ざまぁされたチョロ可愛い王子様は、俺が貰ってあげますね

ヒラヲ

文字の大きさ
5 / 26

協力してやろう

しおりを挟む
ノアに詳しく話を聞くと、彼は一角狼クルフィアの角のような廃棄される材料を使って、新しい製品を生み出す研究をしているのだという。

「殿下が使用されている化粧水をお借りすることはできませんか? 何かヒントだけでも掴みたくて……」

必死な様子のノアを見るに、どうやら研究はあまりうまくいっていないらしい。

「だったら化粧水の調合を教えてやろう」
「え?」
「どうした? そのほうが手っ取り早いだろ?」
「でも、それは開発者の許可を取ってからでないと……」
「だから、開発者の僕がいいと言っているんだ」
「へ?」

ノアがぽかんと口を開ける。

自身の肌に一番馴染むものを、自分の手で作った。ただそれだけのことなのに何を驚いているのだろう。

「実際に作って見せたほうがわかりやすいのではありませんか?」
「それもそうだな」

クライドの提案に僕も頷く。

「で、でしたら、僕の研究室へご案内いたします!」





医務室を出てノアの研究室へと移動し、さっそく化粧水を作ってみせた。

「あとはここに薄めた精油を加えると、好みの香りに調合できる」
「な、なるほど……」

ノアは必死にメモを取っている。

「使用感をお聞きしても?」
「それはノアが自分で試してみるといい。まあ、僕のこの美しい肌が全てを物語っているがな」
「たしかに、殿下の肌は真っ白でシミ一つなくて……とても美しいです!」
「そうだろう?」

ノアの素直な称賛の言葉に、僕の自尊心は満たされていく。

「どうだ? 他にわからないところはないか?」
「はい! 殿下の説明はとてもわかりやすいので」

人に何かを教えた経験がなかった僕は、ホッと息を吐いた。

「それにしても、オリジナルの化粧水を開発をするなんて殿下はすごいですね!」
「そうか?」
「まだコスト面に課題はありますが、これは商品として十分通用すると思います」
「コスト?」

きょとんとする僕に、ノアが簡単に説明をしてくれる。

どうやら、一角狼クルフィアの角以外に使われる材料が高価すぎるということらしい。

(材料の値段なんて考えたこともなかったな……)

必要だと思う材料は、金額など気にせずに全て王城へ取り寄せていた。
だが、商品として販売するならば避けては通れない問題なのだろう。
その辺りはノアがこれから考えていくという。

「殿下のおかげでやっと可能性が見えてきました! ありがとうございます!」

再び興奮した様子のノアを見ながら、不思議な気持ちが湧き上がる。

僕の取り柄はこの美しさだけで、ただそれを磨くように母上から言われ続けてきた。

日焼けをしないよう外へ出るのは最小限に、手の平にマメができ、腕の筋肉の付き方にバラつきが出てしまうからという理由で剣術の稽古を禁じられてしまう。

元から魔法の才能はなかったが、火魔法を使用した際に軽い火傷を負ったせいで魔法の訓練すらも禁止されてしまった。
これをきっかけに勉学に励み、そちらの才能が伸びればよかったのだが……残念ながらそう上手くはいかない。

すっかり手持ち無沙汰になった僕は、何か趣味になりそうなものを探すようになったのだ。

そのうちの一つがスキンケアアイテムの自作で、単調な作業が意外と性に合っていたらしく、僕にとって息抜きの時間にもなっていた。

(それに、美しさを磨く研究ならば母上の機嫌を損ねることはないからな)

そんな、ただ自分のためだけの行いが、他の誰かに認められるとは思わなかったのだ。

「乳液と美容液の調合法も教えてやろうか?」
「ええっ!? よろしいのですか?」
「ああ。僕のこの美しい肌は化粧水だけでは到底再現できない」
「ありがとうございます!」

こうして、訓練が休みの日はノアの研究に協力することになったのだった。





「おい、なんで今日も来たんだ?」

夕食の時間になり、クライドが食堂へ向かってしばらく経つと、自室の扉をノックする音が響く。
まさかと思いながらも扉を開けると、アイザックが目の前に立っていたのだ。

「なんでって……いつものお菓子を届けに来たんですよ」
「だから、今日の訓練は休みだったろ? それなのにお菓子を食べる理由がない」

嗜好品ではなく疲労回復にいいから食べるという話だったではないか。
そう言うと、アイザックは目を見開く。

「え? でも、今日は外に出掛けていませんよね?」
「それはそうだが……。なぜ、そんなことを知っている?」
「外出届にも馬車の貸出記録にも殿下の名前がありませんでしたから」
「…………」

なぜ、そんなことをチェックしているんだ……。

「だから、殿下は俺のことを待ってるんだと思って会いに来たんですけど……」
「どうして僕が出掛けていないことと、お前を待つことが繋がるんだ!?」

どうやら、休日にお菓子を買いに出掛けなかった理由を、僕がアイザックとの給餌の時間を望んでいるからだと解釈したらしい。

「ふざけるな! そんなはずがないだろう! 急用で街へ出掛ける予定がなくなっただけだ」

すると、わかりやすくアイザックの顔が不機嫌になる。

「あー、そうですか。だったらこれはいりませんよねぇ」

そう言いながら、アイザックは手に持つ袋から小さな白い箱を取り出した。

「何だそれは?」
「シュークリームです」
「シュークリーム!?」
「殿下のために街で買ってきたんですけど……。いらないんだったら自分で食べますから」
「えっ………」

この五日間で口にしてきたものはクッキーやチョコレートのような保存の効くお菓子ばかりで、それでも十年振りに食べるそれらの味に夢中になってしまった。

(シュークリーム……)

もう味はあまり思い出せないが、自分の好物であったことは覚えている。

「ちなみに今日中に食べないとダメなやつです」
「今日中……」
「ええ。俺は甘いものが得意じゃないので、残してしまうかもしれません」
「なんてもったいない!」
「ですよねぇ?」
「…………」

また、いつもの胡散臭い笑みを浮かべるアイザック。

「その……残すくらいなら僕が食べてやってもいい」
「あれ? 訓練がない日は食べないって、さっき言ってませんでしたか?」
「むぅ………」

なんて意地悪な奴だと睨みつけるも、今度は嬉しそうな表情かおになるアイザック。
睨まれて喜ぶだなんて、何を考えているのかさっぱりわからない……。

「ははっ、冗談ですよ。じゃあ、部屋に入ってもいいですか?」
「ああ……」

結局、いつものようにアイザックからお菓子を貰うはめになってしまった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

なんでも諦めてきた俺だけどヤンデレな彼が貴族の男娼になるなんて黙っていられない

迷路を跳ぶ狐
BL
 自己中な無表情と言われて、恋人と別れたクレッジは冒険者としてぼんやりした毎日を送っていた。  恋愛なんて辛いこと、もうしたくなかった。大体のことはなんでも諦めてのんびりした毎日を送っていたのに、また好きな人ができてしまう。  しかし、告白しようと思っていた大事な日に、知り合いの貴族から、その人が男娼になることを聞いたクレッジは、そんなの黙って見ていられないと止めに急ぐが、好きな人はなんだか様子がおかしくて……。

嫌われた暴虐な僕と喧嘩をしに来たはずの王子は、僕を甘くみているようだ。手を握って迫ってくるし、聞いてることもやってることもおかしいだろ!

迷路を跳ぶ狐
BL
 悪逆の限りを尽くした公爵令息を断罪しろ! そんな貴族たちの声が高まった頃、僕の元に、冷酷と恐れられる王子がやって来た。  その男は、かつて貴族たちに疎まれ、王城から遠ざけられた王子だ。昔はよく城の雑用を言いつけられては、魔法使いの僕の元を度々訪れていた。  ひどく無愛想な王子で、僕が挨拶した時も最初は睨むだけだったのに、今は優しく微笑んで、まるで別人だ。  出会ったばかりの頃は、僕の従者まで怯えるような残酷ぶりで、鞭を振り回したこともあったじゃないか。それでも度々僕のところを訪れるたびに、少しずつ、打ち解けたような気がしていた。彼が民を思い、この国を守ろうとしていることは分かっていたし、応援したいと思ったこともある。  しかし、あいつはすでに王位を継がないことが決まっていて、次第に僕の元に来るのはあいつの従者になった。  あいつが僕のもとを訪れなくなってから、貴族たちの噂で聞いた。殿下は、王城で兄たちと協力し、立派に治世に携わっていると。  嬉しかったが、王都の貴族は僕を遠ざけたクズばかり。無事にやっているのかと、少し心配だった。  そんなある日、知らせが来た。僕の屋敷はすでに取り壊されることが決まっていて、僕がしていた結界の魔法の管理は、他の貴族が受け継ぐのだと。  は? 一方的にも程がある。  その直後、あの王子は僕の前に現れた。何と思えば、僕を王城に連れて行くと言う。王族の会議で決まったらしい。  舐めるな。そんな話、勝手に進めるな。  貴族たちの間では、みくびられたら終わりだ。  腕を組んでその男を睨みつける僕は、近づいてくる王子のことが憎らしい反面、見違えるほど楽しそうで、従者からも敬われていて、こんな時だと言うのに、嬉しかった。  だが、それとこれとは話が別だ! 僕を甘く見るなよ。僕にはこれから、やりたいことがたくさんある。  僕は、屋敷で働いてくれていたみんなを知り合いの魔法使いに預け、王族と、それに纏わり付いて甘い汁を吸う貴族たちと戦うことを決意した。  手始めに……  王族など、僕が追い返してやろう!  そう思って対峙したはずなのに、僕を連れ出した王子は、なんだか様子がおかしい。「この馬車は気に入ってもらえなかったか?」だの、「酒は何が好きだ?」だの……それは今、関係ないだろう……それに、少し距離が近すぎるぞ。そうか、喧嘩がしたいのか。おい、待て。なぜ手を握るんだ? あまり近づくな!! 僕は距離を詰められるのがどうしようもなく嫌いなんだぞ!

ドジで惨殺されそうな悪役の僕、平穏と領地を守ろうとしたら暴虐だったはずの領主様に迫られている気がする……僕がいらないなら詰め寄らないでくれ!

迷路を跳ぶ狐
BL
いつもドジで、今日もお仕えする領主様に怒鳴られていた僕。自分が、ゲームの世界に悪役として転生していることに気づいた。このままだと、この領地は惨事が起こる。けれど、選択肢を間違えば、領地は助かっても王国が潰れる。そんな未来が怖くて動き出した僕だけど、すでに領地も王城も策略だらけ。その上、冷酷だったはずの領主様は、やけに僕との距離が近くて……僕は平穏が欲しいだけなのに! 僕のこと、いらないんじゃなかったの!? 惨劇が怖いので先に城を守りましょう!

異世界転生したと思ったら、悪役令嬢(男)だった

カイリ
BL
16年間公爵令息として何不自由ない生活を送ってきたヴィンセント。 ある日突然、前世の記憶がよみがえってきて、ここがゲームの世界であると知る。 俺、いつ死んだの?! 死んだことにも驚きが隠せないが、何より自分が転生してしまったのは悪役令嬢だった。 男なのに悪役令嬢ってどういうこと? 乙女げーのキャラクターが男女逆転してしまった世界の話です。 ゆっくり更新していく予定です。 設定等甘いかもしれませんがご容赦ください。

悪の策士のうまくいかなかった計画

迷路を跳ぶ狐
BL
いつか必ず返り咲く。それだけを目標に、俺はこの学園に戻ってきた。過去に、破壊と使役の魔法を研究したとして、退学になったこの学園に。 今こそ、復活の時だ。俺を切り捨てた者たちに目に物見せ、研究所を再興する。 そのために、王子と伯爵の息子を利用することを考えた俺は、長く温めた策を決行し、学園に潜り込んだ。 これから俺を陥れた連中を、騙して嵌めて蹂躙するっ! ……はず、だった……のに?? 王子は跪き、俺に向かって言った。 「あなたの破壊の魔法をどうか教えてください。教えるまでこの部屋から出しません」と。 そして、伯爵の息子は俺の手をとって言った。 「ずっと好きだった」と。 …………どうなってるんだ?

魔王様に溺愛されています!

うんとこどっこいしょ
BL
「一目惚れをしたんだ、必ず俺に惚れさせてみせる」 異世界で目覚めた倉木春斗は、自分をじっと見つめる男──魔王・バロンと出会う。優しいバロンに、次第に惹かれていく春斗。けれど春斗には、知らぬ間に失った過去があった。ほのぼの、甘い、ラブコメファンタジー。 第一章 第二章 第三章 完結! 番外編追加

妹が聖女になったと思ったら俺は魔王の待ち人だった件

鳫葉あん
BL
幼い頃に両親を亡くし、妹の為に生きてきたゼノはある日不思議な女性と出会う。 不可解な言動の多い彼女は「貴方の求めている人に会える」とゼノを誘い、導かれるままゼノの旅が始まる。 自分のことを知る旅が。 尽くし系溺愛盲目悪魔×卑屈系地味受けの生まれ変わりものです。 ※他サイトにも投稿してます。 ※性描写は10話に入ります。

ざまぁされた悪役令嬢の息子は、やっぱりざまぁに巻き込まれる

たまとら
BL
ざまぁされて姿を消した令嬢の息子が、学園に入学した。

処理中です...