出来上がりです。

そんな彼を椅子に座らせて、ヒロトとの話に頭を切り替えます。

「…さてなんのお話ししてたんですか?」
「切り替え早!」
「今のが私のチートの一部ですと少しお披露目も含めてみました」
「……怪力?」
「少し違います。」
「どういうこと?」
「私怪我しないんです」
「んん?」

本来なら転ければどこか擦りむきますよね。力みすぎたら手を痛める。それすら私にはありません。病気にもなりません、体に異常をきたすようなことが全くない健康なのです。

「……え。じゃあ、刺されたりしても…」
「血一滴も出ないでしょうね。服が破けるくらいです。」
「……病気も?」
「睡眠薬も、麻酔を打たれたとしても眠りませんし痺れません。」
「…え、死なないじゃん」
「はい。前世からの私の願いがついに叶えられそうなんです。私、寿命死になりたいので」
「……ちょっと待って?」
「はい?」

ヒロトが私からの説明を聞いて私が今まで気づかなかった事に気づきます。

「あのさ、体が衰えるってことは異常になるのかな?」
「そうですね。弱体化の呪いとかある世界ですから…そういうことがないんだと思います。」
「なら老衰って無理じゃない?」
「……ん?」
「体…若いまま衰えないってことでしょ?」

その言葉が頭の中で反芻して、一つの事実を追求するために念話を使うことにしました。

『………神、聞きたいことがあります。』
『ふえぁひゃい!』
『……事実ですか?』
『………………さ、さぁ?どーだったかなー?』

事実だと証明するような返事を聞き、今までの私の無様さを嘆きます。

「…神殺しでもしましょうかね…強制的に死ねるでしょう。」
「エ…なにその物騒なつぶやき。落ち着いて。」
『イヤーーー!殺されるー!誰か私を守って!世界が死ぬ!やめて…やめてよ?!』

冗談に聞こえなかったのでしょう。真剣にやり方を考えてたから余計に騒ぎ出すうるさい神様がいます。うるさいので逆襲を考えるのは後にしましょう。

「それで、ヒロトはこの世界で何したいの?」
「……僕と会話する気になってくれたのはいいんだけど、急過ぎない?」
「連れがご迷惑おかけしましたから」
「……オーガンさん生きてるの?」
「このくらいでは死にませんよ。軽いお仕置きですから」
「……これで軽いんだ…」

その後も軽く話して、どこか行く場所はあるのかを聞く。

「当分は一応冒険者として行動しようかと思ってるよ。僕は戦闘系のチートじゃないからこれから魔法練習しまくるんだけどね。」
「そうなのですか?…そういえばそちらのお連れは?」
護衛らしき人が1人か2人いたと思ったので確認してみる。

「彼らは国に帰した。僕のそばにいるのも不満があったみたいでね。国には死んだとでも伝えておいてと伝えたよ。帰る気ないし」
「へぇ…つまり今は宿無しですね?」
「まあ、そうなるね。」
「来ます?うち」
「へ?…いいの?!」
「えぇ、構いません。私転生者か、信頼における人は家に招待しようかと思ってるんですよね。友人たちにも、指導を受ければある程度強くなれますでしょう。」

「そうなんだ…その友人って…巷で噂のまぼろしの職人達だよね?」
巷で噂なのですか。どんな噂か気になります。

「えぇ、おそらくそれであってますね。」
人ではありませんが。

「どんな人たち?」
「……まあ、会ってみてからのお楽しみということで。」
人ではないのでいえませんね。

「ガードが固くなった…」
「暗くなる前に帰りましょうか。」

オーガンさんを引きずる紐を買って縛って、引きずりながらラトくんに合流。

(何したの?)
「お酒に酔いつぶれたのでお仕置きしました。」
(……バカだね。)
「宙にぶら下げて帰りましょ。…嗚呼それと、明日休んだらまたここに来ます。さらにお客様も連れて行きますからよろしくね。」
(お客様?)

 ラトくんといつものように話しているとヒロトが不思議そうに問いかけてきました。

「……誰と話してるの??」
「嗚呼、紹介遅れました。友人のラトくんです。ラトくん、こちら…私と同じ家出少年ヒロトですよ。」
(…あの国の匂いがするけど…?)
「同じ国で同じ家系ですからね。私の弟です。」
「え、友人…?え、会話できてるの…?」
「はい、できてます。ま、とりあえず帰りましょ」

空中で括られているオーガンさんは途中で目を覚まして騒いでいたが街から離れ秘境にたどり着くのを見て翼を出して飛ぼうとした。すぐにそんな許可を出した覚えがないと怒ります。

「誰が飛んでいいと言いましたか?」
【ひぇっ】
軽く怒ると翼を引っ込めてぶら下がり状態に落ち着きます。

(ルナオーガン様…約束破ったらダメって学ばないね…)
【酒がうまいのが仕方ないんだ!】
「酔いやすくなってましたね…あとでお住まいに溜まっているお酒没収です。」
【それは勘弁だぁ!!!】
「……アンさんて、結局どんな立場になってるの?」
「そうですねぇ…女ボスですねっ。」
「自分で言った…」

事実ですから。

秘境の森の最奥に複数建物があることに気づいたあたりからヒロトは不思議そうに覗き込みます。

ラトくんの背から下ろして、オーガンさんに元に戻っていいと伝えて、酒瓶をここに10本持ってきたら他は許すと伝えて追い払っときます。
ラトくんとはそこで別れて、ヒロトを連れてお客様用の別荘の方に案内。
ジュースを出して一息。


「ふぅ…」
「……人の気配がないんですが。アンさん」
「人は居ませんからねー」
「……はい?」
「私しか」
「はぁ?!」
「幻の職人とはいい呼び方です。私以外の人などいないのですから。」
「どういうこと!?あの商品を1人で作り上げる秘策は何?!」
「商品ですか?ご近所さんにご協力を求めてますね。」

「ご近所さん…やっぱり人が…いやでも秘境の森だよね…?」
「この近くに人はいません。ご近所さんというのはですね…」

(アン様ぁ?いらっしゃいますか?)
「あ、タランジールのタール。どうされました?」
(保管庫いっぱいになったのをお知らせに参りました~…おや?お客様がいらしていたのですね~お邪魔しましたか?)
「保管庫がいっぱいになるまで作ってくださったんですね。いつもありがとうございます。後で袋に詰めておきますね。」
(はい。畏まりましたぁ。それと、玄関先でルナオーガン様が、土下座して待っておりますよぉ?)
「わかりました。すぐに向かいますね。…ヒロト、ご近所さんのタールです。タランジールの兄妹のなかの一体で、一番上のお姉さんなんですよ。」
「……」

引きつった顔でいるのが精一杯のようですね。
(ふふ、可愛い坊やね。アン様が人をお連れするとは珍しい。どうかなさったのですか?)
「それが…私、皆さんより早くに人間として死ぬと思ったら、神様いたずらをされていたみたいで…私死なないかもしれないんです。」
(それは喜ばしいことですよ!アン様が長生きであるならわたし達はとても幸せですわ。皆さんはまだご存知では?)
「えぇ、さっきわかったことですので…まだ。」
(すぐお知らせいたします!今日はパーティですね!)
「そうですね。ヒロトの紹介も兼ねて集まって欲しいですね。」
(畏まりました。では、すぐに知らせてまいります!…保管庫の方もよろしくお願いします。)
「はい、わかりました。ではまた後で」
(はいっ)

窓から覗いていたタランジールのタールさんは8本の足を素早く動かして森に走っていった。
夕食の準備手伝ってもらいませんと、みんな集合しますね。ヒロトと、お酒の本数減数でオーガンさんに頼みましょうか。


「……イマノナニ、俺を食うとかそういう話?」
「はい?どうやったらそんなことになるんです。タールさんには私が死なないこと、ヒロトの紹介含めて晩餐を開くことをお知らせして行ってもらったんですよ?」
「……俺が最後の晩餐…」
青ざめて震えないでも大丈夫ですよ。
ごかいをとかねばなりません
「いや、食べるものは普通ですって…外にオーガンさんが来られてるらしいので、手伝ってもらいましょう。」
「アンさんには逆らえねぇ。」
「えー?大丈夫ですよ。みんなに紹介したら手を出してきませんから。」

建物から出ると酒瓶の後ろに小さくなった…とは言っても大きさではなく雰囲気の話で姿形は大型ドラゴンそのもののルナオーガンが頭を下げていました。

「うわぁっ?!」
後ろで驚きの声を上げるヒロト。

「あ、大丈夫。オーガンですよ。」
「は……はぁ?!」

しかし、酒瓶の数がおかしいです。10本提出を指示したはずですが…?

「おかしいですね…5本しかないようですが…」
【マジ勘弁してください!!なんでもする!!】
「……素直に10本並べていたら…これから頼みごとをしようとしていたのでそれで半分にまけてあげようかと思いましたが…」
【なんと?!今すぐ持ってくる!!】
「いえ、宴の準備が優先となります。…仕方ありません。とりあえず、五本で勘弁してあげます。先に料理の準備手伝ってください。」
【………トリアエズ…?】
「後で直々に取りに行きます」
【ノゥォオオオオ!!】

すぐにお酒の隠し場所から避難させに、飛ぼうとしたところを土魔法で食い止め、捕獲用の鎖を取り出して縛り上げます。

「料理の準備手伝ってと言いましたよね?どこにも行かせません。大鍋を準備してスープと肉料理をやってください。」
【イヤダァァア!悪かったぁ!!悪かったったからぁ!酒は許してくれええええ】
 

逃げ出そうと必死な古代龍が泣き叫びながら飛び立とうとしているのを鎖で押さえ込むという綱引き状態になっていた。その異様な光景に動揺しつつも客人が降り立つ。

「どういう状況…?」



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