血と肉とあばら骨のキーボード

田丸哲二

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第六現象・数字のナイフ

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「あれから、呪いの表とチャットは変わりなしだよ」

 美加がそう言ってコーラを飲み、安堂刑事が圭介の要望で壇上に立ち、メモを見ながらホワイトボードに本条家の家族構成を書きながら話し始めた。

「先に俺の方から、簡単に現状の本条家について説明する」
 
 圭介は子供の頃からこの町の因縁を毛嫌いし、本条家と町の事情は詳しくない。

「当主の道成は交通事故で三年前に亡くなり、長女の京子が事業の経営を引き継いでいる」

・本条家の当主、本条道成78歳。不審な事故死。
・長男、本条辻也50歳。甲府で独立して会社経営。若妻と結婚して小学生の子供二人。
・長女、京子49歳。独身で聡明。父道成から事業を引き継ぐ。
・次男、孝則45歳、兄弟の中で一番早く結婚したが離婚。


「現在、本条家の屋敷には京子と孝則が住んでいる。長男の辻也が家を出たのも、兄弟仲が良くないからだろう」

 そう安堂刑事が話し終えると、宇佐美が思い出したように発言した。

「そういえば、事務員の順子さんも本条ですよね?」

「ウサボン、知らなかったの?道成には愛人がいっぱいいたんだよ。順子さんは妾の子で、本条の姓を名乗ってんのさ。これは禁句だが、本当は本田順子らしい」

「ええ~、マジかよ」

「ちょっと、それ怪しくない?だって、そのキーボードといい、呪われたのもスクールの生徒だし」

 美加がそう言うと、安堂刑事が調べさせると言って署の警察官に連絡した。圭介の母親の死が殺人事件として、市警から応援の警察官が数人加わっている。

 そして圭介の祖母清子が安堂刑事に変わって過去について知っている事を話し始めた。

 その頃、順子は町の廃屋の床下から地下の坑道を通り、高台にある本条家の屋敷から数百メートル離れた林の生い茂る野原の下にある地下室に買い込んだ食料を運び入れた。

「キズオ、なんか食べる?」

「サンドイッチもらうかな」

 順子にキズオと呼ばれる男は木月数男。幼い頃から犬と猫を殺して土に埋め、25年程前その名前が町で噂になった事もあったが、チャットに書き込んで教えてあげたのに何のリアクションもなく少しガッカリしていた。

 もう一台の『血と肉とあばら骨のキーボード』がデスクにセッティングされ、その液晶モニターを少し離れた位置に椅子を置いて、後ろ向きに腰掛けて眺めている。

「サービスして、損したぜ」

「はい、これ。で、どうなの?」

「ああ、順調だ」

 キズオがこの隠れ家を偶然見つけたのはまだ幼い頃で、猫や犬を殺して野原に埋めているうちに古い坑道の穴にはまり込み、そこから通じるこの地下室を発見した。

 最初はシェルターかと思ったが、調べてみると監禁室や拘束具などがあり、本条家の豪族が古くから使っていた拷問室ではないかと思った。

 大昔とは言え、柘榴の木の下に敵部族の民を殺して土中を血の海にした奴らだ。それくらいの事は平然とやってのけただろう。

『つまり俺と大して変わらね~』


「じゃ、もう当分会わない方がいいよね」

 順子は当然自分が疑われると思い、キズオと相談して計画が始まれば会わない手筈になっている。

「寂しいけど、仕方ない。でも計画が上手くいけば、この町は俺たちの支配下になる」

 キズオはサンドイッチと飲み物を置いたテーブルに近寄り、順子を見て微笑んだ。

「俺がキングで……」

「私がクイーン」

 順子がそう言い返し、キズオに寄り添って軽くキスをすると、空になったリュックを背負ってキズオに手を振り、地下室の扉を開けて地下道を歩いて行く。
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