「水に溶ける恋」花と読み解く物語

田丸哲二

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探偵の相棒ノゾミン

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 その日の午後、広瀬望美は鎌倉市役所の仕事中に上司に呼ばれて、突然特別休暇を与えると告げられ、何かしでかしたかと思いを巡らせた。

『ハゲ課長と陰で言ってるのが、バレたのか?』

「あのー、嬉しいのですが、どういう事でしょうか?最近、休暇の申請して断られたばかりですよ」

「風が吹いたんだよ」

 警察の捜査に協力するように警視総監から市長に直々に電話があったと聞かされ、望美は両手を広げて驚いた。

「おお~、もしかして、た、探偵ですか?」

 そう叫ぶと、絶妙のタイミングで腰のケースにぶら下げていた携帯電話が震えて、課長に了解を得てから出ると洋介から説明がある。

「今朝、夏川千聖って刑事が来て、協力を頼まれたんだけど、姉貴の要望でノゾミンを加えないと断ると交渉したんだ。なんか、話が大きくなって僕としては困惑しているが、望美はどう思う?」

「やるに決まってるでしょー。だって、大っぴらに探偵ごっこできるんだよ。な、なんか萌えるな~」

「ごっこ、なのかね?」

 望美の喜びように、上司が眼鏡をかけ直して睨み、髪を掻きむしろうとして慌てて手を止めた。

「いえ、私は名探偵の相棒、ノゾミンなんですよ。課長、あまりストレスを溜めないようにしてくださいね」


 洋介の姉、由香里はマドンナリーリーの事件で望美と一緒に、洋介が火の錬金術師と戦うのを協力してすっかり仲良しなっていた。

 そして望美の明るい性格と類稀な洞察力に感心し、何故洋介が別れた後も親友のように彼女と仲良くしているのか納得した。

『洋介の取説はノゾミンしか知らない』

 少年の冒険心と大人の複雑な心情を組み合わせた、ガラスの神経を持つ洋介を扱うのは難しい。水面の波紋で相手の動揺を感じ、花の声で心まで読み取ってしまう者と付き合うのは難しい。

『見えすいた嘘っぽい女性じゃ無理だよね』

 自分が言うのも何だが、女は好きな人ができると自然と嘘をつく生き物である。

 もしかして広瀬望美には不思議なバリアーがあり、水の錬金術師にも心を読み取られないとか?

「ねっ、洋介。ノゾミンは特殊なんじゃないか?」

 由香里がそう聞いてみると、思った通りの答えが返ってきた。

「そうかもしれない。彼女は花も読み取れないパワーがある、異質なのか同種なのか不明だけど、一緒にいると癒されるんだ」

「逆に言えば、火の錬金術師はノゾミンが苦手なタイプにならない?」

 そう言われた洋介は、真剣な表情を姉に向けて頷いた。

 望美は洋介の能力も性格もよく知り尽くし、精神安定剤と的確なアドバイスをする名探偵の相棒ワトソンみたいな存在なのである。
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