ゴーストに恋して

田丸哲二

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第六章・ミレフレ vs. 禁断の書

賞の発表

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 景子はノートパソコンの童話の最初の数ページに目を通して、素敵な物語ではあるが本屋で見かけた気もして、疑問に思いながらも表紙の選択、文章のメール送信、編集する方法を教えると、学園長は景子に教材として小説クリエイターの特別授業に使って欲しいと頼んだ。

「実はこの本、出版される予定なのよ」

「そうなんですか?本屋で宣伝されてませんか?是非、使わせてください。生徒に夢を与えられると思います」

「ありがとう。でも読んでみて良かったらでいいのよ。それと貴方の特別授業を増やしたいので、後で教頭と相談しましょう」

「はい。こちらこそありがとうございます。後でゆっくり拝読せていただきます」

 景子は江国先生に対する不安感を忘れ、学園長の多才さと特別授業の事で喜びを隠せなかった。笑顔で頭を下げて立ち去ると、学園長(江国)が疲れ切ったように暗黒のマスクを鼻の下辺りまで剥がして嘲笑う。

『浅はかな女だわね』

 口元だけ江国の顔になり、ネットに掲載された盗作の童話と『禁断の書』を入れ替える作業をノートパソコンで始め、デスクから司祭がマスクをズラしたままの江国に注意した。

『気を抜いて、バレるなよ。当分の間は秘密裏に進めろとのご指示だからな』

「すいません。まだ、慣れなくて……」

 魔王と司祭は静かに波が押し寄せるように暗黒の書物を人間界に拡散させ、気が付いた時には『禁断の書』が本棚やスマホの中にあり、MOMOEが敗北を認めて嘆き苦しむのを愉しむつもりだ。


 ダーク司祭が祭服の懐から暗黒の書物を取り出し、デスクの上で開くと禁断の書に捕らえられたゴーストが牢の中で叫んでいたが、気にも止めずにページを捲り直して最初のページを一枚破って投げ飛ばす。

『項目を複製しろ』

 テーブルの上に着地した用紙の古代ヘブライ語が蠢き、呪文が空気中の成分を吸収して枚数が増え、『禁断の書』へ導く小冊子ができあがる。

「凄いです。しかも私が一番目の信者として、伝道者に選ばれたのですね?」

 江国はスマホでコンタクトした時に星の如く流れる『禁断の書』の文字を眺め、宇宙のエネルギーを吸収して存在しているのだと感じた。

「この本は生きている」

 黒い表紙の手引書を手に取ると緑色の表紙に変化し、文章もヘブライ語から日本語に変化して童話の本にカモフラージュされる。

「これでしたら、景子先生も生徒に勧めるでしょうね」

『その本を開いた者は禁断の書へ導かれる筈だ。私は一旦眠りに付くが後は任せたぞ』

 ダーク司祭は身を削って魔王の意識を現出させ、更に禁断の書のサンプルを作成してエネルギーを使い果たし、痩せこけた顔で『暫し休養する』と言って消え、「お疲れ様です」と学園長(江国)が立ち上がって見送った。


 その頃、連は文子と校門を通り抜けて久美子と順也と合流し、小説投稿サイト・エディバー』からメールがあったが、フクロウのペンと一緒にiPhoneを鞄の中に仕舞いメールの件名しか見てない。

【小説大賞について】

 連は賞の発表のお知らせかと思い、もしかして自分の作品が選ばれたかとドキドキしたが、落選時の嘆きも怖くて後で確認する事にした。

「レン、どうした?」

「ん?賞の発表って、メールとかで連絡あるのかと思ってね」

 教室の席に着いて授業前に連が素朴な質問をすると、文子と久美子と順也が連の無知さに唖然として説明した。

「最優秀作品は賞金五百万。書籍化もされるが、去年は該当作無しだった」

「選考過程は知らされず、最終結果だけがサイトで発表される」

「いわゆる、サプライズ。レンは落選決定だから落ち着いて発表を待ちなさい」

 文子がそう言って微笑んだが、久美子と順也とは昨夜のLINEで連の最近の不自然な行動と霊的現象から、幻の小説『ミレフレ』と関係しているのではと話題になっていた。
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