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事件簿その四・ラベンダーの香水
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その女性は散歩中にお洒落な花屋を見つけ、風の流れに背中を押されてドアを開け、森の番人のような女店主を横目でみながら、ラベンダーの香りに誘われて棚の上のチラシを手に取った。
「水の錬金術師?」
「ええ、そちらのテラス席で依頼を承っております。興味がお有りなら呼びましょうか?」
「相談だけでもいいのでしょうか?水の錬金術師の探偵なんて、意味不明ですし」
「もちろんです。占うかどうかは後で決めてください。最初は皆さん、からかい半分なんですよ」
「それならお願いします」
女性は花を買う事よりも「花に纏わる相談や人探しの依頼、承ります」というチラシのコピーが目に入り、もしかして私が悩みを抱えていたから自然と導かれたのかしら?と、思った。
由香里は棚のラベンダーの鉢植えから紫の花を一輪抜き取り、女性をテラス席に案内してテーブルの上の硝子花瓶に花を挿した。
「いい香りですね?」
「ええ、お客様もラベンダーの香りがする。もしかして、香水ですか?」
由香里がそう聞いたが、女性は微笑みを浮かべただけで答えず。「少々お待ちください」と言って洋介を呼びに行く。
洋介は二階の部屋で道具箱から硝子容器を取り出し、机の上で慎重に天秤で計測した着色済みの重曹とクエン酸を混合し、それぞれの色の容器に粉を補充をしていた。
最近大きな仕事の依頼はないが、女学生の恋占いが定期的に入るようになり、粉が減っていたのである。
そして姉の呼び声が聴こえたので、道具箱を持って階段を降りて行くと、キッチンでコーヒーの用意をしていた姉が丁寧な口調で洋介に告げた。
「ハーブの女王さまのご来店でございます」
「はっ?」
「ふっふ、事件の香りがする。テラス席で待たせてるから。お願いね」
「わ、わかった」
洋介が慌ててテラス席へ向かい、先に席に着いていた女性に挨拶をして席に座ると、コーヒーを持って来た姉がテーブルの上を見て微笑みかけた。
女性がバッグから香水の小瓶を取り出し、さっき問われた答えのようにラベンダーの花が飾られた硝子花瓶の横に置いたのである。
「香水?」
「ええ、今日はつけてなかったのですが、いつも持ち歩いてます」
「まさか、それで占うのですか?」
水の錬金術師がそう呟くのを女性は憂いのある眼差しで見つめ、姉は壁側の丸椅子に腰掛けてコーヒータイムにした。
「水の錬金術師?」
「ええ、そちらのテラス席で依頼を承っております。興味がお有りなら呼びましょうか?」
「相談だけでもいいのでしょうか?水の錬金術師の探偵なんて、意味不明ですし」
「もちろんです。占うかどうかは後で決めてください。最初は皆さん、からかい半分なんですよ」
「それならお願いします」
女性は花を買う事よりも「花に纏わる相談や人探しの依頼、承ります」というチラシのコピーが目に入り、もしかして私が悩みを抱えていたから自然と導かれたのかしら?と、思った。
由香里は棚のラベンダーの鉢植えから紫の花を一輪抜き取り、女性をテラス席に案内してテーブルの上の硝子花瓶に花を挿した。
「いい香りですね?」
「ええ、お客様もラベンダーの香りがする。もしかして、香水ですか?」
由香里がそう聞いたが、女性は微笑みを浮かべただけで答えず。「少々お待ちください」と言って洋介を呼びに行く。
洋介は二階の部屋で道具箱から硝子容器を取り出し、机の上で慎重に天秤で計測した着色済みの重曹とクエン酸を混合し、それぞれの色の容器に粉を補充をしていた。
最近大きな仕事の依頼はないが、女学生の恋占いが定期的に入るようになり、粉が減っていたのである。
そして姉の呼び声が聴こえたので、道具箱を持って階段を降りて行くと、キッチンでコーヒーの用意をしていた姉が丁寧な口調で洋介に告げた。
「ハーブの女王さまのご来店でございます」
「はっ?」
「ふっふ、事件の香りがする。テラス席で待たせてるから。お願いね」
「わ、わかった」
洋介が慌ててテラス席へ向かい、先に席に着いていた女性に挨拶をして席に座ると、コーヒーを持って来た姉がテーブルの上を見て微笑みかけた。
女性がバッグから香水の小瓶を取り出し、さっき問われた答えのようにラベンダーの花が飾られた硝子花瓶の横に置いたのである。
「香水?」
「ええ、今日はつけてなかったのですが、いつも持ち歩いてます」
「まさか、それで占うのですか?」
水の錬金術師がそう呟くのを女性は憂いのある眼差しで見つめ、姉は壁側の丸椅子に腰掛けてコーヒータイムにした。
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