日本育ちの異世界人、里帰りする

若葉 なる

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多種族都市 ヘイムダル

はじめてのまほう

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「いやぁ…ここに着いた時点で私の封印が解除されてたのか、異世界という土地に踏み出した事で魔力が刺激されて封印を吹き飛ばしたのか…どちらにせよちょっと想定外だったなぁ…!」

冷や汗をぬぐいつつ父さんカッコカリが俺に言う。いや俺に言われても知らんがなだわ…。
というか俺の魔力とやらは、エレベーターの外に出たらなんか凄い事になる魔力の性質なのか? 俺の異世界ライフが既に崩壊してるんですけど。

「…流石に四六時中薄い膜を意識してろってのも酷だし、恐らく私の封印だと効果が無さそうだし……龍希!」
「どうしたんだいア〇イさ~ん?」
「パークどころか世界の危機なんだけど、ちょっと私が言う言葉を復唱してもらえる? あ、対象を自分になるように意識してね」

サラッと歩く災害認定されたんだけど、一体俺に何を言わせようというのか。すげぇ嫌だって言いt…

「ちなみに嫌って言えば一生このエレベーターから出られないから、私達より後ろにいた市民の皆さんがこっちに来られません。凄い楽しみにしてたのにね!」
「万単位で俺に恨み持つとか夜どころか日中も歩けねぇ…! さっさとやろう、俺は死にたくない」

特に精肉店の大貝さんなんかに恨み持たれた日には、俺は肉片すら存在を許されないんじゃなかろうか。あの人豚肉のブロックを、吊るしてる状態で指定グラム数だけ薄切りにする人だからな…!

「じゃあこれは自分に言い聞かせてると思って繰り返してね。行くよー…『天におわします万物の神よ』」
「てんにおわしますばんぶつのかみよ」
「『其の者に鎖の戒めを与えたまえ』」
「そのものにくさりのいましめをあたえたまえ」
「『多重封印:魔力を食らう鎖』」
「たじゅうふういん:まりょくをくらうくさり」

復唱し終わると、何やら身体が光を纏い始めた。これは穏やかな心で激しい怒りを覚えた超戦士になる儀式かな?

「よし、ここからは復唱しなくていいからね!『多重魔法合成:檻を閉ざす神話の鍵』発動!」

おとんが何やら追加で言うと、光はより輝きを増してきた。ついでに俺の体力的な何かも若干持ってかれてるようで、疲労感が少し溜まった…ような気がした。これは気を溜めてる弊害に違いない(適当)

…と思ったけど、特に髪色が金になる事も無く、金のオーラとかバリバリエフェクトとかを纏う事も無くスッと消えてしまった。ちょっと期待した俺の心持ちを返してくれ。そういう風になる言葉は一切口にしてないから知ってたけどさ。

「せっかく超戦士になれるかと思ってたんだけど、これ結局俺に対して何をしたの?」
「言っての通り、聞いての通りだよ。最初のが『多重封印:魔力を食らう鎖』っていう封印魔法で、その後私が追加で言ったのが、本来十数人以上で発動させるトップクラスに魔力消費がデカい『合成魔法』の一種である『檻を閉ざす神話の鍵』っていう超強固な封印魔法。…まさかとは思ったけど、全部龍希の魔力で補えるとはねぇ…」

またサラッと、今度は歩く魔力タンク認定されたんだけど…というか人生初の魔法が『自分の魔力を封印する魔法』か~…悲し過ぎィ!



「あ~…でもやっぱり完全に封印しきれてないなぁ…。もう種族的に無理なのかもしれないね…」



そして結局は成功も失敗もしてない中途半端になってんじゃねぇかよオラァン!

「もうこればっかりは龍希自身がどうにかするしかないね! ちなみに封印と言っても全部は最初から無理だったから、日常生活で他人をかしずかせないようにしか出来なかったよ。だから今後も普通に魔法は使えるから、安心して厨二力全開で楽しむといい!」
「普通に異世界生活を楽しめよとは言わんのか」
「十中八九無理だからね。何故かって? エレベーター出た時に物凄い量の魔力をまき散らしたから。とりあえず伴侶選びだけは慎重にね? 私が子供を産む前に大量の孫を見たくないから」
「えっ何それは…」



俺の異世界って坂を登り始めるストーリーは、坂の入り口が土砂で埋まったところからスタートみたいですね。
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