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第三話 捕獲
しおりを挟む…えー…俺は現在重い石を膝に固定され、更に契約しようと思っていた魔物の好物を体に貼り付けられて、噛まれております。だが今回は俺も悪い。植物系か妖精かの2択じゃなくて獣型の蝙蝠のような魔物を連れてきてしまったのだから余計に。
『……私のサーチの範囲外まで深く潜られてしまいました…貴方のせいで。』
「さーせん」
『なんでよりにもよって天敵を連れてくるのですか?もうさっさと死んでもらえます?』
そう。このマルゼというNPCに俺はお仕置きと称した死刑宣告を受けているのだ。
足に乗せられた石の重さが尋常じゃなく、ダメージを徐々に食らっている。お仕置き中だからなのか動くことすら不可能な状態。
「死んだらテイムのスキルの使い方が…」
『私は2度と教えません…他を当たりなさい。』
「…ほ、他は…?」
『あなたに教える事など何もありませんよ』
「……」
こ、このままではテイムを教えてくれるNPC探しのために、遠く離れた国に行かないといけない。更にこの人には剣のスキルとか教えてもらう予定だった。それも、魔法もなし…それはマジ辛い。
初期場所から師匠見つけるまでも結構辛いのに、これ以上はマジ無理。
挽回せねば…詰む。
「どうにかして見つかればいいんだよな!?」
『無理ですよ。外に出ることさえもう2度とないぐらい怯えていました。サーチが届く範囲であの子の気持ちを探りましたが、生きることを優先して本能のままに逃げていましたから…人には絶対に…金輪際…近づいてくれることも…もしかしたら地面の中で…ぐ。』
悲壮感にまとわりつかれたマルゼ。とりあえず体に噛み付いてくる魔物には悪いがご飯は個別で食べてもらって、石を動か………動っ!
…………
「マルゼ様、あの、マジで、命がけで、丁寧に優しく保護のために動くので、この石をどかしてもらえませんか…」
『……早く死んでもらえませんか。』
「手伝います!」
『…………はぁ…チャンスは一度だけですからね…これが最後です。』
「はいっ!何をしましょうか!」
『と言っても…我々ができることはほぼありません。…出てきてくれるのを待つのみです。マップ上に出てきてさえくれれば地中よりはサーチが届く範囲が広いので期待ができるのですが…』
「……マジか…」
ツルを使い続けていたお陰でⅡになり、石のようなものを破壊できるようになりました。
…あれ?レベルは上がってないけどステータスが伸びてる?
確認大事です。
《ステータス》
HP10
MP10
ATK15
DFE6
DEX21
SPD18
LUK100(最大値)
おお。成長していましたっ。これは何かされても少しくらい抵抗ができるのではっ。
…いや、これくらいではダメです。ツルをもう少しあげて自由に操れるようになりましょう。防御もあげましょ。地下で特訓ですっ。
何事も確認を怠ってはなりません。ツルはどのくらい伸びるのでしょう?自分は動かずツルの使用可能範囲を掘り広げていきます、うーん…大体3メートルくらいですね。ツルでは何ができるのでしょう?先ほど砕くことができた石を持ち上げてみます。
流石に大きすぎて持てませんが筋トレにいいかも。
ツルをできるだけ素早く動かして、叩きつける練習をします。ツルのムチです。技です。他意はありませんっ。
あとは敵を拘束して縛り上げるくらいでしょうか…思いつくのそれくらいですね…防御の上げ方がわかりません…
敵倒さないと無理ですね…
ツルでの移動も手馴れてきました。ツルでの移動でなら素早く動けますね。
地上は森だったし、危なくなったら木に登りましょう。
よし、そろそろ光合成もしたいです。このまま上はダメです。かなり移動してから頭を出しましょう。
もぞもぞ…キョロキョロ……
大丈夫かな。あっ。もう日が暮れるような時間なのですかっ。ギリギリまで光合成します。夜は穴の中に行きましょう。
近くの木にツルを伸ばして頂上に到着。ふわふわの葉っぱの寝床を確保して、光合成。
はふぅ…あったかいです~
のんびり満喫していると木の下が騒がしくなります。
『ここら辺なのですが…』
「地上の反応なんだろ?」
なんで貴方らなんですかー!
嫌です嫌です。気配殺さないとダメです。見つかったら終わりです。
『もし、あるとすれば…この中の木の上ですかね…』
「うへぇ…木登りかよ」
来ないでください!
「じゃ最初はこれにするか」
それ私のいる木ー!!
LUK100の効果はどこ行ったんですか!
「揺らしたら落ちてきたり…」
『警戒させてどうするんですか。怖がらせるの無しだと言いましたよね?』
「うっハイ」
わわわっ、登ってきてるっ。逃げないと…てかここ天辺!無理です!一番大きな木のてっぺんなので手頃な移り場所もありません!
詰んだ!
「この木にいてくれたら助か…」
目が合いました。
「あ、いた」
もうダメです。死ぬ覚悟で飛び降ります!!
「?!ちょっ待て!!マルゼ!落ちる気だ!!」
『なんですと?!』
一瞬の浮遊感
怖い怖い怖いーでも捕まえられるよりマシです~!!
はっ!下にも人が!ツルを出して捕まえられないようにバランスをとります。
あぁっ!恐怖で力が抜けてバランスがっ!
ふえぇ…もうダメっ。
衝撃に備えて目をつぶります。
『間に合え!!』
「マルゼ!取った?!とった!?」
衝撃が来ません。温かな何かが下に…
手。
手が私を捕まえてます!!
逃げないと~
うわっ動かさないで~。
『大丈夫ですか?怪我は?何もしません。痛いところの確認だけです。』
「フィーー!!!」
離してー!やだー!!
『怖かったのですね。彼が』
「俺かよ?!」
「フィー!フィー!」
ヤダヤダヤダ増えた!怖いのやだー!
うっうぅ…
『っ。な、泣かないで。本当に何もしませんよ~』
「フィ~、フィ~」
逃げられないように固定されていてさらに怖い。何されるのかという恐怖しかない。
ツルで体を覆い尽くします。これが地下で考えた唯一の防御方法です。落とされたり投げられたりしてもツルが少しはクッションになるはずなのです。
『これは…』
「え、何?」
『完全に拒絶されてます…』
「…わー…」
『私のスキルもこの状態では使用できません…仕方ありませんね。保護施設の担当の方に任せましょう。我々はこの子を連れて行くことしか出来そうにありません。それと、覚悟しておいてください』
「へ?」
『担当の方…メーデルというのですが…この状態を見て何をしたか説教が始まります。…まあ、私もですが…』
「……その説教の拘束時間って」
『この子がそこに着くまでこれでなければまだ望みはありますが…』
「……リーフィちゃーん、何もしないから…ね?顔だして~」
このツルの中にいるとやはり落ち着きます。
まるで地下を思い出します。完全に外の音も遮断してくれるようで気配察知による状況把握しかできませんが!とりあえず疲れたのでログアウトです。
この状態が解かれないことを祈ります。
「……動かないんだけど。」
『無反応ですね。』
「死んでないよね?」
『担当の方に手渡したらわかります。詳しくは私もわかりませんが…』
「それ俺らに説教が確定したじゃん!」
『潔く受けましょう…今回は本当に不運が重なりました。』
「幸運の魔物だって聞いたのにっ!」
『怖がりなのは事実で変わりませんからね。もともと人が怖いという恐怖しかなかったのでしょう。』
「乱獲者許すまじ…掲示板の方にも載せとくか…」
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