血と肉とあばら骨のキーボード

田丸哲二

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第四現象・皮膚に刻まれた血の呪い

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「松田さんね?」

「圭介です。傷を見せて貰えませんか?」

 圭介の横で礼子が軽く頭を下げて微笑み、鈴子もベッドで上半身を起こして軽く会釈をした。

「ああ、さっきまで貴方の噂をしていたわ」

「いい噂ではないでしょうね」

「刑事さんも言ってたように、恐ろしい事が起こってますでしょ。首が届けられたり、死体が見つかったり」

「それで本当に大丈夫なのですか?」

「指を少し切っただけなんですよ」

 鈴子はそう言って、包帯を巻いた左手の人差し指を前に出したが、圭介が見たかったのは手首の痣だった。

「悪いけど、こっちだ」

 手のひらを上に向けさせて袖を捲り、四角い傷線のような痣を露わにする。

「これが液晶ガラスが割れた時にできたのですよね?血が湧き上がるような妄想を見たのも、この痣のせいだ」

 もちろん鈴子もその四角い傷線の痣が皮膚に刻まれたのは知っていた。しかも数時間が経ち
、新たな痣が浮かび上がっている。

「四角い枠の中に文字のような痣が見えない?」

 遠慮という事を知らない美加が鈴子の腕を持ち上げて、顔を近づけてその痣をまじまじと観察した。

「IFじゃね?ほら、英字のIF」

 そう美加が呟き、歌姫のメンバーが集まってそれを不思議そうな表情で眺めた。その中には子猫もいて、匂いを嗅いで舌で痣を舐めようとして、鈴子が怒って袖を下ろして腕を引く。

「やめて。見せ物じゃないのよ」

 血のドットの痣が、確かに=IFに見えない事もない。呪いは暗示だが、そう全員が思う程リアルだった。

 そして圭介は列の最後に薄紅色に滲むものが気になった。

『これは数字の……1か?』

 三浦鈴子はもう終わりにしてと怒ったが、安堂刑事が失礼を詫びて頼み込み、最後に写真を一枚だけ撮らせて貰って病室を出た。

 美加が通路を歩きながら、スマホでアップにした画面の痣を見て首を傾げている。

「なんだろうね?」

「スクールに戻って検討しよう」

「おっ、歌姫のバンドの初会合だね」

「喜ぶな。これは危険な兆候だぞ。悪魔のミュージックが流れ始めたと受け止めろ」

「じゃ、こっちはパンクで反撃してやろうぜ」

「まったく、若い者の話にはついてけねーな」

「刑事さん。私は大丈夫だよ。音楽は世界の共通言語だと思っているからね。呪術も同じで、根っこは変わらない。時代が変わっても、恐怖は同じだろ?」

「アナログからデジタルか?」

「さ、流石だ。血と肉とあばら骨のキーボードだもんね。電子の呪いかもよー」

 美加の魂の叫びはヤングジェネレーションの狂った戯言のように聴こえたが、圭介は的を得ていると思った。

『古来からの呪いが、新しい技術と融合されて生み出せれた。しかし、いったい何者の仕業だ?』
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