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第五章・学園長の変貌
学園長との面会
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連は何事も無かったように洗面所で顔を洗って歯磨きをし、佳子から報告を受けた両親が怪訝な表情で見守る中、ダイニングテーブルで朝食を慌ただしく食べて二階の部屋へ上がり学校へ行く準備をした。
いつもの東野家の日常風景ではあるが、連は鞄の中にフクロウのペンを入れ、玄関へ駆け降りると久しぶりに連を迎えに来た文子と佳子が囁き声で喋っている。
「お兄ちゃん、いつも以上に変なんだよ」
「やはりね。レンは何か隠していると思う」
「えっ、フミさん。何か知ってるの?」
文子は佳子に学校で幽霊騒ぎが再燃して不思議な事件が起きていると話し、佳子も連の部屋に誰かいる感じがすると教えた。
「まさか、ゴースト?」
「それを突き止めに来た」
中学一年生の佳子は五条霧笛学園に入学する前にゴーストの噂があり、連が可愛い少女の幽霊を見たと言ってたのを思い出した。
「おはよう。レン」
「グッモーニング。フミ」
二人が玄関を出るのを見送った佳子は兄が暴走するのではないかと不安になり、呆然と佇む佳子に近所の友だちが声をかけた。
「カコ。どうしたの?」
「ううん、なんでもない」と佳子は笑って誤魔化し、心の中で『あの二人、付き合えばいいのに……』と呟く。
文子は連と肩を並べて通りを歩きながら、友人として単刀直入に質問した。中学三年生の時に『ベストフレンドとして恋は無し』と約束し、お互いその時からライバル視して文子は完全に連を超えたと上から目線である。
「レン、正直に話しなさい。ゴーストに恋してるんだろ?」
「フミコ、流石だな。そのタイトルで小説のアイデアが閃いた」
そんな会話をフクロウのペンが鞄の中で聴いていたが、五条霧笛学園の学園長室で闇の侵攻が始まるのをゴースト職人が察知し、フクロウのペンに警戒信号を送ってボディのランプが赤く点滅する。
『あの~、小説どころじゃないのですが』
インスピレーションの意味合いを連は勘違いして創作へ向けたが、フクロウのペンは『特別な感覚と霊感』を指して言ったのである。
連の持つ鞄からフクロウのペンがまんまるの目を覗かせ、図書館の工房のブラウン管モニターに二人の横顔が映っているが、殆どのゴースト職人は疲れ切って椅子や床に座って観る元気もない。
MOMOEは寝室のベッドで眠り、クルミがその安らかな寝顔を見てから工房へ戻って全員に声を掛けて労う。
「もう、寝なさい。後は私が見とくから」
「MOMOEはどう?」
「この数日間の疲れが出たんだ。心臓が弱いから、もう少し休ませないと」
霊感の強かったクルミは航空機の事故で亡くなり、闇のエネルギーが事故を誘発したり、病を発症させて能力者を始末していると感じ、ハートで結ばれたゴーストを集めて闇のエネルギーと戦っている。
六人のゴーストが自室の寝室へ入り、クルミはブラウン管モニターの席に着いてマイクをオンにして『急いで学園を偵察してくれる?』と指示を出し、フクロウのペンは空へ舞い上がり、通りを歩く生徒を眺めながら五条霧笛学園へ向かった。
その頃、学園長・湊香奈江はブルーのセットアップスーツに白いリボンブラウスを着て高級車を運転して学園の駐車場へ入れ、教職員の玄関口へ向かうと大き目のバッグを持った江国則子が待ち受け、一緒に廊下を歩いて学園長室へ招いた。
「すいません。こんな早くお呼び立てして」
「いいのよ。江国先生。どうぞ座ってください」
湊香奈江は緊張気味の江国をソファに座らせ、窓側の広いデスクの豪華な椅子に腰掛けて微笑みかけたが、江国と一緒に室内へ入ったダーク司祭がドアの前に立っているのに気付いてない。
「体調はいかがですか?指導員の見回りは無理なさらず、内勤に専念してください」
「ありがとうございます。でも、今日は学園長の座を奪いに来たのですよ」
「えっ?」
江国は湊香奈江が唖然とするのも構わず、バッグから暗黒のマスクを出して頭から被り、黒煙が全身を覆い始めて服装までも学園長とそっくりに黒い物が模倣し、頭部から色調と質感も再現され、もう一人の学園長が誕生するのを目撃した。
「う、嘘でしょ⁈」
慌てて席を立って叫ぼうとするが、背後に迫ったダーク司祭が黒い蛾を口にペタッと貼り、祭服の内側から漏れ出た蛾の集団が湊香奈江の全身を包み込み、こっちは江国則子に変貌してゆく。
いつもの東野家の日常風景ではあるが、連は鞄の中にフクロウのペンを入れ、玄関へ駆け降りると久しぶりに連を迎えに来た文子と佳子が囁き声で喋っている。
「お兄ちゃん、いつも以上に変なんだよ」
「やはりね。レンは何か隠していると思う」
「えっ、フミさん。何か知ってるの?」
文子は佳子に学校で幽霊騒ぎが再燃して不思議な事件が起きていると話し、佳子も連の部屋に誰かいる感じがすると教えた。
「まさか、ゴースト?」
「それを突き止めに来た」
中学一年生の佳子は五条霧笛学園に入学する前にゴーストの噂があり、連が可愛い少女の幽霊を見たと言ってたのを思い出した。
「おはよう。レン」
「グッモーニング。フミ」
二人が玄関を出るのを見送った佳子は兄が暴走するのではないかと不安になり、呆然と佇む佳子に近所の友だちが声をかけた。
「カコ。どうしたの?」
「ううん、なんでもない」と佳子は笑って誤魔化し、心の中で『あの二人、付き合えばいいのに……』と呟く。
文子は連と肩を並べて通りを歩きながら、友人として単刀直入に質問した。中学三年生の時に『ベストフレンドとして恋は無し』と約束し、お互いその時からライバル視して文子は完全に連を超えたと上から目線である。
「レン、正直に話しなさい。ゴーストに恋してるんだろ?」
「フミコ、流石だな。そのタイトルで小説のアイデアが閃いた」
そんな会話をフクロウのペンが鞄の中で聴いていたが、五条霧笛学園の学園長室で闇の侵攻が始まるのをゴースト職人が察知し、フクロウのペンに警戒信号を送ってボディのランプが赤く点滅する。
『あの~、小説どころじゃないのですが』
インスピレーションの意味合いを連は勘違いして創作へ向けたが、フクロウのペンは『特別な感覚と霊感』を指して言ったのである。
連の持つ鞄からフクロウのペンがまんまるの目を覗かせ、図書館の工房のブラウン管モニターに二人の横顔が映っているが、殆どのゴースト職人は疲れ切って椅子や床に座って観る元気もない。
MOMOEは寝室のベッドで眠り、クルミがその安らかな寝顔を見てから工房へ戻って全員に声を掛けて労う。
「もう、寝なさい。後は私が見とくから」
「MOMOEはどう?」
「この数日間の疲れが出たんだ。心臓が弱いから、もう少し休ませないと」
霊感の強かったクルミは航空機の事故で亡くなり、闇のエネルギーが事故を誘発したり、病を発症させて能力者を始末していると感じ、ハートで結ばれたゴーストを集めて闇のエネルギーと戦っている。
六人のゴーストが自室の寝室へ入り、クルミはブラウン管モニターの席に着いてマイクをオンにして『急いで学園を偵察してくれる?』と指示を出し、フクロウのペンは空へ舞い上がり、通りを歩く生徒を眺めながら五条霧笛学園へ向かった。
その頃、学園長・湊香奈江はブルーのセットアップスーツに白いリボンブラウスを着て高級車を運転して学園の駐車場へ入れ、教職員の玄関口へ向かうと大き目のバッグを持った江国則子が待ち受け、一緒に廊下を歩いて学園長室へ招いた。
「すいません。こんな早くお呼び立てして」
「いいのよ。江国先生。どうぞ座ってください」
湊香奈江は緊張気味の江国をソファに座らせ、窓側の広いデスクの豪華な椅子に腰掛けて微笑みかけたが、江国と一緒に室内へ入ったダーク司祭がドアの前に立っているのに気付いてない。
「体調はいかがですか?指導員の見回りは無理なさらず、内勤に専念してください」
「ありがとうございます。でも、今日は学園長の座を奪いに来たのですよ」
「えっ?」
江国は湊香奈江が唖然とするのも構わず、バッグから暗黒のマスクを出して頭から被り、黒煙が全身を覆い始めて服装までも学園長とそっくりに黒い物が模倣し、頭部から色調と質感も再現され、もう一人の学園長が誕生するのを目撃した。
「う、嘘でしょ⁈」
慌てて席を立って叫ぼうとするが、背後に迫ったダーク司祭が黒い蛾を口にペタッと貼り、祭服の内側から漏れ出た蛾の集団が湊香奈江の全身を包み込み、こっちは江国則子に変貌してゆく。
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