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第四現象・皮膚に刻まれた血の呪い
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地下の資料室に置いてあった四角い物は事務員の本条順子が立会人となり、宇佐美と大塚が手袋をして慎重に一階の教室に運ばれた。
「あの二人に任せて大丈夫なのか?」
グレーのワンボックスカーの運転席でハンドルを握る安堂刑事か助手席に座った圭介に聞いたが、後部席で子猫を抱いた美加が代わって答えた。
「オカルト・オタクのウサポンとポンタだよ。アイツら、あれは血と肉とあばら骨のキーボードだって言ってるぜ」
美加がスマホのLINEに書き込まれたコメントを見て、絶妙なネーミングセンスに眉間に皺を寄せて笑ったが、圭介と安堂刑事は胸を詰まらせたように咳き込み、青ざめた表情で助骨の使い道が判明した事を理解した。
「これで……全てのパズルが揃ったな」
「ええ、ですが……完成図は見えてない。病院へ行けば何か分かると思いますけどね」
「やっぱ、呪いなんだろ?」
美加が後部席から子猫を抱き上げて、圭介と安堂刑事に向けて手で引っ掻く仕草をさせている。
「実はお前に言われて、本条家の事を調べた。過去に家紋を争って霊媒師同士の戦いがあったそうだ。それに本条道成の事故死を調べてみたが、不審な点がある」
三年前、本条家の当主道成は愛人とドライブ中に事故に遭って死んだ。七十八歳であったが自らベンツを運転して、若い女性と温泉旅館へ行く途中、運送トラックと激突して即死だった。
「衝突したトラックの運転手の直前の映像を手に入れたんだが……」
「痣ですか?」
「ああ、後で見せるわ」
「もう、安堂さんも歌姫のメンバーだからな。私らにも見せろよな」
「わかったよ。圭介の彼女はキツいな」
「いや、彼女じゃないすよ」
「そこは、嘘でも彼女って言えよ。圭介」
パソコンスクールでは、事務員の本条順子が通路を歩きながオーナーに連絡し、安堂刑事から言われた事を伝えた。
「順子です。今、変な物が資料室で見つかりまして、警察に授業を中止にするように要請されました。ええ、病院に見舞いに行っていると伝えてありますので、そちらでお話しください」
安堂刑事は警察署に連絡し、鑑識をパソコンスクールへ向かわせる手筈を進めていた。スクールのオーナーには休講にして、教室は警察で使わせて貰うつもりだ。
そして順子は宇佐美と大塚が教室で『血と肉とあばら骨のキーボード』と名付けた物を調べているのを覗いてから、誰もいない事務室へ入って微笑みながらデスクに着いた。
順子は刑事達が去った後、『血』『肉』『骨』のキーワードをそれとなく発して、そう名付けるように誘い込んだ。
『それは恐怖への招待状でもあるからね』
「骨っぽいキーボタンに英数字が刻まれている」
「ここにUSBの接続端子があるぜ」
宇佐美と大塚は最初は気味悪いと怖がっていたが、透明のアクリルケースの奥蓋を開けて内部を調べたり、外観の装置やキーボタンを触っているうちに好奇心が湧き上がり、オタク魂を発揮した。
「血が固まって、黒い瘡蓋になってるが、焦がして殺菌したんじゃね?」
「アルコール臭もするぜ」
「すげ~、肉の弾力で微妙なキータッチを作り出している」
「あばら骨が押されて、銅線のコイルに電流が流れるんじゃねーか?」
「細い骨もいっぱいあんな~。これ、猫とか犬の骨かもよ?」
「と、とにかくモニターとパソコンに繋いでみようぜ」
「あの二人に任せて大丈夫なのか?」
グレーのワンボックスカーの運転席でハンドルを握る安堂刑事か助手席に座った圭介に聞いたが、後部席で子猫を抱いた美加が代わって答えた。
「オカルト・オタクのウサポンとポンタだよ。アイツら、あれは血と肉とあばら骨のキーボードだって言ってるぜ」
美加がスマホのLINEに書き込まれたコメントを見て、絶妙なネーミングセンスに眉間に皺を寄せて笑ったが、圭介と安堂刑事は胸を詰まらせたように咳き込み、青ざめた表情で助骨の使い道が判明した事を理解した。
「これで……全てのパズルが揃ったな」
「ええ、ですが……完成図は見えてない。病院へ行けば何か分かると思いますけどね」
「やっぱ、呪いなんだろ?」
美加が後部席から子猫を抱き上げて、圭介と安堂刑事に向けて手で引っ掻く仕草をさせている。
「実はお前に言われて、本条家の事を調べた。過去に家紋を争って霊媒師同士の戦いがあったそうだ。それに本条道成の事故死を調べてみたが、不審な点がある」
三年前、本条家の当主道成は愛人とドライブ中に事故に遭って死んだ。七十八歳であったが自らベンツを運転して、若い女性と温泉旅館へ行く途中、運送トラックと激突して即死だった。
「衝突したトラックの運転手の直前の映像を手に入れたんだが……」
「痣ですか?」
「ああ、後で見せるわ」
「もう、安堂さんも歌姫のメンバーだからな。私らにも見せろよな」
「わかったよ。圭介の彼女はキツいな」
「いや、彼女じゃないすよ」
「そこは、嘘でも彼女って言えよ。圭介」
パソコンスクールでは、事務員の本条順子が通路を歩きながオーナーに連絡し、安堂刑事から言われた事を伝えた。
「順子です。今、変な物が資料室で見つかりまして、警察に授業を中止にするように要請されました。ええ、病院に見舞いに行っていると伝えてありますので、そちらでお話しください」
安堂刑事は警察署に連絡し、鑑識をパソコンスクールへ向かわせる手筈を進めていた。スクールのオーナーには休講にして、教室は警察で使わせて貰うつもりだ。
そして順子は宇佐美と大塚が教室で『血と肉とあばら骨のキーボード』と名付けた物を調べているのを覗いてから、誰もいない事務室へ入って微笑みながらデスクに着いた。
順子は刑事達が去った後、『血』『肉』『骨』のキーワードをそれとなく発して、そう名付けるように誘い込んだ。
『それは恐怖への招待状でもあるからね』
「骨っぽいキーボタンに英数字が刻まれている」
「ここにUSBの接続端子があるぜ」
宇佐美と大塚は最初は気味悪いと怖がっていたが、透明のアクリルケースの奥蓋を開けて内部を調べたり、外観の装置やキーボタンを触っているうちに好奇心が湧き上がり、オタク魂を発揮した。
「血が固まって、黒い瘡蓋になってるが、焦がして殺菌したんじゃね?」
「アルコール臭もするぜ」
「すげ~、肉の弾力で微妙なキータッチを作り出している」
「あばら骨が押されて、銅線のコイルに電流が流れるんじゃねーか?」
「細い骨もいっぱいあんな~。これ、猫とか犬の骨かもよ?」
「と、とにかくモニターとパソコンに繋いでみようぜ」
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