血と肉とあばら骨のキーボード

田丸哲二

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第四現象・皮膚に刻まれた血の呪い

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 病院に着いて玄関を入った圭介達は、安堂刑事が受付で警察手帳を見せて三浦鈴子が入院した部屋番号は聞き、タクシーで駆けつけた圭介の祖母清子と一緒に病室へ向かった。

 階段を歩きながら、圭介が呪いが始まった事と妙なキーボードがパソコンスクールで発見された事を祖母に教えて意見を聞く。

「どう思う。母の骨がそのキーボードに使われたとして、呪いのパワーが増すと思うか?」

「大昔の呪術者は人骨を筮竹ゼイチクの代わりに使ったらしい。霊能者の骨なら血霊チダマが活気付くと思うよ」

「ゼイタクとチンダマって、なんなの?」

「ゼイチクとチダマだ」

筮竹ゼイチクは易占で使う棒みたいなのよ。血霊チダマは血の中に潜む霊力のことだ」

「おばあちゃん、マジで物知りだよな」

 子猫を抱く美加がそう言って微笑み、これで歌姫のメンバーが勢揃いしたと喜ぶ。

 二階の休憩室にスクールのオーナーを見つけた安堂刑事は先にそちらへ向かい、授業の中止と教室を警察に使わせて欲しいと交渉しに行く。

「何しに来た」

 その時、見舞いに来ていたスクールの生徒達が病室から出てきて、圭介と礼子を見て険悪な表情でそう問いただす。

「何って、なんだよ?文句あんの?」

 金髪の美加が先頭に立ち、年上の生徒たちを睨んでいる。パソコンスクールの生徒は美加が一番若く、他は五十代から六十代であった。

「何か勘違いしているようですね。俺と祖母は傷を負った生徒を助けに来たのですよ」

 そう圭介が喧嘩腰の美加を制して優しく言うと、数人の生徒たちは渋々退散した。

「お前の仕業じゃないのか?」という陰口が聞こえ、美加が殴りかかろうとしたが、清子が腕を掴んで止めた。

「怖がってるんだ。あの年代はこの町の呪いを信じているからね」

「行くぞ」

 交渉を終えた安藤刑事が通路を先に進み、病室へ入ってベッドに寝ている三浦鈴子に警察手帳を見せて話し始めた。

「安堂と言います。三浦鈴子さんですね?」

「はい」

「この町で妙な事件が続き、調べているのですが、傷の具合はどうです?」

「ええ、貧血でちょっと気持ち悪いだけ。大したことないんですよ」

 三浦鈴子は液晶ガラスで切った指の傷なんて病院に来るほどでもないと思っていたが、突然ズキズキと痛みが走り、治療後に病室のベッドで休む事になった。

 しかもこんな大騒ぎになって、変なこと言わなきゃ良かったと後悔している。

「鈴子さん。どうなのよ。血が吹き出すの見たんだろ?」

 美加が安堂刑事の横で大声を出し、圭介が口を押さえて引き戻してベッドの側に立つ。
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