38 / 84
第六章・ミレフレ vs. 禁断の書
ネット・トラブル
しおりを挟む
【問い合わせの件】
株式会社エディバー 編集部・松田町子様へ 小説大賞のご連絡ありがとうございます。
『ミレフレ』の作者、Momoeの連絡先ですが、本名は乃南百恵で大学病院の難病センターで一年程前に不治の病で亡くなりました。
非常に込み入った事情もあり、詳細は直接会ってお話ししたいので、都合の良い日を教えてください。よろしくお願いします。 連サブレー(東野連)より
面談室で連がメールを書き終えて送信し、編集者とアポが取れたら全員で『ミレフレ』が投稿された経緯を説明する事に決めた。
「それまでにMOMOEが間に合うか?」
[もうすぐ目覚めると思います。疲れただけですから。]
「小説にも描かれてたけど、フクロウのペンを使ってアイテムを作り出すのはエネルギーを消費するんだ」
[それと私は奪われる危険性があるので、ダーク司祭には近寄れません。]
「だとすると、連の霊能力に頼るしかないわね。フクロウのペンは離れて偵察をお願いします」
文子の残念そうな意見で、連を中心にしてダーク司祭と江国先生の同行を探る事に決めて解散した。
午後の授業が始まり、江国先生は事務仕事を終えると指導員として校舎を見回り、休憩時間に連と順也と久美子で尾行したが特に怪しい動きはなかった。
学園長室へは景子先生と教頭先生が特別授業の件で呼ばれた時に、文子と連が同行して数分話を聞いたが授業の時間になって退出し、湊香奈江が景子に童話の本を一冊渡したのは見てない。
フクロウのペンは廊下の天井や柱の陰から偵察したが、校舎内にダーク司祭の気配は感じられず、暗黒のマスクで霊感を防御されて江国則子と学園長が入れ替わり、魔王の意識に湊香奈江が操られている事を見抜けなかった。
「部活、どうする?」
「何もなかったし、普段通りでいいんじゃない」
「じゃー、レン。何かあったら連絡して」
午後の授業が終わると帰宅部の連だけが、文子と久美子と順也に見送られて教室を出て玄関へ向かい、フクロウのペンを肩に乗せて帰って行く。
通りを歩いているとiPhoneにメールの返信があり、連は『Bi-hún』にも寄らずに急いで家に帰って二階の部屋に駆け上がり、エディバーに電話して編集部の松田町子と話し、今週の土曜日AM11時に渋谷の会社で会う約束をした。
「連サブレー様は高校生なのですね?」
「はい。クラスの友だちと先生と一緒に伺います」
「分かりました。着いたら一階の受付で私を呼んでください。乃南百恵様が亡くなったと聞いて驚きましたが、素晴らしい作品なので書籍化されるのが楽しみですね」
「ありがとうございます。きっとMOMOEもあの世で喜んでいるでしょう。ちなみにですが、僕の作品は落選ですか?」
連は連サブレーとして応募した作品の結果を聞いたが、選考過程については話せないと言われて電話を切られた。
「きっと予選落ちだ」
『あの~、元気出してください』
机の上でフクロウのペンが微笑み、「せめて、一次審査は通過したかった」と俯いて嘆く連にまんまるの目を向けて、小説の事よりも現実に集中するようにアドバイスした。
『レンには才能があるわ。みんな期待してるんですからね。ほれ、顔を上げて私の目を覗いてみてください』
連はそう言われて、白い翼を広げて腰掛けるポーズになったフクロウのペン先に顔を近付け、その目の中を覗くと万華鏡の鮮やかな模様の向こうに、ゴースト職人のクルミが居るのを見て思わず「スゲー」と感嘆の声を上げた。
この時、隣の部屋で妹の佳子が壁に耳を当てて盗み聞きし、何を騒いでいるのかとそっと通路に出て部屋のドアを開けると、連が机の上に目を泳がせて手を振っている。
「お兄ちゃん」
「ん?」
連は佳子が出入り口に立って呆然とこっちを見ているのに気付き、慌てて机の上のフクロウのペンを手で隠したが、そんな事よりもダーク司祭が江国に指示した効果が小説サイトで現れ始めていた。
「どうしたの?」
松田町子は唐突に連との電話を終えたが、エディバーの編集部の者が真っ黒な表紙の本が投稿され、非公開であるがこのデータの影響でサイトがフリーズする現象が起こっていると騒ぎ立てたからだ。
株式会社エディバー 編集部・松田町子様へ 小説大賞のご連絡ありがとうございます。
『ミレフレ』の作者、Momoeの連絡先ですが、本名は乃南百恵で大学病院の難病センターで一年程前に不治の病で亡くなりました。
非常に込み入った事情もあり、詳細は直接会ってお話ししたいので、都合の良い日を教えてください。よろしくお願いします。 連サブレー(東野連)より
面談室で連がメールを書き終えて送信し、編集者とアポが取れたら全員で『ミレフレ』が投稿された経緯を説明する事に決めた。
「それまでにMOMOEが間に合うか?」
[もうすぐ目覚めると思います。疲れただけですから。]
「小説にも描かれてたけど、フクロウのペンを使ってアイテムを作り出すのはエネルギーを消費するんだ」
[それと私は奪われる危険性があるので、ダーク司祭には近寄れません。]
「だとすると、連の霊能力に頼るしかないわね。フクロウのペンは離れて偵察をお願いします」
文子の残念そうな意見で、連を中心にしてダーク司祭と江国先生の同行を探る事に決めて解散した。
午後の授業が始まり、江国先生は事務仕事を終えると指導員として校舎を見回り、休憩時間に連と順也と久美子で尾行したが特に怪しい動きはなかった。
学園長室へは景子先生と教頭先生が特別授業の件で呼ばれた時に、文子と連が同行して数分話を聞いたが授業の時間になって退出し、湊香奈江が景子に童話の本を一冊渡したのは見てない。
フクロウのペンは廊下の天井や柱の陰から偵察したが、校舎内にダーク司祭の気配は感じられず、暗黒のマスクで霊感を防御されて江国則子と学園長が入れ替わり、魔王の意識に湊香奈江が操られている事を見抜けなかった。
「部活、どうする?」
「何もなかったし、普段通りでいいんじゃない」
「じゃー、レン。何かあったら連絡して」
午後の授業が終わると帰宅部の連だけが、文子と久美子と順也に見送られて教室を出て玄関へ向かい、フクロウのペンを肩に乗せて帰って行く。
通りを歩いているとiPhoneにメールの返信があり、連は『Bi-hún』にも寄らずに急いで家に帰って二階の部屋に駆け上がり、エディバーに電話して編集部の松田町子と話し、今週の土曜日AM11時に渋谷の会社で会う約束をした。
「連サブレー様は高校生なのですね?」
「はい。クラスの友だちと先生と一緒に伺います」
「分かりました。着いたら一階の受付で私を呼んでください。乃南百恵様が亡くなったと聞いて驚きましたが、素晴らしい作品なので書籍化されるのが楽しみですね」
「ありがとうございます。きっとMOMOEもあの世で喜んでいるでしょう。ちなみにですが、僕の作品は落選ですか?」
連は連サブレーとして応募した作品の結果を聞いたが、選考過程については話せないと言われて電話を切られた。
「きっと予選落ちだ」
『あの~、元気出してください』
机の上でフクロウのペンが微笑み、「せめて、一次審査は通過したかった」と俯いて嘆く連にまんまるの目を向けて、小説の事よりも現実に集中するようにアドバイスした。
『レンには才能があるわ。みんな期待してるんですからね。ほれ、顔を上げて私の目を覗いてみてください』
連はそう言われて、白い翼を広げて腰掛けるポーズになったフクロウのペン先に顔を近付け、その目の中を覗くと万華鏡の鮮やかな模様の向こうに、ゴースト職人のクルミが居るのを見て思わず「スゲー」と感嘆の声を上げた。
この時、隣の部屋で妹の佳子が壁に耳を当てて盗み聞きし、何を騒いでいるのかとそっと通路に出て部屋のドアを開けると、連が机の上に目を泳がせて手を振っている。
「お兄ちゃん」
「ん?」
連は佳子が出入り口に立って呆然とこっちを見ているのに気付き、慌てて机の上のフクロウのペンを手で隠したが、そんな事よりもダーク司祭が江国に指示した効果が小説サイトで現れ始めていた。
「どうしたの?」
松田町子は唐突に連との電話を終えたが、エディバーの編集部の者が真っ黒な表紙の本が投稿され、非公開であるがこのデータの影響でサイトがフリーズする現象が起こっていると騒ぎ立てたからだ。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる